宅建合格講座!宅建業法|「手付金等の保全措置」を解くときのポイント

仲井悟史

皆さんこんにちは。仲井です。いよいよ宅建試験迫っていますね。今回は「手付金等の保全措置」がテーマです。問題文が長文で、計算問題が出題されることもありますので、苦手な方も多いと思いますが、少しでもお役に立てれば幸いです。

 

 

手付額の制限と手付金等の保全措置

売主が宅建業者で、買主が宅建業者ではない場合、手付額の制限と、手付金等の保全措置の両方が問題となります(逆に、売主も買主も宅建業者である場合、手付額の制限はありませんし、手付金等の保全措置も不要です)。

まず、売主が宅建業者で、買主が宅建業者ではない場合、宅建業者は、代金の額の10分の2(20%)を超える額の手付金を受領することはできません

次に、売主が宅建業者で、買主が宅建業者ではない場合、宅建業者は、原則として、手付金等の保全措置を講じた後でなければ、買主から手付金等を受領することができません。買主は、手付金等の保全措置が講じられていなければ、手付金等を支払わなくてよいのです。

このように、売主が宅建業者で、買主が宅建業者ではない場合、10分の2の額の制限を受けるのは「手付金」のみですが、原則として保全措置が必要なのは「手付金等」です。手付金だけではないのです。ここで、「手付金等」とは、名称を問わず、契約締結から引渡しまでの間に支払われる金銭であり、代金に充当されるものをいいます。たとえば、手付金のほか、中間金等がこれにあたります。

したがって、

売主である宅建業者が、
宅建業者でない買主から「手付金」を受領しようとする場合、
手付額の制限と保全措置の両方を検討します。

売主である宅建業者が、
宅建業者でない買主から「中間金」を受領しようとする場合、
10分の2の制限はなく、保全措置のみを検討します。

 

保全措置が不要な例外

「手付金等」の場合、原則として保全措置が必要ですが、買主が所有権の登記をしたとき等は、例外的に保全措置は必要ありません。

また、手付金等の金額が小さい場合も、例外的に保全措置は必要ありません。

具体的には、
未完成物件の場合、手付金等の金額が、代金額の5%以下かつ1,000万円以下であるときは、
保全措置が不要です。5%と1,000万円のどちらかを超えてしまえば、保全措置が必要です。

完成物件の場合、手付金等の金額が、代金額の10%以下かつ1,000万円以下であるときは、
保全措置が不要です。10%と1,000万円のどちらかを超えてしまえば、保全措置が必要です。

未完成5%、完成10%」…この数字は、問題文に書いてありませんので、しっかりと覚える必要があります。

では、具体例で説明しましょう。たとえば、1億円の未完成物件の場合、手付金等の金額が2,500万円の場合、1億円の10分の2である2,000万円を超えていますので、手付額の制限を受けます。手付金等の金額が1,000万円の場合、手付額の制限は受けませんが、1億円の5%である500万円を超えていますので、保全措置は必要です。手付金等の金額が500万円の場合、手付額の制限も受けませんし、1億円の5%である500万円を超えていませんので、保全措置も不要です。

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なお、手付金、中間金…というふうに、代金を何回かに分けて支払う場合、1回目の支払いの金額が小さくて保全措置が不要であっても、2回目の支払いについては、すでに受領した1回目の金額と2回目の金額を合わせて判断し、その合計額が5%(10%)や1,000万円を超えていれば、すでに受領した分も含めて全ての手付金等に保全措置が必要となりますので、注意しましょう。

保全措置の方法

では、保全措置が必要として、どんな方法があるのでしょうか。

まず、未完成物件の場合、銀行等の保証、保険事業者の保証保険、という方法があります。

これに対し、完成物件の場合、銀行等の保証、保険事業者の保証保険に加え、指定保管機関による保管という方法があります。

つまり、未完成物件の場合、指定保管機関による保管という方法をとることはできないのです。

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その他

手付金等の保全措置の概要は以上の通りですが、最後に、手付金等の保全措置の問題の検討の順番と、手付貸与等の禁止について触れておきます。

1 手付金等の保全措置の問題の検討の順番

問題文で「手付金」と書いてあったら、以下の順番で検討してください。いきなり5%や10%の計算に入らないようにしましょう。

最初に、当然ですが、買主も宅建業者かどうかをチェックします。選択肢4つのうちの1つにさりげなく買主も宅建業者である場合が混ぜてあることが多いので、十分に注意しましょう。

次に、手付額の制限を検討します。手付金の額が代金額の10分の2を超えていたら、そもそも超えた分を受領することができません。いくら保全措置を講じても無駄ですので、保全措置は検討する必要がありません。

手付金の額が代金額の10分の2を超えていなければ、その手付金を受領することはできますが、その前に原則として保全措置を講じる必要があります。

保全措置の要否(例外に当たるか)の検討の際は、まずは買主が登記をしているか(買主に登記が移っているか)を確認して、その後に計算に入ります。

計算するにあたっては、まずは、その物件が未完成物件なのか完成物件なのかを確認します。未完成物件なのか完成物件なのかを確認したら、5%や10%の数字を用いて計算をします。

計算の結果、保全措置が必要であるという結論に達した場合、最後に、保全措置の方法を検討します。未完成物件の場合、指定保管機関による保管という方法をとることはできません。

2 手付貸与等の禁止

宅建業者は、その業務に関して、宅建業者の相手方等に対し、手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為をしてはなりません。たとえば、後払いや、分割払い、手付を手形で払う場合等が挙げられます。誘引する行為自体が禁止されており、その後に契約を締結したかどうかは関係ありません。

このような手付貸与等の禁止の規定は、買主が宅建業者でも適用されます。また、貸与等の禁止の対象となるのは、手付金のみです。

買主が宅建業者でも適用され、制限の対象となるのは手付金のみであるという点が、手付金等の保全措置と異なります。あわせて押さえておきましょう。

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今回で宅建業法は終わりです。本試験に向け、気合いを入れましょう。「エイ、エイ、オー!」

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仲井悟史

あなぶきハウジングサービス 東京東支店:仲井 悟史(なかい さとし)
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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