マンションの入居者が受けるべき室内点検と、断るべき室内点検について

和田典久

こんにちは。あなぶきコールセンターの和田です。
当センターでは月間で約8,000件の様々なお問合せ・ご相談・ご依頼を受け付けています。
その内容は、マンションライフに関わることから、少し離れた内容まで多岐にわたりますが、その中から、皆さんが関心がありそうなこと、知っていそうで意外とご存じ無いこと等々を取りまとめて発信していきたいと思います。どうかお付き合いください。

今回のテーマは、『マンションの入居者が受けるべき室内点検と、断るべき室内点検について』です。
一戸建てに住んでいると、建て売りした工務店が実施するアフターメンテナンスは別にして、特に決まった設備点検を定期的に受ける機会はまず無いでしょう。しかし複数の入居者が一つの建物に暮らすマンションライフにおいては、設備の維持管理の目的から法律の規定やマンションの修繕計画等に基づいて定期的な点検作業が色々と実施されます。 その中には、例えばエレベーター法定点検のように自宅内は無関係で共用部分だけで行う点検もあれば、消防設備点検のように各居室内に作業員が立ち入って点検する作業もあります。
今回のブログではマンション内で行われる点検作業のうち、各居室へ立ち入るタイプの点検作業に焦点を当てたいと思います。

というのも、マンションライフを送っていると、あたかも管理会社が手配した点検作業のように装って、巧みに商品を売りつけようとする「悪質な訪問販売業者」が時々現れるからです。マンションで実施される主な室内点検を事前に知っていれば、怪しい業者が現れた時にも「今までにそんな点検受けたこと無いけど?お宅本当に点検業者ですか?」と気が付くことが出来るでしょう。
いつものように、当コールセンターで実際に受け付けた問い合わせ事例なども交えてご紹介していきます。是非ご参考になさってみてください。

 

Ⅰ.入居者が受けておくべき室内点検の代表例

消防設備点検

マンションに入居してもっとも頻繁に受ける室内点検は、ズバリ【消防設備点検】で間違いないでしょう。
マンションのような共同住宅は床や壁で区切られているとはいえ、一度火災が発生すると最低でも上下階や隣室に火の手や煙が廻って大きな被害が発生する可能性があります。従って炎が発生する前に、熱や煙を検知すると非常ベルで火災発生を全館に知らせる必要があります。また消火作業がスムーズに進むように消火ポンプが起動します。各階に一定の間隔で備えられている消火器も古くていざと言う時に使えないのでは困りますし、火災現場から安全な場所へ避難するための「避難ハシゴ」も同様で、緊急時にしか使わないものであるからこそ、定期的に動作チェックして正しく作動するかどうかを点検することが重要です。

このような目的で、消防法という法律で年に2回(6ヶ月毎)の消防設備点検が義務付けられているのです。従って消防設備点検はマンション入居者が受けるべき大切な点検です。「部屋の中まで入って来るなんてありえない!」等と仰らずに、是非定期的に点検を受けて下さい。

では、消防点検ではどんな作業をするのでしょうか?
消防点検では、専門資格を持った点検作業員が入室して、天井に設置されている感知器(熱感知器や煙感知器)の動作試験を行います。感知器は部屋の天井だけではなく、押入れやウォークインクローゼットの中にも設置されているので、入居者の方からすると「ええ?そこは片付けてないのに!」「そんなプライベートな部分まで入って来るの?」と感じられる方も多いのが事実です。このため、比較的最近建てられたマンションでは、各部屋の感知器に試験機能が付いていて『外部試験機』という専門機器を中継器(よくあるのはインターホンの玄関子機)に差し込んで遠隔操作で(=入室して点検することなく)感知器の動作試験ができるようになっている場合も多いです
ただ、外部試験機で点検できる場合でも、ベランダに避難ハシゴが設置されているお部屋の方は、作業員が避難ハシゴの動作試験を行うので、どうしても入居者の方の立会いが必要になります。

消防設備点検の結果、不備があると言われたことはありますか?
例えば感知器が作動していない、避難ハシゴが壊れている等の際に、修理費用は誰が負担するのでしょうか?
設置が法律で義務付けられていないガス漏れ警報機とは違って、火災感知器は法律で細かく設置基準が定められています。感知器はマンション全体の火災警報設備と連動しているので、万一故障の際には管理組合の負担で修理交換するケースが通常と思いますが、「室内に設置されている設備なので専有部分と同じ」という考え方の管理組合もあります。万一修理が必要になった場合は念のため管理会社にご確認されることをお勧めします。

雑排水管清掃(排水管高圧洗浄)

マンションの排水管は、各部屋のキッチン・浴室・洗面所・洗濯機置場などの水回り設備と接続した配管が、壁の奥や床下を通って伸びていて、最終的にはマンションの共用排水管に繋がって下水道や浄化槽へ流れて排水されます。定期的に排水管内に付着した汚れを除去しておかないと、排水不良や詰まりの原因になります。
これら不具合を防止する目的で、マンションでは定期的に【雑排水管清掃(排水管高圧洗浄作業)】を実施する場合が多いです。これもマンション入居者が受けるべき室内点検です。せっかく管理組合の費用負担で排水管をきれいにしてくれるのですから、受けない理由がありません。

なぜ雑排水管清掃と言うかですが、生活排水(これを雑排水と言います)の排水管の清掃作業だからです。トイレの排水は「汚水」と呼ばれますが、高圧洗浄作業では汚水管の清掃作業は行いません。
「さっき業者が来たけど、トイレだけ見落として作業しなかったから直ぐに呼び戻して!」という問い合わせがたまにあるのですが、見落としたのではなく最初から作業内容に含まれていないだけなのでお気を付け下さいね。

では、雑排水管清掃ではどんな作業をするのでしょうか?
トイレ以外の水廻りの排水口に高圧噴射する洗浄ノズルを差し込んで汚れを落としていく作業です。管内から剥がれ落ちた汚れは最終的には共用排水管の方へ流れていきます。高圧洗浄が出来ない場合(高圧洗浄すると配管を傷めたり漏水の危険がある場合)には薬剤を投入して化学的に汚れを分解洗浄することもあります。

皆さんのお宅では、キッチンや浴槽などの排水口が詰まって排水の流れが悪くなったことがありますか?
この場合、簡易な詰まり抜き作業としては、ラバーカップやローポンプという道具で圧力をかけて詰まりを取り除きます。これらの作業はラバーカップをお持ちで自力で作業すれば無料ですし、専門業者を呼んでも10,000円以下で対処できるのが通常です。しかし、高圧洗浄を自前で手配すると30,000円程度掛かるケースが多いようです。重ねて申し上げますが、雑排水管清掃は作業実施の案内があれば、必ず受けておくことをお勧めします。

電気・ガスの法定点検

電力会社や電力会社から委託を受けた各地域の「電気保安協会」などが、電気事業法という法律に基づいて4年に一度の頻度で各家庭を訪問して電気の保安点検を実施します。在宅であれば分電盤(ブレーカー)の絶縁抵抗を測ってくれます。
ガスも同様で4年に一度の定期保安点検があります。在宅であればガス漏れやガス機器が不完全燃焼していないか等を点検してくれます。これらはマンション特有の点検作業ではなく、一般家庭であれば一戸建てでも実施されます。どちらも無料の点検です。これもタイミングが合えばぜひ受けておいた方が良いでしょう。

 

Ⅱ.入居者がお断りすべき室内点検の代表例

消火器の訪問営業

点検の案内が事前に無かったのに「消防署の方から来ました。消火器を購入して下さい」等と言って業者が来たことはありませんか?消防設備点検は必ず事前にマンション管理会社または点検業者の名前で、点検作業実施の案内が掲示板に掲示されたりポスト投函されます。何の事前案内も無しにいきなり作業員が現れて「消防点検です。部屋に入らせて下さい」ということはありません。
それに、マンションの居住者が「消火器」を購入して自宅室内に設置する法律上の義務はありません。
消防点検作業が重要な室内点検であることを利用した巧みな訪問販売ですから、相手にせずに断りましょう。

有料での電気・ガスの保安点検

先程、電気・ガスの4年に一度の保安点検は「無料」ですと書きました。従って「点検料金を支払って下さい」等と言われたら、それは正規の点検調査員ではありません。
電力会社・ガス会社に通報することをお勧めします。

飲料水の水質検査

マンションでは法定の貯水槽清掃や、建物の規模に応じて法定の水質検査を実施しているので、皆さんが飲用する飲料水の水質は安全に保たれています。にも拘らず、突然訪問して「水質検査に来ました。お宅の水はこんなに汚れていますよ?」などと不安をあおって、高額な浄水器などを売りつける悪質な訪問販売業者が残念ながら存在します。

これらの業者は「マンション管理会社の許可を得ています。今日は無料の点検でお伺いしています。」などと、一件正規の点検業者のように装ったり、親切に設備のお手入れ方法などを説明してくれたりしますが、その後で先程のような入居者の不安をあおったり、「皆さん購入されていますよ」などと虚偽の説明を行い、巧みに契約を促します。決して相手にしてはいけません。

なお、これら悪質な訪問販売を断り切れずに契約してしまった場合に、やっぱり契約を断りたいと思った時は、各都道府県にある消費生活センターへ速やかに相談されることをお勧めします。

 

Ⅲ.まとめ

いかがだったでしょうか?訪問販売のクーリングオフ制度や、法律による色々な規制については、さまざまな媒体で説明や案内がされているので今回は割愛しましたが、簡単なポイントだけご紹介します。
法律(特定商取引法)で、「訪問販売を行う時は、勧誘に先立って、事業者の氏名(名称)の明示義務がある」のですが、後ろめたいことがある業者は自分の名前を名乗ろうとしないものです。業者名を聞いても名乗らない、名刺ももらえない、嘘の社名を告げた等があれば、それだけで法律違反です。
また、同じ法律で消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続することや、その後改めて勧誘することが禁止」されています。
入居者の皆さんにとって役に立つ点検はしっかり受けて頂き、そうでない点検はきっぱりお断りされるのが良いでしょう。

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和田典久

あなぶきハウジングサービス 和田 典久(わだ のりひさ)

香川県高松市生まれ。早稲田大学法学部卒。
学生時代は弁護士を志すも夢破れて帰郷し、2001年に入社。最初の配属は賃貸事業部。
高松で賃貸仲介を4年、広島でPM業務を5年務め、2010年12月よりあなぶきコールセンターで全国からのお客様の声に向き合う。
2021年7月からは事業推進本部 業務推進課で分譲・賃貸・CX・コールセンターとも連携した全社的な業務推進を進めていく。
このブログでは、これまでの現場経験を生かしてお役立ち情報を発信していきたいと思います。
珈琲と旅行をこよなく愛する、最近メタボ気味な48歳。

【保有資格】宅地建物取引士 管理業務主任者 賃貸不動産経営管理士
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