こんにちは。あなぶき建設工業の野嶋です。
マンション・ビル等の新築の現場管理を経て、現在は主に大規模修繕、改修工事の巡回管理をしております。
新築現場と修繕・改修現場では業務のスタイルが違うことから、いまだに初めて経験することがたくさんあり勉強の日々です。
そんな業務の中での発見や気づきなどを発信し、
少しでもブログ読者の皆様に有益な情報がお届けできれば幸いです。
本記事では、建築工事に興味があるけど、工事現場まで足を運んで見学をするのは大変だな~と思われている人のために、私が体験していることを書いていこうと思います。
前回のブログでは、工場の増築工事ということで、その基礎工事について書きました。
今回はその後の鉄骨工事の流れやどんなことを現場監督がチェックしているかをお話しします。
アンカーボルトの設置
アンカーボルトとは、鉄骨柱の足元を固定するためのものです。これを基礎のコンクリート内にセットしておかないと鉄骨を建てることはできません。
アンカーボルトには二種類あり、建方用アンカーボルトと構造用アンカーボルトです。
「建方用アンカーボルト」とは、建物を建てる際に、柱を建てる時の位置決めと一時的な柱の転倒防止に利用されるもので、構造上の耐力を負担しないアンカーボルトです。
「構造用アンカーボルト」とは、建物の構造上の耐力を負担するアンカーボルトで、建て方後も、建物と大地を基礎コンクリートの中でつなぐ重要な役割を持っています。
今回は構造用アンカーボルトを使用します。そして、その設置位置はとても慎重に管理しなければなりません。アンカーボルトの位置が本来の位置からずれると、その上の柱も計画通りの位置に建てられないからです。
位置出しは予めアンカーボルトの間隔で孔があいたテンプレテート(型板)を使用します。それを基準墨に正しく合わせて設置をします。
アンカーボルトは二重ナット及び座金を用い、その先端はねじ山がナットの外に3山以上出るように管理します。
柱底均しモルタル
基礎コンクリート打設後、鉄骨柱を建てる前に柱底均しモルタルをセットします。その上に鉄骨柱が建ちます。
使う材料は無収縮モルタルです。無収縮モルタルは硬化時に収縮をしない性質があります。一般的なセメント、砂、水で造ったモルタルは硬化時に収縮をします。
柱下にセットするモルタルが収縮してしまうと柱が下がってしまいます。それを防ぐために無収縮モルタルを使用します。
柱底均しモルタルは建築業界では「まんじゅう」と言われています。見た目が丸くてまんじゅうみたいだからです。
柱底均しモルタルが一般的な施工方法ですが、今回私は代替に既製品の金物を使用しました。
これだと左官屋さんがいなくてもセットが可能なので手軽ではあります。
これは金物の上部がボルトになっていて、回せば高さ調整ができるものです。
鉄骨工場製作
鉄骨は工場製作過程で検査を実施します。鋼材の種類、材料寸法、加工寸法、組立精度、溶接部、錆止め塗装と確認項目はたくさんあります。
鋼材の種類は溶接性に優れているもの、そうではないものなどの違いがあります。
鋼材加工では鋼材の厚みによって切断方法や孔あけ方法が違ったり、摩擦面の処理方法も違ったりします。
組立溶接は溶接工の資格、溶接方法、溶接の巾、深さ、長さ、温度の管理をします。
溶接が完了したら溶接内部が健全な状態で施工されているかを確認するため、超音波探傷試験を実施します。
これは溶接をした全箇所で行います。
工場では最後に錆止め塗装します。これらの確認を設計の先生の立ち合いのもと実施します。
現場建て方
鉄骨製品検査を終えたら、いよいよ鉄骨建て方です。
現場で受け入れ確認をしてクレーンで柱、梁と組み上げいきます。この時も管理値が決まっているものがあります。建物の倒れ、階高の誤差、柱の倒れ、これらを測定器を使って確認しながら建て方をすすめていきます。
管理値が外れている部分は、ゆがみ直しワイヤーを使って修正をしていきます。
また作業が安全にできるように、同時に安全設備も取付ていきます。昇降設備、落下防止用の綱やネットなどが主だったものです。
ボルト接合
建て方が進むと柱と梁の接合部分を固定します。接合方法には「ボルト接合」と「溶接接合」があり、ボルトにも種類があり「トルシア形高力ボルト」、「JIS形高力ボルト」があります。
今回はトルシア形高力ボルトでの接合です。ボルト締付けは、一次締めと本締めの2段階で行います。
まず、建て方時に使っていた仮ボルトを、締付け用のトルシア形高力ボルトに抜き替えます。
そして、ボルト太さ毎に決められた所定の締付け強さに設定した電動レンチで一次締めをします。
次に締付けたボルト、ナット、座金、母材にかけてマーキングをします。
本締めも専用の電動レンチを用いてピンテールが破断するまで締付けます。ピンテールは所定の締付けまで行うと切れて、締付け強さの管理がしやすいです。
マーキングずれの確認と、ねじ山が1~6のものを合格として締付け完了です。
柱脚部グラウト充填
鉄骨建て方、ボルト締付けが完了し、最後の鉄骨柱足元の最終固めをします。
柱均しモルタルと柱の足元には隙間があるので、その部分にグラウト材を充填します。
これも無収縮モルタルの一種で流動性に優れたモルタルです。狭い隙間まで流れ込むので、しっかりと基礎と鉄骨柱の接合部を隙間無く埋めます。
まとめ
鉄骨工事だけで工程が多く管理するのが大変です。また鉄骨工事の精度で建物の骨組みが決まるので、慎重に管理する必要があります。
最悪の場合、この後の工事ができなくなる可能性もあります。
スムーズに次工程へ移るために、気を抜くことのできない工事だと改めて感じました。
野嶋隆多
2015年、マンション新築をメインとする建設会社の現場監督を経て入社。
現在は主にマンション大規模修繕工事を四国4県を股にかけて管理をしています。
業務では安全第一でこれからも取り組んでいきたいと思います。
保有資格 一級建築施工、土木施工、管工事施工管理技士
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