ペーパーレス化を考える② │ マンション管理組合運営

田中一直

目次

  • 総会議案書に対する疑問(要約)
  • 法令等の規定
  • 疑問に対する答え
  • まとめ

 

管理組合運営でのペーパーレス化について、コスト削減・資源保護・情報管理の観点から検討してみる必要をがあることを前回のブログで書きました。
管理組合運営の中では、あらゆる場面で紙を使用することが多いと思いますが、今回は前回ブログ中に書きました「総会議案書に対する疑問」に焦点を絞って、ペーパーレス化の可否と問題点等を考えてみました。

【前回のブログはこちらです】
https://anabuki-m.jp/information/residents/19773/

総会議案書に対する疑問(要約)

前回ブログで書きました、管理組合総会の出席者のご意見を要約しますと次のようになります。

① 総会議案書を簡略化して要点を絞った議案書にしてほしい。(分厚い議案書は不要)
② 総会議案書をデータ配信して欲しい。
③ 総会議案書は総会当日にプロジェクターなどで投影して説明して欲しい。(総会議案書は必要な人だけに配付する)

法令等の規定

年1回の通常総会の時に、区分所有者に配付される「総会議案書」には、一般的に、決算報告書・事業報告書・予算案・事業計画書・役員名簿・その他修繕工事などの内容が含まれていると思います。
この通常総会で決議すべき内容(議案)については、区分所有法(分譲マンションの権利形態や管理組合の運営等について定めらた法律)の規定や、各マンションの管理規約の規定に基づき決められています。
しかし、その決議をするために、どのような方法でどのような内容や資料を各区分所有者に提供しなければならないのかは、区分所有法や、マンション標準管理規約(マンションの標準的な管理規約のモデルとして国土交通省が発表しているもの)においては、建替えなどの重大案件以外の場合においては、具体的な規定はありません
区分所有法やマンション標準管理規約で、総会を開催するときに通知すべき内容として規定されているのは、総会の日時、場所、目的(何を決めるのか)の3つだけです。(ただし、管理規約変更や共用部分変更等の特別決議の議案がある場合は、議案の内容を要約したものを通知しなければなりません)
この3つのうち、「総会の目的」については、何を決めるのか(例:屋上防水修繕の件、修繕積立金の改定の件など)がわかれば問題ありませんので、それ以上に詳しい内容の資料を区分所有者へ提供(総会議案書等に記載して提供)するか否かは各管理組合が自由に決めることができるということになります。

疑問に対する答え

従いまして、上記ご意見の①③については、最低限必要な3項目を期日まで(区分所有法では総会開催日の1週間前)に通知しておけば、決議に特別決議以上の重大案件が含まれていない場合には、総会議案書の内容の簡略化・総会時のプロジェクターで投影・希望者だけへの議案書配付については、各管理組合の判断により実現することは可能だと思います。

ただし、①③を実際に運用する場合には、少し懸念されることもあります。それは、総会を欠席する区分所有者も存在するということです。
総会を欠席する区分所有者は、一般的には代理人に議決権を委任するか、書面で議決権を行使することが多いと思いますが、欠席する区分所有者は、事前に伝えられらた情報をもとに代理人を決定したり、議案への賛否を決めることとなるため、情報が少なすぎると正確な判断ができないこともありますので、簡略化を運用する際には、総会を欠席する区分所有者への配慮も含めた運用とすることが不可欠であると思います。

まとめ

総会議案書等の総会時に配付する資料は、議案の内容が区分所有者に正しく伝わり、正しい判断(賛否)を導くための資料であることが重要だと思います。必要以上に多くの資料を配付することで反対に判断を迷わせてしまう結果となる場合もあり、また、資料に個人情報など機密性が高い情報が含まれる場合には、その取扱いにも十分な留意が必要となります。
わたくし個人の考えですが、総会議案書は、議案の要旨だけを記載し、捕捉資料的なものは、区分所有者全員に配付する必要はないと感じています。より専門的で詳細な資料等を必要とされる区分所有者には、個別に資料を提供するか、総会当日に資料を準備しておくなどで十分対応できるのではないか思います。
皆さまの管理組合においても、この機会に「総会議案書」をより意味があり費用対効果の高いものに見直すことも検討してはいかがでしょうか。次回のブログは総会議案書に対する疑問②「総会議案書のデータ配信」について書きたいと思います。

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田中一直

あなぶきハウジングサービス 田中 一直(たなか かずなお)
香川県出身。あなぶきグループに平成6年に入社。主に新築マンションの販売、中古マンション・戸建などの仲介業務を経て、その後、マンション管理業務に約20年従事しています。マンション管理組合の運営補助だけでなく、お客さまのマンション生活が安心で快適であるため、常にプラスアルファの提案活動を心がけています。
資格:マンション管理士・マンション維持修繕技術者
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