こんにちは。あなぶきコールセンターの和田です。
当センターでは月間で約8,000件の様々なお問合せ・ご相談・ご依頼を受け付けています。
その内容は、マンションライフに関わることから、少し離れた内容まで多岐にわたりますが、その中から、皆さんが関心がありそうなこと、知っていそうで意外とご存じ無いこと等々を取りまとめて発信していきたいと思います。どうかお付き合いください。
今回のテーマは、『マンションで水漏れ事故に遭ったら、まず何をすれば良いのかについて』です。
これまでに、このブログでも【水漏れトラブル】について各担当者が記事の投稿をしてきました。その内容は主には「水漏れトラブルを起こした時、被害に遭った時のマンションの保険について」という内容か、「どういう原因で水漏れ事故が発生するのか」という内容でした。
今回のブログでは「水漏れトラブルの被害を受けた時に、何をすればいいか」「下階から水漏れしていると言われた時に、何をすればいいか」を中心に当コールセンターでの実際の対応事例などを交えてご紹介したいと思います。トラブルは無いに越したことはありませんが、どうしても避けられないこともあります。このブログがそんな時に少しでもお役にたてば幸いです。
Ⅰ.可能であれば上階を訪問して下さい
「あ、天井から(または壁を伝って)水が漏れてきている!」と気が付いた時に、まず皆さんがとっさに行うのは、①タオルを敷いたりバケツや洗面器で水を受けて少しでも被害拡大を防ぐ行為だと思います。もし手に負えない場合は、②当コールセンターの様な24時間受付の管理会社相談窓口に連絡されるでしょう。①・②までは誰かに言われなくても皆さんがほぼ同じように行動されると思います。
問題はここから。もし可能であれば上階を訪問して頂きたいのです。水漏れが止まらない場合は四の五の言っていられないので、仮に真夜中であっても訪問頂いて構いません。②で管理会社に連絡が付いた場合は、上階への連絡は管理会社が電話で行うでしょう。当コールセンターでも漏水と火災の場合は深夜でも関係なく上階の方にご連絡を行います。
ただ一つ問題があって、管理会社が電話しても上階の方が応答頂けない場合があるんです。これは我が身に置きかえれば理解できます。夜中にいきなり知らない番号から電話が掛かってきても無視したくなりますからね。この場合管理会社は時間を置いて掛け直したり、他の緊急連絡先が無いか確認するでしょうが、それでも連絡が取れない場合には、被害者のお客様に「もし可能であれば上階を訪ねて頂けませんか?」とお願いする場合があります。というのも水漏れが現在進行形で起きている場合、管理会社の電話には応答しなくても実際は在宅されていることが多いからです。
天井からの水漏れトラブルが起きた時に一番最初にすべきことは、上階住戸の在宅確認と、在宅の場合は上階の室内に水漏れの原因になる異常が無いかを確認することなのです。
Ⅱ.上階が在宅していたら、上階の室内に異常が無いか確認しましょう
上階を訪問して、もし在宅だったら「下の階の者ですが○○の部屋の天井から水漏れしています。」と事情を説明して、相手のお部屋内で水漏れの原因になる異常が無いかを聞いてみてください。あるいは、その場で携帯電話から管理会社に連絡して相手の方に電話を代わって頂いても結構です、必要事項は管理会社が上階の方に確認するでしょう。なお、マンションの水漏れトラブルでよくある事例を下記に紹介します。ご参照ください。
キッチン
・流し台の下の収納扉を開けて、給・排水管から水が漏れたり、収納部分が濡れたりしていないか。キッチンの床が濡れていないか。
キッチンが原因の水漏れの場合、よくあるのはシャワーホースが伸縮する「シャワー水栓」のホースが破損して漏れているケースです。この場合は収納部やキッチン床が濡れている場合がほとんどなので目視でも異常に気が付く場合が多いです。
目視では異常が確認できない場合はキッチンの裏側や床下の配管に亀裂や小さな穴が開き、そこから知らないうちに漏れている場合があります。これは業者を手配して調査しないと気が付かないかも知れません。
トイレ
・トイレの床が濡れていないか。トイレの給水管が濡れていないか。タンク上部の手洗い部から水が溢れていないか。トイレが詰まって溢れていないか。ウォシュレットの温水タンクから漏れていないか。
トイレが原因の下階への水漏れでよくありがちなのは、タンク上部の手洗い部分から水がこぼれて床に溢れているケースです。タンクのそばに置いていた芳香剤などが倒れて穴を塞いでしまう事故は案外多いです。
洗面所
・洗面台の下の収納扉を開けて、給・排水管から水が漏れたり、収納部分が濡れたりしていないか。洗面所の床が濡れていないか。
洗面台下の収納部というのは買い置きの洗剤などを保管していることが多くて、扉を開けて中を見る頻度って意外と少ないですよね。また洗面所の床マットが濡れていても「家族が顔を洗う時に水を飛ばしたのかな?」と思って気にしないこともありがちです。
なので洗面台のシャワーホースや配管に不具合があって水漏れしていても当の居住者が気が付いてなくて、確認してもらった時には収納部の底板が水を含んでブヨブヨになっていて「一体いつ頃から漏れていたんだろう?全然気付かなかった!」というケースは案外多いんです。
洗濯機置場
・蛇口と洗濯機を繋ぐ給水ホースが外れていないか。洗濯機と排水口を繋ぐ排水ホースが外れていないか。排水口が詰まって床に溢れていないか。
下階に水漏れするにはある程度の量の水が漏れている必要があります。具体的な統計データはありませんが実感としては、洗濯機置場が原因の漏水事故というのはマンションでは非常に多いと思います。洗ってすすいで1回の洗濯で約100リットルくらいの水を使うので、これが全部漏れたら下階の部屋では滝のようなダダ漏れになるでしょうね。
洗濯機は脱水の時にかなり振動するので、ホースをしっかり繋げていないと知らず知らずに緩んでいることがあるので注意が必要です。またホースが繋がっていても排水口が目詰まりしていると床に溢れます。さらに排水トラップの取付が緩んでいたりパッキンの劣化などで、気が付かないうちに床下に排水が漏れてしまっているケースもあります。当コールセンターでは、上階の方に洗濯ホースの外れや床に水が溢れたりしていないことを確認したうえで、さらに念押しで『最近洗濯排水の流れが悪かったことはないですか?』『ちなみに最後に洗濯したのは何時頃ですか?』と確認することがあります。
浴室
・浴室内で水(お湯)を出しっ放しにしていないか。排水口が詰まって溢れていないか。
浴室は防水になっているので、水が流れっ放しでも正常に排水されていれば下階へ漏れることはありませんが、排水口が髪の毛などで詰まっていると排水されずに脱衣所の方に溢れてしまうことがあります。つい最近もこのケースで下階に水漏れした事故がありました。また洗濯機置場と同様ですが、排水トラップの取付が緩んでいたりパッキンの劣化などで、気が付かないうちに床下に排水が漏れてしまっているケースがあります。
下階の洗面脱衣所の天井から水漏れしている場合は、浴室の排水が原因のケースが多いので、上階の方から「うちの部屋では漏らしてないし何も異常は無いですよ?」と言われた時でも、『最近お風呂の排水が流れにくかったことは無いですか?』『今日最後に入浴したのは何時頃ですか?』と確認することをお勧めします。
ガス給湯器・電気温水器
・電気温水器のタンクが室内に設置されている場合に、温水器の周囲の床に水たまりなどが無いか。ガス給湯器の配管から水が漏れていないか。
電気温水器はタンク内の圧力を調節するための「逃がし弁」という部品があり、ここからタンク内で蒸発した水を排水して圧力を調整します。電気温水器の運転時に逃がし弁から排水されるのは正常な動作なのですが、その排水を流す排水管が詰まっていたり、逃がし弁自体の劣化で温水器置場に水たまりが出来て下階に漏れることがあります。また温水器や給湯器の配管が破損して、お湯がダダ漏れになってしまうケースもあります。
水漏れというと皆さん台所や浴室はしっかり確認するのですが、温水器・給湯器が原因の漏水もあるので確認が必要です。
その他・雨漏りなど
・過去に実際に有るケースですが、真上の部屋に水漏れの原因があると思って事情を確認したら、実はさらにその上の階から水漏れしていたり、屋上などからの雨漏り・浸水で複数の階にわたって漏水が起きていたことがあります。
下階の方は自宅に水漏れがあると、つい「上の部屋に原因があるに違いない」と思って、中には事情も分からずに怒鳴り込んでいく方も居られるのですが、上階も漏水被害者であるケースがあるので、原因が分からないうちに感情的なやり取りをするのは止めた方が良いでしょう。
Ⅲ.上階の水道メーターが回ってないか確認して下さい
以上が主な水漏れの原因ですが、実際は上階を訪ねて事情を聞いても目で見える範囲では原因まで特定できないことが多いです。また、上階を訪問したけれど応答が無い(留守にしているか就寝中など)場合もあるでしょう。その場合は上階の水道メーターが回っていないかを確認して下さい。水道メーターには「パイロット」と呼ばれるコマが回ることで室内で漏水していることを知らせる機能があるからです。
上階が不在の場合や、上階が在宅しているが全ての蛇口を閉めて水を流していない状況にも関わらず、水道メーターが回っていたら目視では確認できていなくても給水管(または給湯管)から水が漏れ続けているサインなので、直ちに『止水栓』を閉めて給水を止めることが必要です。
<この矢印の先の銀色の部分がパイロットです>
画像出典:あなぶきコールセンター 撮影
水道メーターの確認方法や、止水栓の閉め方は、当ブログの『水漏れ発生!?|マンションの水道メーター確認方法』に詳しいのでこちらを是非ご参照ください。
Ⅳ.できるだけ被害状況を写真に撮っておきましょう
水漏れが継続していると、床に貯まった水を拭いたり濡れた家財道具を片付けることで頭が一杯になりますが、下階の方の被害は、上階の方または管理組合で加入している損害保険で補償されるので、その時の手続きに備えて被害状況を写真に撮っておきましょう。撮影の方法・方式に特に決まりはありませんが、漏れてきた場所や水で濡れてしまった箇所を撮っておくと良いでしょう。
下階で水漏れの被害に遭われた方が自分でやれることはここまでです。
管理会社は水漏れの連絡を受けた時点で、出来る限り速やかに担当者や設備業者を手配するので、上階の漏水原因調査・漏水原因修理と同時並行で、被害状況の確認や応急処置のためにお伺いします。それでも天井裏に残った水が完全に落ち切るまでの間は、しばらくポタポタと水漏れが続くでしょうが、これは時間の経過を待つしかありません。保険の手続きや被害箇所の復旧修理は、管理会社の担当者や保険会社から連絡がありますからその内容に従って打ち合わせを行って下さい。
Ⅴ.上階の方は漏水原因が分かるまでは、出来る限り水の使用は控えて下さい
ここからは「天井から水漏れしているんですけど・・・」と言われた上階の方の対応についてです。
先に述べたⅡの項目に従って原因になりそうな箇所を確認しましょう。漏水原因が確定したら次はその箇所の修理に移ります。もし原因が分からなければ管理会社が手配した設備業者の点検調査を受けて頂くことになります。
この時の注意事項ですが、この点検調査は水漏れの被害拡大を防ぐための非常に大事な作業になるので、なるべくご都合を調整して点検を受けるようにご協力ください。また上階の方は漏水原因が分かるまでの間は出来る限り水の使用は控えて下さい。
時々「水を使わないでほしい?こっちにだって生活があるんだよ!」と仰り点検等を拒む方が居られます。いきなり「お宅から漏水しているのではないか?」と言われ、水を漏らした覚えはなく、目視で確認しても自宅には何も異変が無い時には「本当にうちが原因なのか?他に原因があるんじゃないのか?それなのに何で協力しないといけないのか?」という気持ちになるのは理解できるのですが、まさにその漏水原因をはっきりさせるための点検調査ですから何卒ご協力をお願いします。
Ⅵ.漏水箇所の修理は、出来るだけ管理会社が手配した設備業者で受けて下さい
これは注意事項というよりお願い事項になります。漏水原因が特定できて修理が必要と解かった時に、時々「修理は自分でやりますよ」と仰る方が居られます。下階の方の被害補償や漏水原因調査費用は、損害保険で賄えることが多いのですが(保険契約によっては免貴金額や免責事項もあるので自己判断せずに管理会社や保険会社に必ず確認しましょう)、漏水原因箇所が専有部分内にある場合は、そのお部屋の所有者が修理費用を負担する必要があります(=漏水原因箇所の修理費用は保険が適用されず自己負担です)。そのため少しでも安上がりにしたくて修理を自分でしようとされるのでしょうが、これは管理会社や下階の被害者にとってはご遠慮いただきたいのです。というのも本当に確実に修理して頂けたかどうかの確認が困難になるためです。
過去に当センターでもあった実例ですが「修理は自分で行う」と仰るのでその言葉を信じて上階の方にお任せしたのに、いつまで経っても漏水が止まらない、気になって上階の方に確認すると「すいません、忙しくてまだ修理できてませんでした」と。被害がますます拡大しただけでした。このようなケースもあるので漏水箇所の修理は管理会社が手配した設備業者にお任せください。
Ⅶ.被害者へのお詫びは必ずされることをお勧めします
自分の過失で水漏れを起こしてしまった場合(=お子さんがバケツをひっくり返した、水を流しっ放しにして床に溢れさせたなど)はもちろんのこと、目視で確認できないような床下配管からの漏水であっても、水漏れ被害に遭われた下階の方にはお詫びの挨拶に行かれることをお勧めします。菓子折りを持って行った方が良いかとか、どのタイミングでお詫びするのが適当かなどは迷うところですが特に決まりはありません。ただ今後も同じマンションで暮らし続けるわけですし、被害に遭われた方は精神的にも金銭的にもしんどい思いをされているのですから最低限の配慮は必要だと思います。
この辺りの事情は、当ブログの『マンション漏水事故 │ 加害者になったとき心がけたいこと』に詳しいので是非ご一読ください。
Ⅷ.まとめ
いかがだったでしょうか。水漏れトラブルは、同じ建物内に複数の住戸が存在するマンションならではのトラブルと言えます。しかも生活の基盤である住まいに被害が及ぶのですから被害者の方の心労は如何ばかりかとお察しします。しかし全く故障や不具合の起きない建物・設備機器は無いのですからトラブルが起きてしまった時に出来る限りの対応をするしかありません。
この点、マンション管理会社はこういう対応には長けていますから、自力での対応が難しい場合はすぐに管理会社にご連絡ください。マンションライフを送る方々のお力になれるよう最大限サポートいたします。
和田典久
香川県高松市生まれ。早稲田大学法学部卒。
学生時代は弁護士を志すも夢破れて帰郷し、2001年に入社。最初の配属は賃貸事業部。
高松で賃貸仲介を4年、広島でPM業務を5年務め、2010年12月よりあなぶきコールセンターで全国からのお客様の声に向き合う。
2021年7月からは事業推進本部 業務推進課で分譲・賃貸・CX・コールセンターとも連携した全社的な業務推進を進めていく。
このブログでは、これまでの現場経験を生かしてお役立ち情報を発信していきたいと思います。
珈琲と旅行をこよなく愛する、最近メタボ気味な48歳。
【保有資格】宅地建物取引士 管理業務主任者 賃貸不動産経営管理士
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