こんにちは、仲井です。過去問題集は解いていますか?本来、5回解いてほしいところですが、時間に余裕のない方は、9月中旬までに3回解くことを目標にしてみましょう。さて、民法も残すところあと2回となりました。今回は、賃貸借の分野の「敷金」のポイントをご説明します。
目次
- 敷金とは
- 敷金と賃借人・賃貸人の交替
- 同時履行の抗弁について
敷金とは
敷金とは、賃貸借契約の際に、賃料債務等を担保するために、賃貸人に支払われる金銭をいいます。
賃料をちゃんと払って、汚さずに目的物を使用しているような場合、敷金は返還されますが、敷金の返還は、賃貸借契約が終わった時になされるのではありません。目的物の明渡しが先で、その後に敷金を返還することになります。
もし、賃借人がまだ建物等を明け渡していないのに、敷金を返してしまったらどうでしょう?その後に明渡しがあった場合において、家具の裏に隠れていた傷が見つかったり、引越しの際に建物が傷付けられたとき、賃借人の引越先・連絡先が分からなければ、敷金で損害分を精算できないことになってしまいます。また、敷金の金額よりも不動産の価額のほうがはるかに高いので、「敷金返還が先だ。敷金を返すまでは、不動産を明け渡さないぞ」と主張するのは公平性を欠きます。
以上の理由により、敷金の返還は、目的物の明渡しの後なのです。
敷金と賃借人・賃貸人の交替
賃貸借契約の当事者の一方が交替した場合、貸主のもとにある敷金は、どうなるのでしょうか。
賃貸人が交替した場合
賃貸人が交替した場合(たとえば、賃借人に引渡し等の対抗要件がある場合において、賃貸人が賃貸の目的物を売却したとき)、賃借人は、旧賃貸人から敷金を返してもらって、あらたに新賃貸人に敷金を交付するのでしょうか。それとも、旧賃貸人から新賃貸人にそのまま敷金が受け継がれるのでしょうか?
まず、賃貸人の地位の移転には、賃借人の承諾は不要です(なぜなら、賃貸人の義務は、誰がおこなっても大差がないからです)。とすると、賃借人の知らないところで賃貸人の地位が移転しているのに、わざわざ賃借人が旧賃貸人から敷金を取り戻して、あらたに新賃貸人に敷金を差し入れるのはおかしいですし、そもそも旧賃貸人はどこかに逃げてしまって敷金を取り戻せないかもしれません。賃借人にとっては、現在不動産を持っている新賃貸人に敷金が受け継がれた方が、うれしいですね。
そこで、賃貸人が交替した場合は、敷金は、新賃貸人に承継されます。
賃借人が交替した場合
では、賃借人が交替した場合も、敷金が新賃借人に承継されるのでしょうか。
もし、敷金が承継されるとすると、旧賃借人は敷金を返してもらえず、もともと自分が支払ったお金なのに、他人(新賃借人)の債務を担保することになってしまいます。
そこで、賃借人が交替した場合、敷金は新賃借人に承継されません。すなわち、賃貸人は、いったん敷金を旧賃借人に返して、新賃借人からあらたに敷金を差し入れてもらうことになります。
賃貸人としては、「新賃借人が敷金を払ってくれなかったらどうしよう…」と思うかもしれません。しかし、そもそも、賃借権の譲渡により賃借人が交替する場合は、賃貸人の承諾が必要だったはずです(賃貸人にとって、「ちゃんと賃料を払ってくれるか」「ちゃんときれいに使ってくれるか」など、誰が賃借人になるかは大事なことだからです)。であれば、賃貸人は、新賃借人に関して不安なとき、賃借権譲渡の承諾をしなければよいのです。
同時履行の抗弁について
最後に同時履行の抗弁について触れておきます。
前述のように、「敷金を返すまでは、不動産を明け渡さないぞ」と主張することはできません。すなわち、敷金の返還と賃貸借契約の目的物の明渡しは、同時履行の関係に立ちません。敷金の金額と不動産の価額が釣り合わないというのが主な理由でしたが、同様の理由で、建物賃貸借契約が終了した際の、造作買取請求権(買取り代金の支払い)と建物の明渡しも、同時履行の関係に立ちません。
逆に、借地契約で契約の更新がなかった場合の建物買取請求権(買取り代金の支払い)と土地の明渡しは、同時履行の関係に立ちます。
この機会にあわせて押さえておきましょう。
いかがでしたでしょうか?民法は、理解が必要な科目ですので、早めに基礎的部分をマスターしておきましょう。
その際、過去問題集を利用してください。以前にもお伝えしましたが、過去に出題された知識が本試験では繰り返し出題されますので、「過去問は最高の予想問題集」といえます。過去問題集とテキストを並べて、まず過去問題集でどんな知識がどんな形で出題されるかを確認して、テキストの該当箇所にざっと目を通します。そして、「覚えにくいな」と感じた部分に印を付けたり、線を引いたりします。ある程度印を付けたり線を引いたりした部分が増えてくると、それを見返す作業も必要になってきます。以上の作業は、地道な作業ですが、これを繰り返すことで実力が上がっていきます。
また、上記のように、過去問題集にじっくり取り組む場面と、テキストに印を付けたり線を引いたりした部分を見返す場面が生じますが、これらを、「いつ」「どこで」やるのかを決めておきましょう。たとえば、「過去問を解くのは、休日の図書館で」「テキストを見返すのは、帰りの電車の中で」などと決めて、いったん決めたらそれをできるだけ守ることを心がけてください。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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