意外と知らない!?マンションの洗濯排水口の洗浄│洗濯機の大型化対策

田中一直

先日、マンション設備の維持修繕に関する研修に参加してきました。

マンションの維持修繕に関して、今後は、マンション管理組合が共用部分だけではなく専有部分の設備等にも目を向けた維持修繕を検討する必要性があり、そのテーマのもと現状の課題と対策事例等の説明がありました。
その中で、排水管のメンテナンス(洗浄)に関連することで、今後、管理組合において検討することが必要だと感じたことがありましたのでご紹介いたします。

排水管洗浄ができない住戸が増えている!?

マンションの排水管には、
・各住戸にあるキッチン・洗面・浴室・洗濯機等からの排水を流すための「雑排水管」
・トイレの排水を流すための「汚水管」
・雨水等を流すための「雨水管」
がありますが、今回は、雑排水管のメンテナンスに関して近年問題化していることと、その対応についてご紹介したいと思います。

雑排水管のメンテナンスと言えば「排水管の高圧洗浄」があります。ほとんどの分譲マンションでは、マンション全体(管理組合)で毎年または2年毎の周期で実施していることと思います。
一般的には、「キッチン」「浴室」「洗濯機置場」「洗面」(除外している場合もあります)の排水口に、特殊な機材を使って洗浄を実施していると思います。雑排水管洗浄は、居住者の意識も高く、実施を希望する方も多いため、他の消防設備点検などに比べると実施できる住戸も多いのではないでしょうか。

” この雑排水管洗浄、、、皆さんのご自宅では全部の洗浄箇所での作業が実施できていますか?”

「洗濯機用の排水口だけは洗浄してくれなかった。。。」

ということはありませんか?

実は、近年、マンションでの雑排水管洗浄(一斉実施)において、洗濯機の大型化(ドラム式など)により、排水口に洗濯機本体が覆いかぶさって設置されているため、洗濯機用の排水口だけ洗浄しない(できない)住戸が増加しているのです。

 

洗濯機の大型化による課題と解決策

通常、洗濯機は洗濯防水パンの上に設置していると思いますが、洗濯防水パンのサイズはマンションによって設置されているものに違いがあります。
洗濯機の大きさより洗濯防水パンのほうが大きくて、排水口が見える(洗浄できる)状態で洗濯機が設置されていれば問題ありませんが、洗濯防水パンのサイズが「64cm×64cm」が設置されている場合は、大型の洗濯機を設置すると、ほぼ排水口が見えない状態(清掃できない状態)になる可能性が高いと思います。

雑排水管清掃時に洗濯機を持ち上げるなどすれば作業することは可能ですが、ほとんどの洗浄会社では、洗濯機の故障・洗濯機周辺の壁などの損傷・作業員の安全上の問題などにより実施しないことが一般的です。

通常、マンションの雑排水管は専有部分・共用部分とも、すべて繋がっているため、一つの住戸の雑排水管が詰まると、他の住戸の排水不良を引起こしたり、時には排水が逆流して、他の住戸に大きな被害に繋がる可能性もあります。
また、排水不良により排水が溢れ、階下へ漏水してしまうこともありますので、雑排水管清掃は全住戸の全対象箇所で実施することが望ましいのですが、上記の問題により、洗濯機排水口だけ未実施となり、雑排水管のメンテナンスに支障を来たしている状況が発生しているのです。

洗濯機用の排水は油分(食用油・垢・石鹸など)を多くは流すことがないため、詰まる可能性が低いと思われるかもせれませんが、洗濯機からは衣類に付着した垢・汚れ・洗剤などに含まれる油分が流れ、また、外部からゴミ・ホコリ・毛髪などが流れ込むことにより、詰まることがあります。
実際に階下への漏水事故の事例では、洗濯用排水口の排水不良が原因のものも多く含まれています。

このような問題を解決するため、数年前より各社より洗濯機を嵩上げするための各種商品が発売されています。
・防水パン自体が嵩上げされたタイプのもの(防水パン自体を交換)
・防水パンの上に据え置くタイプのもの
・洗濯機と防水パンの間にスペーサー的に設置するもの

、、、様々なものがあります。
各製品すべてを研究したわけではありませんが、洗濯機は作動中に揺れることを考えると、洗濯機が安定して設置することができて、かつ、振動による洗濯機の転倒防止の対策がなされているかには注意を払う必要があると思います。

 

マンション全体(管理組合)で取組む必要性

既に、各住戸において、これらの対策をしている方もいると思いますが、最近では、雑排水管の洗浄は各住戸だけの問題ではなく、マンション全体の問題と捉え、管理組合でルール化し、一括して全住戸の洗濯防水パンに嵩上げ対応を実施する事例も増えてきているようです。

一方では、洗濯防水パン自体の劣化により、知らないうち(洗濯機下のため見えない)に、洗濯防水パンに亀裂が発生し、亀裂部分から階下へ漏水したケースもありますので、建築後20年~25年(一般的な洗濯防水パンの設計耐用年数)が経過しているマンションにおいては、洗濯防水パン自体を嵩上げタイプのものに交換することも検討する必要があると思います。

 

まとめ

排水管の閉塞による漏水事故の防止・排水管自体の延命のため、皆さまのマンションにおいても、排水管清掃の報告書等を確認するなどして、上記のような問題が発生しているようであれば、マンション全体のことと捉え、管理組合としての対策を検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

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田中一直

あなぶきハウジングサービス 田中 一直(たなか かずなお)
香川県出身。あなぶきグループに平成6年に入社。主に新築マンションの販売、中古マンション・戸建などの仲介業務を経て、その後、マンション管理業務に約20年従事しています。マンション管理組合の運営補助だけでなく、お客さまのマンション生活が安心で快適であるため、常にプラスアルファの提案活動を心がけています。
資格:マンション管理士・マンション維持修繕技術者
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