宅建合格講座!権利関係|民法「相続」を解くときのポイント

仲井悟史

こんにちは、仲井です。今回も直前編として、権利関係の中の民法のうち「相続」をテーマにします。「相続」はほぼ毎年出題され、正答率も高い分野です(また、改正点もあります)。もっとも相続の条文はとても多いので難解な出題もありますが、その場合は「私が分からないのだから、他の人も分からない」と割り切って、普段学習している基本的知識で正解を導くようにしましょう。

では、始めましょう!

目次

  • 計算問題のポイント
  • 承認・放棄、遺言のポイント
  • その他に押さえるべきこと

計算問題のポイント

よく「計算問題は後回しにせよ」などと言われることもありますが、相続の計算は難しくないので飛ばしてしまうのはもったいないです(もちろん、2分くらい粘って手ごわいなと直感したら、飛ばしたほうがいいですが…)。

以下のポイントを押さえて、貴重な1点をもぎとりましょう。

1. 数字などを覚えよう

まずは「第1順位は子、第2順位は直系尊属…」という相続人の順位や「直系尊属3分の1、兄弟姉妹4分の1…」という相続分の数字を確実に覚えましょう(なお、改正により、嫡出である子と嫡出でない子の相続分の取扱いに差異はなくなりなりましたので、注意しましょう)。

問題文にこれらの知識は書いてありませんので、忘れてしまうと問題が解けなくなってしまいます。
(なお、これらの数字などを押さえれば、遺留分の計算にも役立ちます)。

そして、問題を解く際はいっぺんにやらずに、誰が相続するかを確定して(相続人)、その人がいくらもらえるかを計算する(相続分)、という順番でやっていきましょう。

2. 図を書こう

計算問題は長文になることもありますが、最初に問題文から読み取れる状況を図に書いてください。「図なんか書いている時間はないよ」と思われるかもしれませんが、何も丁寧な図でなくてもよいのです。「被相続人に天使の輪のマークを入れて、それ以外に死亡した人に×印を入れる。夫婦は二重線で結んで、内縁関係等は点線で結ぶ。子、孫…と何代にもわたる場合、それぞれの代に属する各人の高さを揃える…」…そんなことに注意しながらいったん図を書いてしまえば、その後の選択肢の検討がスムーズになり、結局は解答時間の短縮につながります(仮に正解肢が4の場合、図を書かずに、問題文と選択肢をいちいち行ったり来たりするとかえって時間がかかります)。

3. 無駄な計算はしない

たとえば離婚した元配偶者や、いわゆる内縁の夫・妻は相続人とはなりません。

また、兄弟姉妹には遺留分はありません。

相続の計算問題で元配偶者の相続分を計算したり、遺留分の問題で兄弟姉妹の遺留分を計算したりするのは時間の無駄ですので気をつけましょう(「するわけないじゃん」と思われるかもしれませんが、本番では冷静さを失ってしまって、信じられないようなことをしてしまうことがあるのです)。

承認・放棄、遺言のポイント

計算とは逆に、相続の承認・放棄や遺言は暗記ではなく、趣旨や理由を考える学習が有効です。

たとえば、遺言は遺言者の意思を尊重するため、他の人の余計な意思が入らないよう法定の方式によらなければなりません。

また、たとえば、相続の承認・放棄は、相続人が相続の開始を「知った時」から3ヶ月以内にしなければなりませんが、「知った時」になっているのは、被相続人が死亡したのを知らない間に3ヶ月経ってしまって、自動的に承認とみなされたりするのはかわいそうだからです。「3ヶ月」については、1ヶ月だと調査したり考えたりする時間的余裕がありませんし、6ヶ月だと他の相続人やその他の関係者に迷惑を及ぼしてしまうからです。「いつまでも待ってられないよ」というわけですね。

…こんなふうに普段から考えながら学習すれば、暗記をしていなくても、問題を解く際に結論を再現できるのです。

さらに、以下のように比較しながらの学習も効果的です。

1. 承認・放棄、遺言の取消し

いったん意思表示をすると、そう簡単には撤回できません。そこで相続の承認・放棄の取消しは、たとえ3ヶ月の間でも原則としてすることができません(詐欺・強迫などの例外はありますが)。「3ヶ月の間なら撤回できる」などと出題されると、ついひっかかってしまいそうですね。

これに対して遺言者の意思の尊重のため、遺言は一定の手続に従い、いつでも撤回することができます。

2. 行為能力について

たとえば未成年者や被保佐人のような場合を考えてみましょう。相続の承認・放棄をするためには重大な効果が生じるので、行為能力が必要です。

これに対して遺言者の意思を尊重するため、遺言をするのに行為能力は必要ありません。満15歳以上であればすることができます(保護者の同意不要。ただし、成年被後見人の場合、一定の条件あり)。

その他に押さえるべきこと

その他、以下の点について押さえておけば、十分でしょう。

1. 代襲相続

相続放棄の場合、代襲相続は起こりません。

同時死亡の推定の場合、代襲相続は起こります。

2. 限定承認

相続放棄または限定承認は、家庭裁判所へ申述しておこないます。

限定承認は、共同相続人の全員が共同してしなければなりません(限定承認はただでさえ手続きが複雑なのに、複数の相続人が「私は承認」「私は限定承認」とバラバラになってしまうと、余計複雑になるからと考えましょう)。

3. 遺留分

遺留分を侵害する遺言は、当然には無効とはなりません(遺留分権者は、遺留分減殺請求をすることができます。なお、兄弟姉妹には遺留分はありません)。

遺留分の放棄と相続の承認・放棄との比較もしてみましょう。

まず、相続の承認・放棄は、相続開始前にあらかじめすることはできません(「知った時から3ヶ月」でしたね)。これに対して、遺留分の放棄は、裁判所の許可を得れば相続開始前でもすることができます(なお、あらかじめ遺留分を放棄しても、相続分までは放棄しているわけではないので、その後の相続開始によって財産を承継することもありえます)。

次に、相続と違って遺留分の場合、遺留分を放棄しても、他の人の取り分が増えるわけではありません(遺留分は、最低限確保すべき権利なので、そんなにコロコロ変わったりしないのです)。

4. 遺産分割

相続が開始すると、被相続人の財産は、共同相続人による共有の状態になりますが、これを各相続人で話合い等によって分けるのが「遺産分割」です。

共同相続人は、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができます(遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができます)。

もっとも、被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託し、または相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることが可能です。

さて、ここで、近年出た遺産分割に関連する判例を押さえておきましょう。

まず、「預貯金債権は、相続開始時に法定相続の割合で当然に分配されず(以前はそのように解釈されていました)、遺産分割の対象となる」との判決が出ました。

また、少し前の判例ですが、遺産分割の方法として、現物を分割する方法や、競売による換価により分割する方法(物理的に現物を分割できない、あるいは、分割すると価格が著しく減少する場合)のほかに、不動産の場合、一定の条件により、共同相続人の一人に不動産を取得させて、他の相続人に価格賠償するようなことも可能と判示されました。

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仲井悟史

あなぶきハウジングサービス 東京東支店:仲井 悟史(なかい さとし)
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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