こんにちは、仲井です。今回は、標準管理規約の「費用の負担」の分野を学習します。覚えにくい部分もありますが、頻出分野ですし、近年の改正点もありますので、マスターしておきましょう。では、早速中身に入っていきます。
目次
- 管理費等の負担割合および承継人
- 経費の充当等
管理費等の負担割合および承継人
標準管理規約では、区分所有者は、敷地および共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費・修繕積立金(管理費等)を管理組合に納入しなければならない、と定められています(ただし、管理費のうち、管理組合の運営に要する費用については、組合費として管理費とは分離して徴収することもできます。これはよく出題されるので押さえておきましょう)。
1 管理費等の負担割合
そして、この管理費等の額については、「各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出する」ものとされます(議決権割合の設定方法について、一戸一議決権等を採用する場合であっても、これとは別に管理費等の負担額については、上記規定により、共用部分の共有持分に応じて算出することが考えられます)。
なお、管理費等の負担割合を定めるに当たっては、使用頻度等は勘案しません。これもよく出題されるので押さえておきましょう。
2 承継人に対する債権の行使
では、区分所有者が変わった場合、管理費等はどうなるのでしょうか。
この点、管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の特定承継人(売買契約の買主や、競売における競落人等)に対しても行うことができる、とされています。
もちろん、包括承継人(=一般承継人、相続人等)については、民法の相続等の規定によって、当然に管理費等についての支払債務を承継します。
経費の充当等
ここからは、管理費・修繕積立金等の経費充当等について説明します。
1 管理費の経費の充当
管理費は、通常の管理に要する経費に充当します。
すなわち、管理費は、①管理員人件費、②公租公課、③共用設備の保守維持費および運転費、④備品費・通信費その他の事務費、⑤共用部分等に係る火災保険料・地震保険料その他の損害保険料、⑥経常的な補修費、⑦清掃費・消毒費およびごみ処理費、⑧委託業務費、⑨専門的知識を有する者の活用に要する費用、⑩管理組合の運営に要する費用、⑪その他建物ならびにその敷地および付属施設の管理のための業務に要する費用(特別の管理に要する経費を除く)、に充当します。①から⑪までまんべんなく出題されますので、ここは頑張って覚えましょう。
また、近年の改正によって、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用」という文言が削除された点にも注意が必要です。
なお、「標準管理規約コメント」(標準管理規約を補足するものというイメージ)では、「管理組合の運営に要する費用には役員活動費も含まれ、これについては一般の人件費等を勘案して定めるものとするが、役員は区分所有者全員の利益のために活動することに鑑み、適正な水準に設定することとする」と規定されています。これもよく出題されています。
また、「標準管理規約コメント」では、「管理組合は、区分所有法第3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体であり、居住者が任意加入する地縁団体である自治会、町内会等とは異なる性格の団体であることから、管理組合と自治会、町内会等との活動を混同することのないよう注意する必要がある。各居住者が各自の判断で自治会又は町内会等に加入する場合に支払うこととなる自治会費又は町内会費等は、地域住民相互の親睦や福祉、助け合い等を図るために居住者が任意に負担するものであり、マンションを維持管理していくための費用である管理費等とは別のものである」と定められていることにも注意しましょう。
2 修繕積立金の経費の充当
建物の経済的価値を適正に維持するためには、一定期間ごとに行う計画的な維持修繕工事が重要であるので、修繕積立金を積み立てることが必要です。
そこで、標準管理規約の規定では、管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる、とされています。すなわち、修繕積立金は、①一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕、②不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕、③敷地および共用部分等の変更、④建物の建替えおよびマンション敷地売却に係る合意形成に必要となる事項の調査、⑤その他敷地および共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができるのです。これも頻出ですので、しっかりと押さえてください。
なお、標準管理規約コメントでは、「建替え等に係る調査に必要な経費の支出は、各マンションの実態に応じて、管理費から支出する旨管理規約に規定することもできる」と定められていることにも注意しておきましょう。
3 その他の規定(借入れ・区分経理、その他)
修繕積立金に関する、その他の規定(借入れ・区分経理、その他)も頻出ですので、押さえておきましょう。
まず、標準管理規約では、管理組合は、特別の管理に要する経費(上記の①~⑤)に充てるため借入れをしたときは、修繕積立金をもってその償還に充てることができる、とされています。
また、修繕積立金については、「管理費とは区分して経理しなければならない」と定められています。
なお、標準管理規約コメントでは、「分譲会社が分譲時において将来の計画修繕に要する経費に充当していくため、一括して購入者より修繕積立基金として徴収している場合や、修繕時に、既存の修繕積立金の額が修繕費用に不足すること等から、一時負担金が区分所有者から徴収される場合があるが、これらについても修繕積立金として積み立てられ、区分経理されるべきものである」と定められていることにも注意しておきましょう。
4 「使用料」の場合
「使用料」も頻出です。標準管理規約では、駐車場使用料その他の敷地および共用部分等に係る使用料は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる、とされています。
なお、標準管理規約コメントでは、「機械式駐車場を有する場合は、その維持及び修繕に多額の費用を要することから、管理費及び修繕積立金とは区分して経理することもできる」とされています。
…今回はこれぐらいにしておきましょう。
標準管理規約の分野の学習では、「コメント」も含めて全文を通読すると飛躍的に実力が伸びるでしょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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