マンションライフにおけるタバコ・喫煙トラブルの実情について

和田典久 和田典久

こんにちは。あなぶきコールセンターの和田です。
当センターでは月間で約7,000件の様々なお問合せ・ご相談・ご依頼を受け付けています。
その内容は、マンションライフに関わることから、少し離れた内容まで多岐にわたりますが、その中から、皆さんが関心がありそうなこと、知っていそうで意外とご存じ無いこと等々を取りまとめて発信していきたいと思います。どうかお付き合いください。

 

今回のテーマは、『マンションライフにおけるタバコ・喫煙トラブルの実情について』です。
壁やベランダを通じて縦横に接するマンションでは、一戸建てと違って他人が吸った「タバコ」の煙や臭いがダイレクトに伝わります。タバコを吸う方と吸わない方とで、ご意見が真っ向から対立するため利害調整が難しい問題ですが、マンションライフにおいて、昨今では避けては通れない近隣トラブルの一つですよね。

まずは、下の<図表1>をご覧ください。データが少々古くて申し訳ないのですが、このグラフは当コールセンターで2014年度に当社管理物件の喫煙トラブルの傾向をまとめた社内向け資料を基に作成したバブルチャートです。 年を追うごとに「タバコ」に関する相談件数が増加傾向にあること、相談内容の順位が変化していることが解かります。

また<図表2>は、図表1で使用した元データを<築後10年超物件>と<築後10年以内物件>という風に築後年数で切り分けて、相談内容の変化の有無を比較した円グラフです。2つの円グラフを見比べると、相談項目の比率が築後年数によって大きく異なることがお解かりになると思います。

出典:あなぶきコールセンター まとめ

今回のブログでは、マンションライフにおけるタバコ・喫煙トラブルの実情を、当コールセンターに寄せられた実際の相談事例だけではなく、喫煙トラブルが裁判になった事案の判例紹介なども交えてご紹介していきます。ご参考になさってみてください。

 

Ⅰ.タバコ・喫煙トラブルで実際にあった相談事例

先に紹介したグラフでは、大きく相談項目を5つに分類分けしていました。まずはこちらの具体例を紹介しましょう。

【①吸殻】は、「上階の部屋から(または隣戸から)タバコの吸殻を自宅ベランダへ投げ捨てられた」や「ベランダで自分が吸ったタバコの吸殻を、○○号室の住民が下に投げ捨てているところを目撃した」などが主な相談事例です。 【④共用部喫煙】とは異なり、ベランダや専用庭でのタバコの吸殻についてのトラブルです。

【②灰】は、吸殻自体ではなく「うちは家族全員誰もタバコを吸わないのに、タバコの灰が洗濯物に付いていた」や「上階の住民がベランダでタバコを吸って1階に落とす灰で駐車場に停めていたうちの車が汚された」など、灰についてのトラブルです。

【③煙害・臭い】は、文字通り「近隣住民が吸ったタバコの煙や臭いが、うちの部屋内の給気口から室内に入って来た」や「ベランダで隣の入居者がタバコを吸うので、洗濯物に臭いが付いて迷惑」などが主な相談事例です。
先に紹介した<図表1>を見ると解りますが、集計を取った2010年時には相談件数のトップだった【②灰】に代わって近年増加傾向にあります。

【④共用部喫煙】は、エントランスホールやエレベーター内、共用廊下など、使用細則で明示的に禁止されている場所での喫煙トラブルを指しています。【⑤焼け焦げ】と共に、喫煙者のモラル・マナーが他の事例よりも悪質なケースと言えます。なお、共用部喫煙の相談は<10年超物件>では19%を占めていたのに、<10年以内物件>では8%に半減しています。築年数が新しいマンションでは、共用部での喫煙に心理的な抵抗(新しいマンションなので汚さないように)が働いている可能性が考えられます。

【⑤焼け焦げ】は、「火の点いたタバコの吸殻が投げ捨てられていた」が典型事例ですが、当コールセンターで実際に受け付けた相談の中にも「駐車場に停めていた車のワイパーゴムが溶けた」や「ベランダ床の長尺シートが焦げた」など、火災の危険を伴う事例がありました。大変危険な行為であると言えます。

このように喫煙トラブルというのは、ほぼ100%被害者側(非喫煙者側)からの相談です。従ってタバコを吸う人は何てマナーが悪いのか!というような事例が並びます。でも愛煙家側も、もしかすると家族から室内での喫煙を煙たがられて、泣く泣くベランダで吸っただけかもしれません。ベランダに置いた灰皿に残っていた灰や吸殻が、たまたま風で飛んでしまっただけで本人に悪気は無かったのかも知れません。ただ上記で紹介したのは、どれも実際に当コールセンターで受け付けたお客様からの相談事例です。例えば灰も、ちゃんと灰と解かる形状で他のお宅のベランダに飛来して実際に洗濯物を汚すことがあるのです。いわんや故意に火の点いたままの吸殻を投げ捨てるなどは論外の危険行為ですね。
タバコはし好品ですから、愛煙家の方にもタバコを吸う自由は認められるものと思いますが、モラルとマナーを持って楽しんで頂きたいものです。

 

Ⅱ.タバコ・喫煙トラブルをめぐる最近の傾向・動向

管理会社へ対応を求めるお客様の動機の変化

<図表2>の分析から解かることですが、<10年超物件>に住むお客様は「自宅ベランダに吸殻が投げ捨てられた」「共用部分で喫煙している人がいる」といった目に見える実害が生じたことが、管理会社へ対応を求めて連絡する動機になっていたのに対し、<10年以内物件>に住むお客様は「うちの家族はぜんそくを患っているのでタバコの副流煙が心配」「折角新しいマンションに住んでいるのに、隣人の吸うタバコの臭いが苦痛」「家族に遠慮をして隣のご主人がベランダでタバコを吸っているが、風に乗ってうちの方に煙が流れてくる。自分の家族よりも他人に迷惑を掛けないで欲しい」といった声に代表されるように、健康被害や精神的苦痛という目に見えない被害に対して、管理会社へ対策を求めるように変化しています。

健康増進法(別名:受動喫煙防止法)の改正

「望まない受動喫煙」をなくすという基本概念のもとに、施設の類型や場所に応じた受動喫煙対策が実施されるように法律が順次施行されます。2020年の東京オリンピック開催を契機にして、飲食店なども原則として屋内は禁煙となり、喫煙を認める場合は喫煙専用室を設けること(小規模な飲食店には経過措置あり)などが決まったことは、昨年(2018年)夏に改正法が可決・成立した際に盛んに報道されたので、ご存じの方も多いですよね。

出典:厚生労働省ホームページ 「受動喫煙対策」より

そして、あまり報道されていなかったように思うのですが、実は第25条の3という条文が新設され(2019年1月24日施行)下記のように規定されています。

(喫煙をする際の配慮義務等)
第二十五条の三 何人も、喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない。
学校や病院、公共交通機関や事務所・工場、飲食店などのいわゆる特定施設以外の「屋外や家庭など」であっても、喫煙を行う場合は周囲の状況に配慮しなければならないと法律に規定されたわけです。この規定に違反したからといって罰則が科せられるものではありませんが、後述する裁判所の判例にもあるように、例え自宅のベランダでの喫煙であっても、周囲への配慮もなく他者への迷惑を顧みずに自由に喫煙してよいとは今後認められないでしょう。

禁煙マンションの動きも活発化

賃貸マンションでは、居室部分を含む建物内および、敷地内の喫煙を完全に禁止にした「禁煙マンション」が現れています。タバコを吸わない人しか入居しないので喫煙トラブルに悩むことも無く、またオーナーにとってもタバコのヤニ汚れで壁紙が劣化することを防げるメリットがあるようです。
また分譲マンションにおいても、新築分譲時からベランダでの喫煙を禁止する使用細則条項を設けているケースが増えてきました(さすがに賃貸とは異なり、居室内まで全面禁煙の分譲マンションは少数派のようです)。

「禁煙」の範囲に、昨今急速に普及している加熱式タバコ(いわゆるアイコスなど)での喫煙がどのように扱われるのか、という新たな問題が生まれていますが、これに関しては今後の課題でしょう。

新築ではなく既存のマンションにおいても、喫煙トラブルをきっかけに、ベランダでの喫煙を認めるべきか否か、使用細則等の改定を総会で議論する(または総会で議題に上げようと準備する)管理組合も徐々に増えてきたように思います。冒頭にも記載したように、タバコを吸う方と吸わない方とで、ご意見が真っ向から対立する問題ですが、入居者同士でしっかり話し合うことが大切です。

 

Ⅲ.マンションのベランダでの喫煙に関する判例

ご紹介するのは名古屋地方裁判所 平成24年12月13日の判決です。『マンションのベランダで喫煙を継続する行為が、不法行為として認められるか』が争われ、原告の請求が一部認められた判決です。
(事案の概要)
マンションの上階に住む原告が、真下階に住む被告に対し、被告がベランダで吸うタバコの煙が原告の室内に流れて来ること、それによって体調が悪化したこと等から、被告に対しベランダでの喫煙を止めるように再三にわたり求めたのに、被告は喫煙を継続。これによって精神的肉体的苦痛を受けたとして不法行為に基づく損害賠償を求めて提訴。
被告側は「受忍限度内であって違法性はない」「被告が喫煙しているのは、被告所有の建物内であって、私生活における自由が尊重されるべき」「原告と被告が居住するマンションの使用規則にベランダでの喫煙を禁じる規則はない」「タバコの煙が、上階である原告の居室に流れ込むことがあったとしても、原告が窓を閉めれば容易に防止できる」などと主張した。

(判決の論旨)
自己の所有建物内であっても、いかなる行為も許されるというものではなく、当該行為が第三者に著しい不利益を及ぼす場合には制限が加えられることがあるのはやむを得ない。そして、喫煙は個人の趣味であって本来個人の自由に委ねられる行為であるものの、タバコの煙が喫煙者のみならず、その周辺で煙を吸い込む者の健康にも悪影響を及ぼす恐れのあること、一般にタバコの煙を嫌う者が多くいることは、いずれも公知の事実である。

したがって、マンションの専有部分及びこれに接続する専用使用部分における喫煙であっても、マンションの他の居住者に与える不利益の程度によっては制限すべき場合があり得るのであって、他の居住者に著しい不利益を与えていることを知りながら喫煙を継続し、何らこれを防止する措置をとらない場合には、喫煙が不法行為を構成することがあり得るといえる。このことは、当該マンションの使用規則がベランダでの喫煙を禁じていない場合であっても同様である。

室内で吸ったタバコの臭いが換気口から排気される場合は?

ベランダでの喫煙で流れてきた煙や臭いについては上記の通りですが、では被告がもしも室内で換気扇を回しながら喫煙していて、タバコの煙や臭いが換気口から外部に排気された場合はどうなるでしょうか?
この点について、参考までに先の名古屋地裁の判決は次のように判示しています。

(判決の論旨)
被告がベランダでの喫煙をやめて自室内部で喫煙をしていた場合でも、開口部や換気扇等から階上にタバコの煙が上がることを完全に防止することはできず、互いの住居が近接しているマンションに居住しているという特殊性から、そもそも原告においても、近隣のタバコの煙が流入することについて、ある程度は受忍すべき義務があるといえる

 

Ⅳ.まとめ

いかがだったでしょうか?先の判例は、マンションのベランダでの喫煙行為が直ちに不法行為になると判示したわけではありません。互いの住居が近接するマンションの特殊性、被害者側にもタバコの煙が流入することについてある程度の受忍義務があるとしつつ、喫煙者側には周囲の状況に応じた配慮を求め、他の居住者に著しい不利益を与えていることを知りながら喫煙を継続することが不法行為に当たるとの内容です。 健康増進法の改正も「望まない受動喫煙」をなくすことが基本概念でした。
同じひとつ屋根の下で暮らす入居者様同士、お互いに気持ちよく暮らせるように、お互いを思いやる気持ちが、マンションライフでは大切なように思います。

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和田典久

和田典久

あなぶきコールセンター 和田 典久(わだ のりひさ)
香川県高松市生まれ。早稲田大学法学部卒。
学生時代は弁護士を志すも夢破れて帰郷し、2001年に入社。最初の配属は賃貸事業部。
高松で賃貸仲介を4年、広島でPM業務を5年務めて、2010年12月より現職。
現場経験を生かして、北は北海道、南は沖縄まで全国に展開するお客様からの問合せに自ら対応しつつ、センターのスタッフに指示を出す日々です。
このブログでは、実際にセンターへの問合せが多い内容を中心に、お役立ち情報を発信していきたいと思います。
珈琲と旅行をこよなく愛する、最近メタボ気味な45歳。

【保有資格】宅地建物取引士 管理業務主任者 賃貸不動産経営管理士
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