こんにちは、仲井です。今回は、「弁済」がテーマです。具体例を交え説明しますので、まずは、理由や趣旨をご理解したうえで、最終的には各項目の結論を押さえることを心がけましょう。
目次
- 問題の所在
- 第三者の弁済
- 第三者への弁済
- その他
問題の所在
弁済とは、言い換えれば、約束を履行することによって、債務を消滅させる行為をいいます。たとえば、債権者Aが、債務者Bに、お金を支払ってもらう債権を有している場合、BがAにお金の支払いをすれば、弁済によって債務が消滅します。
では、債務者ではない第三者が債権者に弁済した場合はどうなるのでしょうか(第三者の弁済)?また、債務者が第三者に弁済した場合はどうなるのでしょうか(第三者への弁済)?
第三者の弁済
債務者B以外の第三者Cが、債権者Aに弁済した場合について考えてみましょう。
1 原則
原則として、債務の弁済は、第三者もすることができます。
なぜなら、誰が弁済をおこなっても、債権者は満足することができるからです。
2 例外
ただし、債務の性質が、第三者の弁済を許さない場合は、第三者弁済をすることができません(たとえば、肖像画のモデルになる、演劇に出演する、リサイタルで演奏をする、など)。
また、債権者Aと債務者Bで、「第三者の弁済を禁止する」特約をしたような場合、すなわち、「当事者が反対の意思表示をした」場合も、民法は特約を尊重しますので、第三者弁済をすることができません。
3 利害関係を有しない第三者
もっとも、たとえば、普通の金銭債務で、当事者の反対の意思表示がない場合でも、利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができません。言い換えれば、債務者Bが「いやだ!」と言えば、第三者Cは弁済できないのです。
たとえば、Aさんは、とっても優しい人、Cさんは、ものすごく怖い人としましょう。もし、Cが、債務者Bの債務を立替払いすれば、Cは、「立て替えた分を返せ」とBに言ってきます。Bとしては、いきなり怖い人から求償されることなるため、誰に請求されたいかというBの意思を尊重する必要がある…私は、そうイメージして、ここの部分を覚えていました。
逆に、利害関係を有する第三者は、債務者の意思に反しても弁済できます(もちろん、先程述べましたように、当事者、すなわち、債権者と債務者が反対の意思表示をした場合は、利害関係を有する第三者でも弁済できません)。
なお、「利害関係」とは、「法律上の利害関係」であり、試験対策上は、具体例を押さえることも大事です。たとえば、債務者Bのために自己の不動産に抵当権を設定した第三者C(物上保証人)や抵当権付きの不動産を取得した第三者C(第三取得者)は、債務者がさっさと弁済しないと、自己の不動産につき抵当権が実行されてしまう立場にあるため、法律上の「利害関係を有する第三者」にあたり、債務者の意思に反しても弁済できます。
これに対して、親、兄弟、親友は、事実上の利害関係にすぎず、債務者の意思に反して弁済することができません。
第三者への弁済
では、債務者Bが、何の権限もないCに弁済してしまった場合において、本当の債権者Aが後でBに請求してきたとき、どのように考えたらよいでしょうか。
この弁済が有効であれば、債務者Bはさらに債権者Aに支払う必要がなく、債権者Aは、「俺の金返せ」と第三者Cを追いかけることになります。この弁済が無効であれば、債務は消滅せず、債務者Bはさらに債権者Aに支払う必要があり、債務者Bは、「俺の金返せ」と第三者Cを追いかけることになります。どちらの場合も、Cは雲隠れしてしまっている可能性が高く、AとBのどちらが負担をかぶるかという問題であるとも言えるでしょう。
1 原則
原則として、債務者Bが、弁済を受領する権限を有しないCに対してした弁済は、効力を有しません。
そのようなCに払っても、債権者Aに対して、「約束を果たした」とはいえないのです。
2 例外
ただし、債権の準占有者(債権証書、通帳と印鑑、権利証、実印、偽造文書等を持っている、私は代理人だと主張している等々…、債権者らしく見える者)や、受取証書(領収証)の持参人にした弁済は、弁済者Bが善意かつ無過失の場合、有効です。
債権者らしく見えて、本当に債権者と信じてもやむを得ない場合は、弁済を有効にし、債務から免れさせてあげるのです。逆に、このような場合まで、弁済を無効にしてしまうと、債務者Bは、「本当にあなた権利者なんですか?」とより慎重に慎重を重ねることになってしまいます(銀行の窓口だと大行列になってしまいますね)。
その他
弁済の分野では、受取証書や債権証書(契約書や借用証の類)と弁済との関係(同時履行の関係に立つかどうか)も、細かいですが、念のため押さえておきましょう。すなわち、引き換えの関係に立つかどうか、もっと平たく言えば、弁済の際に「それちょうだい。それをくれるまでは、私もお金を払わない」と言えるかどうか、ということです。
結論から言えば、受取証書と弁済は同時履行の関係に立ちますが、債権証書と弁済は、そのような関係には立ちません(弁済が先で、その後に債権証書を返してもらえる)。
領収証は、払ったことを証明するものとして必要なので、「くれるまでは払わない」といえます。しかし、債権証書については、たしかに、払い終わったら債務者としては返してほしいですが、たとえ債権証書が手元になくても、領収証さえあれば、払ったことを十分証明できますので、「くれるまでは払わない」とまでは言えないのです。
いかがでしたでしょうか?弁済は、まるまる1問出題されることは多くないですが、いつ出題されてもいいように、基礎的な部分を押さえ、過去問題集などでしっかりと準備をしておきましょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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