マンションでの雨漏りの原因とは?対処法の実例を紹介します

野嶋隆多

 

こんにちは。あなぶき建設工業の野嶋です。

マンション・ビル等の新築の現場管理を経て、現在は主に大規模修繕、改修工事の巡回管理をしております。

新築現場と修繕・改修現場では業務のスタイルが違うことから、いまだに初めて経験することがたくさんあり勉強の日々です。そんな業務の中での発見や気づきなどを発信し、少しでもブログ読者の皆様に有益な情報がお届けできれば幸いです。

 

今回は、築後数十年が経過した分譲マンションでの漏水について、その原因や調査方法、さらに補修工事の実例についてご紹介します。

 

★事例① 外壁窓廻りからの漏水について

 

台風など風雨が強い時に東西外壁面の窓廻りから、雨水が浸入することがあります。

サッシの機密性が少ない場合、サッシの引き違い部材の隙間から雨水が吹き込んできます。サッシ内に入った水が外部に出るよりも、台風時の風雨で押し込まれて中に入る量が多い状態の時に雨水の浸入が起こります。

 

対応としては、台風時にいつもサッシ内部に入ってくる場合、事前に漏水箇所の隙間を埋める方法があります。

まず、引き違いサッシを閉めた状態でマスキングテーブを張ります。その上にエアコン用のスリープパテを埋めます。テープだけでは雨でテープが剥がれますので、パテ埋めをすることでマスキングテープに付着し、サッシレール廻りも含めてパテで厚みをつけて埋めることで水の浸入が防げます。

直接サッシにパテを埋めない理由は、サッシ隙間にパテが入り込み、台風通過後きれいに取り除けなくなるためです。

エアコン用スリーブパテを埋める箇所に、事前にマスキングテープを張ります。

 

マスキングテープの上にエアコン用スリーブパテを埋めます。テープは広く貼っておくのがポイント!

 

★事例② 東西外壁からの漏水について

 

台風時に、東西外壁タイル面のひび割れから雨水が浸入し、雨漏りが生じることがあります。

下地コンクリートとタイル面とは、施工上多少の隙間がありますので、入った水がその隙間を通って低い場所へと流れ、コンクリートの弱い部分(ひび割れなど)があればそこから室内に入り込みます。
浸入した水は天井・壁のクロスを濡らし、量が多ければ床に溜まります。

 

対応としては、外部足場組立を行い、目視・打診でタイルの浮き・ひび割れ状況を確認する。また、シール不良個所の調査をして、シールの打替を行うという方法があります。

対応は写真の通りです。

漏水の場所を特定することは極めて難しいのです。原因が予想される範囲は足場組立して調査が必要です。

 

サッシの上部、躯体とサッシの隙間も全面シールを充填打ちします。
内部の壁を全面ハギ取り、サッシ廻りの隙間にシールを充填します。可能性がある個所は全てシールを充填します。特に、発砲ウレタン(断熱材)の施工は漏水個所がわかりにくいので注意が必要です。

 

サッシの下部、躯体とサッシの隙間も打継に近いため、全面シール充填打ちを行います。

 

外壁サッシ廻りからの漏水は、タイルとコンクリート壁の隙間に浸入した水の流れを遮断するため、タイルをカッター切りしてタイル撤去後、シールを充填する方法を取ります。
サッシ廻りからの漏水は、窓から離れた所に原因がある場合も多いためです。

 

★事例③ タイル深目地、斜め壁からの漏水について

 

道路の斜線制限で建物に「斜め壁」になっている場合や、外壁二丁掛タイルの仕上が「深目地」になっている場合に、これらが原因で雨漏りが生じることがあります(深目地は浅目地より漏水の可能性が高い)。

タイルや目地のくぼみ部分に、雨水が滞留する時間が長くなりやすいためです。

タイル面のひび割れ、タイル目地部のひび割れ、既存シーリング箇所を入念に調査します。

 

タイル目地にシーリング、既存シールの打替を実施します。

この事例では、漏水の原因は雨水がタイルの上に滞留する時間が長く、壁にひび割れがあり、シールの不良個所から漏れていたというものでした。シールも経年劣化により止水効果がなくなるので注意が必要です。

 

★事例④ 室内で上の階からの漏水について

 

外壁からの漏水に伴って、下の階の室内へも被害が拡がる場合があります。

コンクリートの床にひび割れがあれば、そこから水は下階へ落ちます。
念のため、室内で以下のことを実施した事例があるので紹介します。

床仕上げ材を取り除き、コンクリート床面の確認を行いました。漏水は外壁からだけとは限りません。
設備配管の劣化箇所から発生する場合もあります。

 

コンクリート床のひび割れのシーリングを実施しました

 

まとめ

漏水は、必ず原因があります。しかし、その原因を見極めるのは大変難しいです。
特に築年数の経った建物の場合は、これまでの修繕・改修を重ねて新築当時の施工状況から変わっていることが多々あります。そうなると竣工時の図面を見ても参考にできません。

最も原因を突き止めることができる方法は、現在の仕上げ材を全て取り外して直に見ることができる状況にすることですが、その場合、そこに住まわれるお客様には多大の負担を掛けることになります。

そこまでに大事にせず、漏水の原因を突き止め、修繕することができた時、これまでの経験と培った技術が実った時だなと感じます。

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野嶋隆多

あなぶき建設工業 野嶋 隆多(のじま りゅうた)

2015年、マンション新築をメインとする建設会社の現場監督を経て入社。
現在は主にマンション大規模修繕工事を四国4県を股にかけて管理をしています。
業務では安全第一でこれからも取り組んでいきたいと思います。

保有資格 一級建築施工、土木施工、管工事施工管理技士
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