これで丸分かり火災保険【特約編(個人火災保険①)】

柿沼孝明

こんにちは。
あなぶきインシュアランスの柿沼です。

前回まではマンション共用部火災保険の特約について2回に分けてご紹介しました。
今回からは、個人火災保険の「持ち家(所有者)」「賃貸住宅にお住まいの方(賃借人)」向けの重要な特約について解説していきます。

重要な特約について

特約とは、主契約(基本補償)に追加してセットするオプションのようなイメージです。
各保険会社によって名称や内容は異なりますので、詳細は各社のパンフレット等をご確認ください。

①個人賠償責任特約(所有者・賃借人共通)

「日常生活や被保険者の居住の用に供される住宅の使用・管理に起因する事故により、他人にケガをさせたり他人の物を壊してしまった場合に生ずる法律上の損害賠償責任」を補償する特約です。

事故例①:お風呂を出しっぱなしにし水が溢れ下階へ漏水。被害宅の専有部内装復旧工事を実施(補償対象)
事故例②:自転車で通行人に衝突。通行人が骨折をしてしまった(補償対象)
事故例③:飼育している犬が散歩中に子供に噛みつきケガをさせてしまった(補償対象)

マンション共用部火災保険の特約でもご紹介しましたが、個人賠償責任は生活全般のリスクについて幅広い補償があります。
自動車保険や共済、会社の福利厚生等でも加入ができますが、基本的には1年契約となります。個人火災保険で加入するメリットとしては、最長5年契約(2022年10月1日以降の契約)が可能で、長期一括契約であれば比較的安い保険料で加入することができます。

分譲マンションにお住まいの方は、マンション共用部火災保険で個人賠償責任が付保されている場合が多いですが、自分の身は自分で守るために、ご自身で何かしらの個人賠償責任に加入することをお勧めします。

なお、個人賠償責任を重複して加入していた場合は、下記事例のように保険金額が上乗せされます。

例)Aさんが「①個人火災保険:1億円」と「②自動車保険:1億円」に加入
→Aさんの個人賠償責任の補償額は、2つの保険の合計金額で「2億円(上限)」
※支払い額の上限で、実際の損害額に応じた額のみが支払われます(2つの契約からそれぞれ保険金が支払われる訳ではありません)

また、個人賠償責任の被保険者の主な範囲を抜粋した内容は下記の通りです。

<被保険者の範囲>
(1)記名被保険者
(2)記名被保険者の配偶者
(3)記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
(4)記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子

<被保険者の例>
・5人家族(父、母、子①、子②、子③)、子供①②は未婚、③は婚姻済
・3人は同居(父、母、子①)、1人はひとり暮らし(子②)、1人は配偶者と同居(子③)
・父が自宅の火災保険の個人賠償責任に加入

父:個人賠償責任対象((1)記名被保険者)
母:個人賠償責任対象((2)記名被保険者の配偶者)
子①:個人賠償責任対象((3)記名被保険者またはその配偶者の同居の親族)
子②:個人賠償責任対象((4)記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子)
子③:個人賠償責任対象外(別居の未婚の子ではないため)

上記事例からも分かるように、1つの契約で子供まで個人賠償責任の対象となる場合があります。

近年は自転車保険が義務化された自治体も増えてきており、義務化された自治体では個人賠償責任の加入が必須です。

知らず知らずのうちに家族や自分自身が個人賠償責任に加入している場合もありますので、一度加入されている保険の補償内容を確認してみてはいかがでしょうか。

 

②借家人賠償責任特約(賃借人のみ)

「不測かつ突発的な事故によって借りているお部屋を損壊した場合に、賃貸人(大家さん)への法律上の損害賠償責任」を補償する特約です。

事故例①:タバコの不始末が原因で火災が発生。室内の壁紙や床などが一部破損(補償対象)
事故例②:ガスボンベが爆発し、壁紙などが一部破損(補償対象)
事故例③:洗濯機のホースが外れ室内が水浸しになり、室内の床などが一部汚損(補償対象)

借家人賠償責任補償は、借りているお部屋で火災や破裂・爆裂、水ぬれなどが起こり、賃貸人(大家さん)に対して損害賠償責任が発生した場合に損害費用を補償する保険です。

一般的にお部屋を借りる際、賃借人は原状回復義務があり、上記事例のような事故によりお部屋に損害を与えてしまった場合は、賃借人は復旧して返還する義務があります。借家人賠償責任の対象となるのは、あくまで「不測かつ突発的な事故により」損害を与えてしまった場合なので、例えば放火による火災や(故意ではなくても)ペットが内装を傷つけたりした場合は対象外となります。
また、お部屋の通常使用の範囲での経年劣化や損耗は問題ありません。

因みに基本補償の中で失火法について少し触れております。
失火法(失火責任法)は、重過失の場合を除き、万が一失火により他住戸等に延焼しても損害賠償責任はないという法律です。

<失火責任法>
民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス(口語訳:民法第709条の規定は、失火の場合には適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときはこの限りではない。)

失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)

 

しかしながら、賃貸人(大家さん)は原状回復義務を果たせないということに対して、債務不履行による損害賠償請求を行えるため、失火であっても賃借人に損害賠償請求が可能です。

<民法415条>
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

民法第四百十五条(債務不履行による損害賠償)

万が一火災等が発生して多額の費用をかけて原状回復が必要となった場合、賃借人に支払い能力があり損害賠償に対し実費で応じてくれる方であれば問題ないかもしれませんが、大半の方はそうでは無いと思います。そのようなケースになると、賃貸人(大家さん)としては次の方へ賃貸ができず、長期間に渡り家賃収入が得られず困ってしまいます。
そういった大きなトラブルを防ぐためにも、一人暮らしをした方は経験があるかと思いますが、借家人賠償責任特約を付けた火災保険を、賃貸借契約の際に加入を義務付けるケースがほとんどです。

なお、退去後に発見された破損などは、賃借人の入っていた火災保険(借家人賠償責任付)は解約されているため補償されませんので、賃貸人(大家さん)とのトラブルを避けるためにも、万が一事故が起きて部屋の中に被害が出たら、すぐに保険会社や賃貸管理会社等に相談しておきましょう。

また、借家人賠償責任は借りているお部屋での損害賠償責任に対する補償のため、例えば事故例③のように洗濯機のホースが外れ、下階の方へ損害賠償責任が発生した場合は、個人賠償責任により対応することになります。保険会社や賃貸借契約の場合によっては、借家人賠償責任特約と個人賠償責任特約の両方に加入しなければならないケースもあります。そうでないケースの際は、個人賠償責任はどこかしらで加入している可能性もありますが、お部屋を借りる際に不安であれば合わせて加入しておくと安心かも知れませんね。

 

まとめ

今回は個人火災保険での重要な特約についてご紹介しました。
特に借家人賠償責任特約は、基本的に賃貸住宅への入居の際に必須の特約です。契約時に仲介不動産業者等から紹介され加入していると思いますが、今一度保険証券等を確認してみてはいかがでしょうか。

次回は個人火災保険の特約編の第2弾として、賃貸オーナー(外部所有者・一棟所有者)向けの特約についてご紹介していきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。

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柿沼孝明

あなぶきインシュアランス 柿沼 孝明(かきぬま たかあき)

2015年あなぶきハウジングサービスに新卒入社。マンション管理組合の運営サポート業務を経験後、あなぶきインシュアランスへ出向。フロント担当者の経験を生かした、東日本エリア(関東・東北・札幌)の管理組合様への火災保険の更新提案や、個人・法人への様々な損害保険提案業務を行っています。

保有資格:管理業務主任者
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