おはようございます。
あなぶきセザールサポートの飯野です。
建物の構造について最低限の強度を確保するために建築基準法で耐震性について規定が定められていますが、こちらは過去に何度か見直しがなされています。
本日は地震に対する安全性確保のための建築基準法見直しの歴史とともに、地震に対する主な構造形式についてご説明します。
- 構造規定の変遷について
- 既存不適格建築物(旧耐震基準)への対応
- 地震に対する主な構造形式
- まとめ
・構造規定の変遷について
・1971(昭和46)年
1968(昭和43)年に発生した十勝沖地震を教訓に建築基準法施行例が改正され、鉄筋コンクリート造の柱の帯筋(せん断補強筋)の規定が強化されました。(帯筋間隔30cm⇒15cm以下へ、柱頭・柱脚部は30cm⇒10cm以下に強化)
・1981(昭和56)年
1978(昭和53)年に発生した宮城県沖地震を教訓に新耐震設計基準の導入、帯筋費の規定が新設されました。この規定が適用される以前の建物は旧耐震基準の建物と呼ばれています。
・既存不適格建築物(旧耐震基準)への対応
1995(平成7)年の阪神淡路大震災を教訓に同年12月に耐震改修促進法が施行され、1981(昭和56)年以前(新耐震基準以前)の特定建築物(学校、百貨店、事務所、賃貸マンション等多数の者が利用する一定規模以上の建築物)には耐震診断を行うよう努めなければならないとされました。分譲マンションは原則として特定建築物には含まれませんが、地震により避難に供する道路を閉塞させるような可能性があれば、特定建築物に該当する場合もあります。
また2011(平成23)年3月18日に東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を促進する条例(東京都条例第36号)及び同条例施行規則(東京都規則第22号)が公布され、現在の東京都では敷地が特定緊急輸送道路に接する建築物で旧耐震基準の一定の高さのある建築物の所有者へ耐震診断の実施義務および耐震改修等実施努力義務が課せられました。これにより旧耐震基準で建築された分譲マンションについても、敷地が特定緊急輸送道路に接する場合については耐震診断を実施しなければならなくなりました。
・地震に対する主な構造形式
建築基準法の改正により建築物に求められる耐震性が高まってきたこともあり、近年では地震に対する安全性を確保するための構造形式の開発がおこなわれています。
・地震に対する主な構造形式その1~免震構造(工法)~
地震に対する安全性を確保する構造形式として免震構造が開発され、近年の新築マンションでは採用されるものが増えてきています。建物の基礎と上部構造の間に積層ゴムや摩擦係数の小さい滑り支障を設けた免震装置を設けて地震力に対して建物がゆっくりと水平移動し、建物の曲げや変形を少なくする構造形式です。
建物の耐震性能が高まるだけでなく家具の転倒や非構造部材の破壊が少なくなるなどの耐震構造にはない長所がありますが、免震装置の維持管理が必要となり、維持費も高額です。
・地震に対する主な構造形式その2~制震(振)構造(工法)~
地震のエネルギーをダンパー等の制震部材を用いて吸収することにより建物が負担する地震力を低減し、破壊されにくくする構造形式です。RC造の高層建築物等の地震・風揺れ対策として用いられていますが、免震構造とは異なり地震による加速度を低減する効果はほとんど期待できないため、家具の転倒防止等の効果は免震構造よりは劣ります。
・地震に対する主な構造形式その3~耐震構造(工法)~
これまで一般的に用いられてきた地震力に耐えるように考慮して設計された構造で、壁、スラブ、柱、梁等の剛性や靭性を高める工法です。マンションも含めほとんどの建築物が耐震構造です。
・まとめ
新築マンションを購入される場合は現在の耐震基準の建物ですが、中古マンションの場合は竣工の時期によりマンションの強度の基準となる法律に違いがあるため、注意が必要です。
飯野琢磨
前職では大工や建築積算を経験。入社後、マンション修繕工事のコンサル業務、分譲マンションのリプレイス営業、分譲マンションのフロントを経験。
マンション管理のことについてはもちろんのこと、リフォームやリプレイスなどさまざまな視点から幅広い情報を提供します。
所有資格:一級建築士・マンション管理士・管理業務主任者・宅地建物取引士
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