これで丸分かり火災保険【特約編(個人火災保険②:賃貸オーナー向け)】

柿沼孝明

こんにちは。
あなぶきインシュアランスの柿沼です。

前回は個人火災保険の「持ち家(所有者)」「賃貸住宅にお住まいの方(賃借人)」向けの重要な特約についてご紹介しました。
今回は賃貸オーナー「外部所有者」「一棟建物所有者」向けの特約についてご紹介していきます。

 

重要な特約について

特約とは、主契約(基本補償)に追加してセットするオプションのようなイメージです。
各保険会社によって名称や内容は異なりますので、詳細は各社のパンフレット等をご確認ください。

①施設賠償責任特約(外部所有者≒1戸室を所有しているが居住していない所有者)

「建物の管理不備に起因する偶然な事故により、他人にケガをさせたり他人の物を壊してしまった場合に生ずる法律上の損害賠償責任」を補償する特約です。

事故例:分譲マンションの所有しているお部屋(賃借人へ貸与中)の給湯管からのピンホールにより、下階宅へ漏水。被害宅の専有部内装復旧工事を実施(補償対象)

例えば分譲マンションの一室(例:Aマンション301号室)を所有しており、別の場所に住んでいらっしゃる方(いわゆる外部所有者)が、該当住戸(Aマンション301号室)に対してかける保険です。

前回ご紹介した個人賠償責任と同じ「賠償」保険ですが、個人賠償責任は日常生活全般のリスクにも対応する保険であるのに対し、施設賠償責任は該当住戸(建物や建物設備)から発生し、他人や他人の物に被害を与えた場合の賠償責任保険となります。

また、マンション共用部火災保険の特約編でもご紹介しましたが、分譲マンションの場合、居住・所有形態により適切な賠償保険に加入する必要があります。

例)
購入時はマンションに居住→個人賠償責任
引越しに伴い外部所有者として賃貸に出す→当該住戸の施設賠償責任
引越しに伴い再度マンションに居住→個人賠償責任

上記のように所有建物の居住形態が変わることは、人生で何回もあることではないので都度補償内容を変更しているケースは少ないかと思われます。
上記例のように居住・所有形態が変更となった場合は、該当住戸で加入している個人火災保険に施設賠償責任を中途付帯(※保険会社により中途付帯できない場合もあります)するなどして、補償漏れの無いように気を付けましょう。

特に分譲マンションにおいて、管理組合がマンション共用部火災保険で個人賠償責任に加入していない場合や途中で外す場合は、所有者が自分自身で適切な賠償保険に加入している必要があります。

万が一、当該住戸の建物や建物設備に起因する漏水事故等が発生して下階宅などに被害が発生し、個人賠償責任には加入しているものの当該住戸の施設賠償責任に加入していない場合、下階宅などへの被害は補償対象外となり、実費で対応する必要がありますのでご注意ください。

また、外部所有者となっても、個人賠償責任は日常生活全般のリスクを補償しておりますので、何かしらの保険で付保している場合は、解約等はせずそのまま残しておくことをお勧めします。

なお、今回のケースは居住していない住戸を所有して賃貸に出している場合で、例えば別荘地など常に居住している人がいないケースなどは個人賠償責任で対応できる場合もあります。

 

②施設賠償責任特約(一棟建物所有者)

「建物の管理不備に起因する偶然な事故により、他人にケガをさせたり他人の物を壊してしまった場合に生ずる法律上の損害賠償責任」を補償する特約です。

事故例:所有している賃貸マンション(一棟建物所有)の外壁タイルが剥落し、下を歩いていた通行人に当たり怪我をしてしまった(補償対象)

補償内容は①で説明した内容と同じですが、対象が該当住戸1戸ではなく、主に賃貸物件などの一棟建物の所有者が契約者となります。

お部屋の中で賃借人が原因となる賠償責任は、前回ご紹介した借家人賠償責任や個人賠償責任により補償されますが、建物や建物設備が原因で賃借人や第三者などに被害を与えてしまった場合、この施設賠償責任により補償されます。

マンション共用部火災保険の施設賠償責任と同様に、建物や建物設備が原因で人を怪我させ、万が一死亡させてしまった場合は億単位の賠償額になる可能性もあります。
そのため、各社設定額可能額は異なりますが、最低1億円以上の保険金をかけることをお勧めいたします。

 

③家賃収入補償/家賃費用補償特約(外部所有者・一棟建物所有者)

家賃収入補償:「火災等の事故により、賃貸している家賃収入が得られなくなった期間の損失を補償」
家賃費用補償:「孤独死等の事故により、空室期間や値引期間が発生したことによる家賃の損失や原状回復費用等を補償」

賃貸オーナー全般のニーズとして高まっているのがこの2つの特約です。
この2つの特約は、戸室で万が一の事故が発生した場合に、家賃収入やその他費用が補償されます。
特に家賃費用補償は、社会問題となっている孤独死に対応している補償となっております。

東京都監察委員会のホームページに掲載されている、『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計』を参照(※賃貸住宅に限定した集計ではありません)すると、孤独死は増加傾向にあり、2010年と2020年を比較すると10年で約2倍に増加しております。

もしそのような事故が自分の所有物件で発生してしまった場合、特別清掃や消毒作業等の原状回復等が必要となりますが、そのような費用もこの特約を付帯することで補償がなされます。

ただし、家賃収入補償/家賃費用補償特約は、他の賠償責任と比較すると重要な特約ではありませんので、物件の特性やオーナー様のニーズに応じご検討ください。

 

まとめ

今回は賃貸オーナー向けの施設賠償責任についてご紹介しました。
個人賠償責任や借家人賠償責任など、他の賠償保険との違いについてご理解いただけましたでしょうか。
同じ賠償保険でも、立場や保険の対象により、賠償保険の種類が異なります。

次回は個人火災保険の特約編の第3弾として、その他特約についてご紹介していきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。

 

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柿沼孝明

あなぶきインシュアランス 柿沼 孝明(かきぬま たかあき)

2015年あなぶきハウジングサービスに新卒入社。マンション管理組合の運営サポート業務を経験後、あなぶきインシュアランスへ出向。フロント担当者の経験を生かした、東日本エリア(関東・東北・札幌)の管理組合様への火災保険の更新提案や、個人・法人への様々な損害保険提案業務を行っています。

保有資格:管理業務主任者
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