こんにちは。飯野です。
本日も前回記事に引き続き2016年3月に大幅に改正された標準管理規約について解説したいと思います。
目次
- 理事会決議事項の範囲拡大
- 暴力団構成員などのマンション内居住について
- 役員関連
- まとめ
- 1. 理事会決議事項の範囲拡大
- 2. 暴力団構成員などのマンション内居住について
- 3. 役員関連
- 3.0.1. 一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
- 3.0.2. 二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 3.0.3. 三 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)
- 3.0.4. 役員は、次に掲げる場合には、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
- 3.0.5. 一 役員が自己又は第三者のために管理組合と取引をしようとするとき。
- 3.0.6. 二 管理組合が役員以外の者との間において管理組合と当該役員との利 益が相反する取引をしようとするとき。
- 3.0.7. 管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権 を有しない。
- 3.0.8. この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表する。
- 4. まとめ
理事会決議事項の範囲拡大
改正により、第54条(議決事項)に以下の条文が追加されました。
七 第58条第3項に定める承認又は不承認
決算から総会(3ヶ月以内)にて次年度予算が承認されるまでの期間に支出される「経常的であると認められるもの」「総会の承認を得て実施している長期の施工期間を要する工事に係る経費」については理事会決議で支出可能とするものです。
ほとんどの管理組合が決算終了後3か月もしくは2か月以内に通常総会を開催して予算の承認を諮っています。たとえば決算が3月の管理組合の場合、通常総会は5月もしくは6月になるため、4月からは総会で承認されていない支出となってしまうため、改正された標準管理規約において、止むおえない支出については理事会決議で支出ができるようになっています。この規約改正は現状の運用に規約をあわせる改正といえるでしょう。
八 第60条第4項に定める未納の管理費等及び使用料の請求に関する 訴訟その他法的措置の追行
滞納者に対する法的措置を理事会決議にて可能とするものです。管理費等の確実な徴収は、管理組合がマンションの適正な管理を行う上での根幹的な事項です。管理費等の滞納は、管理組合の会計に悪影響を及ぼすのはもちろんのこと、他の区分所有者への負担転嫁等の弊害もあることから、滞納された管理費等の回収は極めて重要であり、管理費等の滞納者に対する必要な措置を講じることは、管理組合(理事長)の最も重要な職務の一つであるとの国土交通省の見解がだされています。
十一 災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕 工事の実施等
2 第48条の規定にかかわらず、理事会は、前項第十一号の決議をした場合においては、当該決議に係る応急的な修繕工事の実施に充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩しについて決議することができる。
マンション共用部分の変更や修繕の予算や支出は総会決議事項とされているため、災害等でマンション共用部の修繕が必要となった際も総会を開催して承認を諮ったうえで支出が可能となりますが、災害時の総会開催は困難なため、災害等で発生した修繕工事の実施は理事会決議で実施が可能となるよう条文が追加されています。
暴力団構成員などのマンション内居住について
改正により、第19条の2(暴力団員の排除)が追加され、区分所有者が暴力団員に専有部を貸与することを禁止しています。暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)により、暴力団員の行動が大きく制限されていますが、マンション管理規約についてはいままで手つかずのままでした。今回の改正によりようやくマンション管理規約でも居住者の安全と平穏の確保のための条文になりました。
役員関連
ここでは役員関連の改正内容について紹介します。
第36条の2(役員の欠格条項)が追加され管理組合役員に条件をつけられています。
一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
三 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)
また、第37条の2(利益相反取引の防止)の追加により管理組合の役員が、利益相反取引(直接取引又は間接取引)を行う事が無いように理事会で当該取引につき重要な事実を開示し、承認を受けなければならないことを定めています。
役員は、次に掲げる場合には、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 役員が自己又は第三者のために管理組合と取引をしようとするとき。
二 管理組合が役員以外の者との間において管理組合と当該役員との利 益が相反する取引をしようとするとき。
また併せて第38条5項には以下の条文が追加されています。
管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権 を有しない。
この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表する。
この改正により、理事長も同様に利益相反事項には代表権を有しないことになり、いわゆる理事長が中間マージンを搾取すること自体をさせない条文が追加されています。
まとめ
前回と今回解説した内容についてはかならず改正しなければならないものではありませんが、管理組合で情報を共有したうえで、今後の管理組合の有り方について打ち合わせをする時間を設けてみてもいいかと思います。次回は標準管理規約の改正点ではありませんが、今回の改正に合わせて検討したい項目について紹介したいと思います。
飯野琢磨
前職では大工や建築積算を経験。入社後、マンション修繕工事のコンサル業務、分譲マンションのリプレイス営業、分譲マンションのフロントを経験。
マンション管理のことについてはもちろんのこと、リフォームやリプレイスなどさまざまな視点から幅広い情報を提供します。
所有資格:一級建築士・マンション管理士・管理業務主任者・宅地建物取引士
最新記事 by 飯野琢磨 (すべて見る)
- マンションの駐輪場問題でお悩みの方必見!分譲マンション自転車問題の解決方法 - 2022年5月30日
- 意外と知られていない!?分譲マンションで禁止されている事項 - 2021年8月27日
- 分譲マンションインターホンをリニューアル更新するときのポイント - 2020年12月19日