マンション建替えの進め方②検討スタートからプラン作成まで

松井 久弥

こんにちは。松井です。

マンション建替えの第2回目として今回は検討スタートからプラン作成までの進め方についてご紹介します。建替えにおいては合意形成を取るまでが最も難しいと言っても差し支えがなく、合意ができないと建替えは出来ません。マンション建替えは検討開始から合意形成まで3年以上かかるケースもありますので、急がず焦らず進めていくことがポイントです。

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目次

  • 検討を始める段階
  • 専門会社への依頼
  • 長期修繕計画書の整備
  • プランの依頼から作成までの段階
  • まとめ

※2016年1月21日に公開した記事を修正し、2017年3月30日に再公開しています。

検討を始める段階

建替えを考えるタイミングについては前回の記事でご紹介した①老朽化、②旧耐震、③地震等による損害、のいずれか(若しくは複合的要素)が多いのですが、それが実際に話題に上がるのは理事会や総会の場面が多いと思います。また最近では雑誌やインターネットなどでもマンション建替えに関する情報が多く出ていますので、マンションの会合に参加していない所有者でも建替えに関心を持っている所有者は多くいらっしゃいます。

いずれにしてもマンションで建替えの検討を始める場合には総会において事業計画・予算案の承認や専門委員会の設置等、建替えに関する検討を始めるための承認(アナウンス)をしておきたいものです。または理事会において検討(準備)を進めていくことについて決議することが必要になります。組合員に対して目的や調査に要する費用について広報活動をおこなうことは重要なポイントです。

一組合員から個人的に相談をいただくこともあるのですが、管理組合としてある程度オフィシャルに進めていくことの了解を得ていないとその後スムーズに進まないことが多いので、管理組合の役員でない方であれば理事長や理事の方に理事会の議題としてマンション建替えの検討を要請していただくようにお願いしています。

何故なら検討をするにあたっては専門会社へプラン作成を依頼することになるため、会社選定やプラン作成の費用捻出について事前に協議が必要となるからです。

 

専門会社への依頼

マンション建替えを相談する相手としては①マンションデベロッパー、②設計会社、③ゼネコン、④コンサルタント会社、などが考えられます。それぞれ特徴があるのですが、ざっくりですがまとめてみました。

【マンションデベロッパー】

分譲マンションの新築・販売の経験が豊富であるため、マンション建替えを事業として実施しているデベロッパーは有力な候補です。一方で開発利益や販売戸数が重視されるので、管理組合員との利益バランスを配慮できる(自社の利益だけを追い求めない)会社を選択する必要があります。

【設計会社】

現行の建築基準法等に則ってどのようなマンションが建築できるかプラン(図面)を作成することを本業としています。新築マンション設計の実績がある設計会社であれば、建替えプランの作成を依頼する候補となります。但しその後の事業計画の立案については本業ではありませんので注意が必要です。

【ゼネコン】

建築工事を請け負っている会社であり社内や取引先に設計部門もあるので、新築マンションの建設実績がある会社であれば建替えプラン作成+建築費用の立案が可能でしょう。但しマンションの販売や事業計画については別の会社と組んで実施するケースが多い状況です。

【コンサルタント】

マンション建替えコンサルタント会社のメリットは設計・事業計画の立案から合意形成手続きについて経験値が多いことであり、スタート時点での相談相手としては有力な候補となります。但しコンサルタント会社は手数料が会社の儲けとなりますから、その費用は計画しておく必要があります。

 

それぞれに強みがありますので、マンションの状況や検討段階に応じて選択することになるでしょう。

またどの段階から専門会社に相談したらよいかについてはマンションの状況によって個別に判断が必要なのですが、いきなり最初から相談するよりもまずは理事会や専門委員会などで話し合いの場を持ち、今後の方向性を確認したり出席者の意見を聞く機会を設けた方が良いと思います。その中でどのタイミングでどの会社へ相談するかの協議を重ねていくことになります。

 

長期修繕計画書の整備

マンション建替えを検討する際には必ず「現行のマンションを維持していくとしたらどれくらいの費用が必要で、残りどれくらい耐用年数があるか」について押さえておく必要があります。その際に確認する資料が長期修繕計画書です。これはマンションの外観・機能を新築当時の状態で維持していく上で、これから先15年~30年間において必要となる修繕の項目・周期・費用をまとめた計画です。

分譲マンションにとっては大変重要な資料ですので必ず現に有効な計画書を把握しておいてください。万一紛失や未作成で計画案がない場合には、新たに作成することも検討します。そしてマンション建替えプランが出来た際には修繕と建替えの2つを比較して、自分のマンションの将来に向けてどちらの方向性が良いのか議論を重ねる材料としています。

 

プランの依頼から作成までの段階

建替えプランの依頼先については前述を参考に理事会や専門委員会で協議してみてください。そして依頼するにあたっては、下記の資料を準備しておいてください。

・図面一式

・マンション概要が分かる資料(戸数や所有者数、築年数、建築会社、管理会社等)

・長期修繕計画書、修繕履歴

・決算書(管理組合の資金が把握できる貸借対照表)

・管理規約

専門会社に委託すると①建替えマンションのボリュームチェック(戸数、階数、間取り等の概要)と②建替え事業計画(スケジュールや資金計画)が提出されるので、理事会・専門委員会や全体説明会において内容の確認や勉強会を開催していきます。ここで大切なのはいきなり「建替えありき」ではなく、建替えも選択肢の一つであり自分のマンションの将来をどうしていくかを検討するための判断材料として活用していくということです。

特にマンション建替えプランが出た段階では組合員が千万単位での手出し費用が必要となるケースが多く、この時点で意見が大きく分かれてきます。それでも建替えを進めていくことの合理的な必要性があれば、何度も説明会や個別面談を重ねて合意形成を進めていくことになるのです。

専門会社によっては合意形成を進める手続きをサポートしてくれる会社もありますので、相談して協力を依頼していくと良いでしょう。

 

まとめ

検討を始める段階では建替えの賛否について様々な意見がありますが、是非を判断するには、やはり具体的な建替えプランが無いと難しいと思いますので、検討を始めるタイミングが来た時には一度建替えプランの依頼をおこなうことを視野に入れて理事会等で話し合ってみてください。そして自分のマンションに合った相談相手(専門会社)を見つけ、建替えと維持修繕の2案について比較検討してみてください。この時点で建替えが困難であることが確認できれば現状のマンションをいかに維持修繕していくかの議論に絞って進めていくことができますので、やはり建替えを検討することは有益であると思います。

 

マンション建替えの詳細は、あなぶきグループのマンション建替え専用HPサイトをご覧ください。

 

<参考記事>

マンション建替えの進め方①初回検討段階の進め方

マンション建替え検討事例紹介①「東京都大田区蒲田」

マンション建替え検討事例紹介②「東京都世田谷区」

マンション建替え検討事例紹介③「熊本市東区」

分譲マンション 「建替えか改修か」

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松井 久弥

あなぶきハウジングサービス:松井 久弥(まつい ひさや)
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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