こんにちは。あなぶきハウジングサービスの立花です。
近頃、「管理組合の役員のなり手不足問題」に悩まれているマンションが増えており、社会問題にもなっています。
特に経年が進んだマンションは、「本人が高齢なため」「本人や家族が病気のため」等、居住者の高齢化に起因する理由で役員の就任をお断りされる方が多いです。一方、現役世代でも「仕事が忙しいから」「面倒だから」というように管理組合活動に無関心な層も見受けられます。
そのような状況の中、お客様から実際にご相談頂いた事例をいくつかご紹介していきたいと思います。まず今回は以下のようなご相談です。
理事長からのご相談
「次期理事候補の方を探しているのですが、区分所有者であるご主人は仕事が忙しく理事会に出席できないので引き受けるのは難しいとのことでしたが、奥様なら理事会に出席できるとの回答がありました。奥様の理事会出席を前提にこの方へ理事をお願いしても良いのでしょうか?」
2016年3月に改正されたマンション標準管理規約に以下のようなコメントが新設追加されています。
(マンション標準管理規約 第53条関係コメント抜粋)
①理事は、総会で選任され、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとされている。このため、理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる。
②したがって、理事の代理出席(議決権の代理行使を含む。以下同じ。)を、規約において認める旨の明文の規定がない場合に認めることは適当でない。
③「理事に事故があり、理事会に出席できない場合には、その配偶者又は一親等の親族(理事が、組合員である法人の職務命令により理事となった者である場合は、法人が推挙する者)に限り、代理出席を認める」旨を定める規約の規定は有効であると解されるが、あくまで、やむを得ない場合の代理出席を認めるものであることに留意が必要である。この場合においても、あらかじめ、総会において、それぞれの理事ごとに、理事の職務を代理するにふさわしい資質・能力を有するか否かを審議の上、その職務を代理する者を定めておくことが望ましい。なお、外部専門家など当人の個人的資質や能力等に着目して選任されている理事については、代理出席を認めることは適当でない。
④理事がやむを得ず欠席する場合には、代理出席によるのではなく、事前に議決権行使書又は意見を記載した書面を出せるようにすることが考えられる。これを認める場合には、理事会に出席できない理事が、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、規約の明文の規定で定めることが必要である。
⑤理事会に出席できない理事について、インターネット技術によるテレビ会議等での理事会参加や議決権行使を認める旨を、規約において定めることも考えられる。
上記の第53条関係コメント①、②にある通り、原則は理事(区分所有者であるご主人)が理事会に出席し議決権を行使する必要があります。つまり、規約において規定がない場合は奥様の出席は認められないということになります。
ただ、「今日は旦那が仕事で出席できないので、今日は私が出席します」というようなことは、日常よくあるのではないでしょうか。慣例的にこのようなケースの出席を認めているマンションも少なくないと思います。
厳密に、理事会への出席者を区分所有者であるご主人に限定してしまうと、理事会が定数不足により不成立になってしまったり、そもそも役員を引き受ける方が減ってしまう恐れもあります。
とは言っても、ルール違反を容認するのも良くないでしょう。一つの解決方法として、ルール(管理規約)を変更することが考えられます。
コメント③にある通り、やむを得ない事由で欠席する場合に限り例外的に代理出席を認める旨を定めることも有効とされています。
もちろん代理出席を認める場合は、代理人の資格要件等をしっかりと定め、弊害が発生しないように留意する必要がありますが、役員就任のハードルを下げることができれば、なり手不足解消の手段の一つになるのではないでしょうか。
また、コメント⑤にあるようにテレビ会議システム等を積極的に活用していくことも役員なり手不足解消には有効だと思います。昨今はコロナ禍の影響もあり、今まで以上にオンラインを利用した会議が当たり前のものになってきました。
従来は、早めに仕事を終わらせ、急いで電車に飛び乗り、マンションの集会室または近くの公民館等へ集まっていたという状況が、職場や出張先からでも管理組合の会議に出席できる、何かを犠牲にすることなくライフスタイルに合わせた形で会議の出席ができるようになってきています。
当社も「オンライン理事会」開催のサポートを積極的に行っておりますので、お気軽にご相談ください。
<参考記事>
【最後に】
役員のなり手不足は、管理組合運営に支障をきたし、正常なマンション管理がなされず、マンションの資産価値の低下を招く恐れもある、大変悩ましい問題です。
居住者の高齢化も大きな原因の一つとなっており、今後問題はますます深刻化するものと思います。
マンションによって環境や事情は様々ですが、それぞれのマンションの状況に応じて今の時代に合った理事会運営のスタイルを作って行くことが重要だと思います。
立花晴太郎
宮城県仙台市出身。分譲マンション管理(フロント)業務、新規受託営業に従事し、様々な地域の様々なマンションに携わらせていただきました。「より快適なマンション」へのヒントになるような情報を提供していきます。
保有資格:マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、マンション維持修繕技術者
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