管理費や修繕積立金の金額は公平なの?~管理費等の負担割合について~

綾部 祐太

こんにちは。あなぶきハウジングサービス 綾部です。

分譲マンションを所有していると毎月管理費や修繕積立金等(以下、管理費等といいます)がかかりますが、その金額は同じマンション内でも住戸によって異なります。お部屋(専有部分)の面積が大きいとこれらの金額も比例して高くなることはお気づきの方も多いと思いますが、ちゃんと公平な金額になっているかどうか気になったことはありませんか?
今回は、管理費等の負担割合について、少し深掘りして考えていきたいと思います。

【原則は専有部分の床面積割合】

そもそも、管理費等の負担割合は何によって決まるのでしょうか。
それは、原則として、共用部分の持分割合=専有部分の床面積割合です。これは、「建物の区分所有等に関する法律」、いわゆる区分所有法に定められています。
具体的な計算方法の例として、総戸数100戸・1戸当たりが全て100㎡ずつのマンションだとすると、1戸当たり(例えば101号室)の専有部分の負担割合は、次のようになります

100㎡(101号室の専有面積)÷10,000㎡(100戸の専有面積の合計)=1/100

つまり、管理費等の負担割合も、全体の1/100(全戸分の総額が100万円だとしたら、101号室の負担額は1万円)となります。

(共用部分の持分の割合)
第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

(共用部分の負担及び利益収取)
第十九条 各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

『建物の区分所有等に関する法律』より

【例外は?】

原則があれば例外も存在します。

一つは、区分所有法第16条に定められている「一部共用部分」です。これは全ての区分所有者ではなく、一部の区分所有者のみが共有すべき部分を指しますが、例えば、住戸部分と店舗部分が混在しているマンションで、店舗の関係者しか利用しない出入口やエレベーターなどを一部共用部分と定めているケースがあります。この場合、その「一部共用部分」の管理(費用負担・利益収取を含む)は、原則として該当する一部の区分所有者のみが行います。
なお、一部共用部分かどうかの判断基準はとても難しいのですが、過去の裁判例(東京地裁平成24年9月21日判決)によると、「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分かどうかは、建物の構造上及び機能上の見地から判断すべきである」とされ、単にその建物の部分や設備の利用頻度によるだけでは不十分なようです。エレベーターを利用しない1階の区分所有者もエレベーター保守費を含む管理費等を負担しなければならないとされた裁判例(札幌地裁平成14年6月25日)があります。確かに、生活上でエレベーターを使わなかったとしても、1階住戸を含めた建物全体の維持管理(例えば大規模修繕工事)のために工事業者が利用することもあるでしょうし、エレベーターがあることによってマンションのグレードすなわち資産価値が担保されていること等を考えれば、1階の区分所有者が全く恩恵を受けていないとはいえないでしょう。

もう一つは、規約に別段の定めをした場合です。ただし、規約に定めさえすればどのような負担割合でも認められるわけではなく、最近の裁判例によると、区分所有者間の利害の衡平が害される、または公序良俗に反する定めは無効になります。この裁判例では、群馬県のリゾートマンションにおいて、管理費等の負担割合が部屋タイプによって不当に不均衡であり、規約の定めは無効であるとされました。
一方で、店舗部分の管理費等の負担割合を住戸部分の2倍以上に設定した決議を有効とした裁判例(東京地判昭和58年5月30日判時1094・57)も存在します。
結局のところ明確な基準はないようですが、専有部分の利用目的や利用状況等を考慮し、区分所有者間の利害の衡平が害されず、公序良俗に反しない範囲内であれば、認められる可能性が高いということが読み取れます。

(規約事項)
第三十条 建物またはその敷地もしくは付属施設の管理または使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2(略)
3 前二項に規定する規約は、専有部分もしくは共用部分または建物の敷地もしくは付属施設(建物の敷地または付属施設に関する権利を含む)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的および利用状況ならびに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。

『建物の区分所有等に関する法律』より

(公序良俗)
第九十条 公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

『民法』より

 

いかがでしたか。金銭に関することは重大なトラブルに発展する可能性もありますので、事を急がす慎重に進めるのが望ましいかと思います。専有部分の床面積割合以外の方法で管理費等の金額を設定する場合は、法的に問題がないかどうか、弁護士の先生等にチェックしてもらうことをおすすめします。
この記事が少しでも皆様のお役にたてば幸いです。

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綾部 祐太

あなぶきハウジングサービス 東日本支社 分譲管理事業統括
綾部 祐太(あやべ ゆうた)
東京都出身。2013年入社。
入社から現在まで一貫して分譲マンション管理業務に従事しています。
日々の業務を通じて培った知識や経験をもとに、皆様がより快適なマンションライフを送ることができるよう、有益な情報を発信してまいります。
保有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士
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