マンション管理組合向け 放置自転車を処分する上での注意点

綾部 祐太

こんにちは。あなぶきハウジングサービス 綾部です。

今回は放置自転車の処分に関する記事です。駐輪場を整備された状態に保つことは多くの管理組合様にとって課題の一つだと思いますが、この記事では、マンション敷地内に放置された、あるいは所有者不明の自転車がある場合に、それを処分するにあたって注意していただきたい事項について記載したいと思います。

 

【勝手に処分するのはリスクが高い】

特に都市部では道路(公道)等における放置自転車の取り締まりが厳しくすぐに撤去されてしまいますので、無断で停めているのだから放置自転車はすぐ処分しても構わないのでは?という認識の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そういった対応は各地方自治体の条例等で定められているので問題になりませんが、私有地では適用されません。
いきなり処分するのはリスクが高いので避けましょう。なぜかというと、他人の所有物を勝手に処分すると、損害賠償等の法的責任を負ってしまうおそれがあるからです。放置自転車といっても、盗難車であったり入居者や来訪者が置き忘れたものであったりと所有者がいる可能性があります。法的手続きを経ずに実力行使を行ういわゆる「自力救済」は、日本では原則として禁止されています。実際、あるマンションで長期間放置された自転車を管理組合で処分したところ、後に現れた所有者から損害賠償を請求され、最終的には管理組合が所有者へ弁償したという事例もあります。

【手順を踏もう】

前述したようなリスクを回避するため、面倒でも法律に基づいた手順を踏むのが望ましいです。
(以下、具体的例)

≪手順①≫その自転車がマンション入居者の物でないか、お知らせ文を掲示する等して周知し所有者を探します。
≪手順②≫①で所有者が見つからない場合、最寄りの警察署に連絡します。一般的に自転車には防犯登録がされていることが多く、乗り捨て・盗難車等の可能性があるということで連絡すれば警察がすぐに登録情報を調べ、それによって所有者が判明することがよくあります。所有者が判明すれば、警察が所有者に連絡し、自転車を所有者に引き取ってもらえます。
≪手順③≫①②の手続きをとっても所有者が判明しない、あるいは判明したのに取りに来ない等の場合は、警察へ遺失物として届出を行います。民法240条で「遺失物は、遺失物法(平成18年法律第73号)の定めるところに従い公告をした後3箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。」と定められていますので、警察が公告した後3ヶ月を経過した場合は管理組合の所有物となり、それから管理組合にて処分することになります。
≪手順④≫③において、警察が遺失物として受理しない場合(マンション入居者の物である可能性が高い等)は、管理組合で対応することになります。確実な方法とはいえないかもしれませんが、警察の手続きに準じて少なくとも3ヶ月以上は車両の保管とマンション内での告知を行い、理事会(場合によっては総会)決議を経て処分することが考えられます。

【未然に防ぐには】

以上のとおり、放置自転車の処分は慎重に行う必要があり、管理組合にとって費用と手間がかかります。ただ、私の経験上、放置自転車の大半はそのマンションの入居者(過去の退去者を含む)が使用しなくなってそのままにした物で、部外者が放置していくケースはそこまで多くありません。そのため日頃からの管理体制が大切といえます。また、きちんと管理していれば部外者が放置したものかどうかも比較的容易に判別することができます。
管理が行き届きやすい駐輪場の運用方法としては、次のようなものが挙げられます。

・区画登録制にする
フリースペースではなく、区画割をして1つずつ通し番号を振り、区画毎に契約者を割り当てます。
・自転車に登録シールを貼る
登録車両かどうかを判別できますが、車体にシールを貼るのを好まない方もいますので、全員に徹底させるのに比較的労力を要します。
・駐輪場の使用を有償にする
有償にすることで、自転車を使用しなくなった時に解約手続きや車両の移動・処分を自発的にしていただける可能性が高いと思われます。

 

いかがでしたか?駐輪場の管理一つとっても考えることがなかなかに多いですね。
この記事が貴マンションの管理の参考になれば幸いです。

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綾部 祐太

あなぶきハウジングサービス 東日本支社 分譲管理事業統括
綾部 祐太(あやべ ゆうた)
東京都出身。2013年入社。
入社から現在まで一貫して分譲マンション管理業務に従事しています。
日々の業務を通じて培った知識や経験をもとに、皆様がより快適なマンションライフを送ることができるよう、有益な情報を発信してまいります。
保有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士
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