これで丸分かり火災保険【特約編(マンション共用部①)】

柿沼孝明

こんにちは。
あなぶきインシュアランスの柿沼です。

前回は火災保険全般の基本補償についてご紹介いたしました。
今回は特約編の第1弾として、マンション共用部火災保険の特約の中でも、特に重要で必ず加入すべき内容について解説していきます。

重要な特約について

特約とは、主契約(基本補償)に追加してセットするオプションのようなイメージです。
各保険会社によって名称や内容は異なりますので、詳細は各社のパンフレット等をご確認ください。

①水濡れ原因調査費用特約

「⽔濡れ事故の原因調査に必要な費⽤」を補償する特約です。

事故例①:101号室で漏水が発生。原因と思われる上階宅を一部開口し給排水管の耐圧試験を実施(補償対象)
事故例②:501号室で漏水が発生。原因と思われる屋上や外壁廻りに足場をかけ散水調査を実施(補償対象)

マンションは漏水事故が非常に多く発生し、築年数が経過したマンションほど漏水リスクが高くなります。
人間が年をとれば病気のリスクが高まるように、築年数が経過すればマンションの設備は劣化していきますよね。適切な時期に適切な工事(給排水管更新工事や建築系大規模修繕工事)していればリスクを軽減できますが、経年劣化による偶発的な事故を防ぐのは非常に困難です。

設備や建物からの漏水事故は発生予測が不可能に近く緊急性も高いため、調査実施後に見積金額が提示される場合もあります。また、漏水原因調査は被害内容や発生状況等をヒヤリングし、原因と思われる箇所を1つずつ潰していく難しい作業のため、1回の調査では分からない場合もあり、予想外に漏水調査費用が高額になるケースもあります。
この特約はそのような調査のためにかかった費用を補償します。

基本的に補償限度額は100万円ですが、保険会社により「保険年度毎に100万円限度(1年間で100万円が限度)」「1事故あたり100万円限度」と違いがあり、補償金額や免責金額を変更できる保険会社もあります。

 

②施設賠償責任特約

「マンション共⽤部分の管理等に起因する偶然な事故により、他⼈にケガ等をさせたり、他⼈の物を壊したりした場合の法律上の損害賠償責任」を補償する特約です。

事故例①:外壁タイルが落下、通行人に直撃し怪我。被害者に治療費用が発生(補償対象)
事故例②:共用部排水管からの漏水で専有部が水濡れ。被害宅の専有部内装復旧工事を実施(補償対象)

水濡れ原因調査費用特約でもご説明したように、マンションは漏水事故が非常に多く、共用部が原因の場合もあります。そのような場合、この特約により被害箇所についての補償(時価額)がなされます。

また、共用部が原因で人を怪我させてしまった場合も補償対象となります。
考えたくはないですが、万が一死亡させてしまった場合は億単位の賠償額になる可能性もあります。

<試算例>
建物が原因で夫婦と子供が亡くなった場合の賠償額:約1億9,360万円
・世帯主:40歳(年収600万円)
・妻 :36歳主婦(無職)
・子供 :8歳(小学3年生)

引用:公益財団法人 日本住宅総合センター 損害額の試算結果

各保険会社により補償額や免責設定額の範囲は異なります。
補償範囲では、事例として多い建物からの雨水侵入(例:外壁シーリングの切れ目、屋上防水の切れ目)による専有部分の被害については免責事項となりますのでご注意ください。
ただし、保険会社によっては補償対象となる場合もあります。

 

③個人賠償責任特約

「マンションすべての居住者等を対象に、日常生活や居住用戸室の管理不備等で、他人にケガ等をさせたり、他人の物を壊したりした場合の法律上の損害賠償責任」を補償する特約です。

事故例①:お風呂の水が溢れ下階へ漏水。被害宅の専有部内装復旧工事を実施(補償対象)
事故例②:専有部給湯管ピンホール(穴)により下階へ漏水。被害宅の専有部内装復旧工事を実施(補償対象)

漏水事故等で専有部が原因の場合、漏水事故による被害箇所についての補償(時価額)がなされます。
マンション保険の個人賠償責任特約は、マンションに関わる全ての人(「居住する区分所有者」「外部所有者」「賃借人」)が被保険者となるのが大きな特徴です。
また、各保険会社により異なりますが、「店舗」「事務所」住戸についても限定補償(店舗・事務所業務に起因する賠償事故は対象外)がございます。

個人で加入できる保険(例:個人火災保険、自動車保険、共済等)のため、近年の火災保険料高騰によりこの特約を見直す管理組合が徐々に出てきております。しかしながら、管理組合がマンションに関わる全ての人に呼びかけ加入の依頼をしても、全ての人が下記内容の適切な保険に加入しているか(加入するか)確認・把握することは非常に困難です。

<個人で加入する場合の賠償保険>
・居住する区分所有者 → 個人賠償責任
・賃借人 → 個人賠償責任
・外部所有者 →( 所有している部屋の)施設賠償責任

もし管理組合が特約に加入せず個人で加入することとした場合、例えば「居住する区分所有者」が引っ越し等で「外部所有者」となった際は、例えば所有しているお部屋に対して契約している火災保険の契約内容を変更し「施設賠償責任」に加入する必要があります。例えば所有者が変更となった場合、新所有者が火災保険等で「個人賠償責任」に加入する必要があります。

超小規模なマンションでは何とか全件確認することは可能かと思いますが、一般的に戸数が大きくなればなるほど把握することは困難になると思われます。

この補償をマンション保険の特約から外し、万が一漏水事故等が発生して加害者が賠償責任保険(個人賠償責任や施設賠償責任)に加入していない場合、被害宅の内装復旧等について、金額や工事範囲などで調整がつかず、解決までに非常に時間がかかる可能性があります。実際にハウジングサービスでもそのような事例がありますが、一番の被害者はお部屋に被害が発生しているのに中々復旧工事に進めない被害宅です。


個人的には、補償範囲の広さからマンション共用部火災保険という商品の最大の特徴であると考えます。

 

まとめ

今回はマンション保険で必ず加入すべき特約について3つご紹介しました。
弊社のマンション共用部火災保険で申請された事故は、約6割が今回ご紹介した内容によるものです。
割合の高さからも特約の重要性がご理解いただけるのではないでしょうか。

基本補償での事故も同じですが、被害が発生した場合、被害写真や報告書等を参考に提出された見積書等を保険会社で精査し、保険金額が算出されます。被害額が大きい場合、鑑定人による現地調査等を含む査定が入る場合もございます。
必ずしも全額保険認定されるわけではございませんのでご注意ください。

次回は特約編の第2弾として、マンション共用部火災保険のその他特約についてご紹介していきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。

 

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柿沼孝明

あなぶきインシュアランス 柿沼 孝明(かきぬま たかあき)

2015年あなぶきハウジングサービスに新卒入社。マンション管理組合の運営サポート業務を経験後、あなぶきインシュアランスへ出向。フロント担当者の経験を生かした、東日本エリア(関東・東北・札幌)の管理組合様への火災保険の更新提案や、個人・法人への様々な損害保険提案業務を行っています。

保有資格:管理業務主任者
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