【分譲マンション管理組合】災害等の緊急時に備えたルールづくり

立花晴太郎

こんにちは。あなぶきハウジングサービス仙台営業所の立花です。

最近、私の住む東北地方においては、大きな地震が度々発生しています。2021年2月には福島県沖を震源とした最大震度6強の地震、2021年3月は宮城県沖を震源とした最大震度5強の地震、そして2021年5月1日には宮城県沖を震源とした地震で最大震度5強を観測しました。

今後、甚大な被害が出るような大地震が起きないことを祈るばかりですが、日本列島においては、どこに住んでいても、いつ大きな揺れに襲われるかわからない状況であると思います。

今回は、地震をはじめとした災害等の緊急時に備えた、マンション管理組合としてのルールづくりについて考えていきたいと思います。

マンション標準管理規約の条文

平成28年(2016年)に改正された、マンション標準管理規約では、以下のような条文が新たに加わりました。

 

敷地及び共用部分の管理)抜粋

第21条 6 理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。

 

(議決事項)抜粋

第54条 理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。

十 災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕工事の実施等

2 ~ 理事会は、前項第十号の決議をした場合においては、当該決議に係る応急的な修繕工事の実施にあてるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩しについて決議することができる。

マンション標準管理規約コメントでは、以下のように定義しています。

災害等とは「地震、台風、集中豪雨、竜巻、落雷、豪雪、噴火等」これらと連動して、又は、単独で発生する「火災、爆発、物の落下等」が該当します。

保存行為とは、例えば台風等で住戸の窓ガラスが割れた場合に、専有部分への雨の吹き込みを防ぐため、割れたものと同様の仕様の窓ガラスに張り替えるというようなケースが該当します

総会の開催が困難である場合とは、組合員が被災し避難している、交通機関等がストップしているというような状況を指します。

応急的な修繕工事とは、二次被害の防止や生活の維持等のために、緊急対応が必要な共用部分の軽微な変更(形状又は効用の著しい変更を)伴わないものや狭義の管理行為(変更及び保存行為を除く、通常の利用、改良に関する行為)を指しており、具体例として、給水・排水、電気、ガス、通信といったライフライン等の応急的な更新、エレベーター付属施設の更新、炭素繊維シート巻付けによる柱の応急的な耐震補強などが該当するとしています

上記は、あくまで平成28年(2016年)に改正された、マンション標準管理規約の条文です。
多くのマンションが標準管理規約に準拠した形となっているかと思いますが、改正点をどこまで反映させているかは、それぞれのマンションによりますので、ご自分のマンションの管理規約をご確認ください。

緊急時に備えた管理規約等の整備

マンション共用部に甚大な被害を及ぼすほどの災害が発生した場合、通常時と同じように管理組合としての意思決定ができない状況が発生する可能性があります。

災害時等の緊急時、保存行為以上のいわゆる応急的な修繕工事が必要となった状況において、どうしても総会等が開催できないという場合、どう対応したらよいのか困惑してしまうのではないでしょうか。

こういった場合に備えて、管理組合としてのどのように意思決定をするかルールを事前に定めておくことが大切です

・総会の開催は困難であるが、理事会は開催可能な場合
・理事会の開催も困難な場合
・理事長をはじめとする役員が対応できない場合

等々、様々なケースが考えられます。

理事会の開催も困難な場合を想定すれば保存行為に限らず、応急的な修繕行為の実施を理事長の判断で実施することができる旨を定めることや、役員が対応できない事態に備え、あらかじめ定められた方法により選任された区分所有者等の判断により保存行為や応急的な修繕行為を実施することができる旨を、規約に定めることも方法の一つではないでしょうか。
なお、理事長等が単独で判断し実施することができる保存行為や応急的な修繕行為に要する費用の限度額について、予め定めておくことが望ましいとされています。

 

理事長の権限を強化することについては、緊急時における管理組合活動の機動性を高め迅速な対応が可能となる一方、組織的な決定を原則とする管理組合のルールの例外を広く認めることになるため、危惧する意見が出ることも考えられます。
理事長の判断で決定できる範囲を明確にしておくことや、実施した内容を速やかに報告することを義務づけるなどのルールを設け、バランスの取れたものにする配慮が必要です。

 

また、近年では、コロナ対策の観点からオンラインでの理事会、総会の開催を推進している管理組合も増えていますが、このような取り組みは緊急時の意思決定においても有効的に活用できるのではないでしょうか。なお、総会をオンライン(電磁的方法)で開催できるようにする場合も、管理規約の改定が必要になります。

 

最後に

災害等の緊急時のことは、平時ではなかなか考える機会はないかもしれませんが、事前にルールを決めておくことで、いざという時にスムーズな対処ができたり、トラブルの防止につながるものと思います。

しかしながら、マンションによって取り巻く状況は異なるため、それぞれのマンションの状況に応じた、ルールづくりを、この機会に是非考えていただければと思います。

 

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立花晴太郎

あなぶきハウジングサービス 立花 晴太郎(たちばな せいたろう)
宮城県仙台市出身。分譲マンション管理(フロント)業務、新規受託営業に従事し、様々な地域の様々なマンションに携わらせていただきました。「より快適なマンション」へのヒントになるような情報を提供していきます。
保有資格:マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、マンション維持修繕技術者
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