分譲マンションの防火管理者の選任とその業務について

北條弘城

こんにちは!あなぶきハウジングサービスの北條です。

皆さんがお住いのマンションでは、防火管理者は選任されていますか?

防火管理者と言われてもあまり馴染みがなく、管理組合で選任するという議題が出ても、なかなか決まらずに困っている管理組合も多いのではないでしょうか。

今回は、分譲マンションの防火管理者の選任とその業務について、ご紹介いたします。

防火管理者とは

防火管理者とは、多数の者が利用する建物などの「火災等による被害」を防止するため、防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に行う責任者を言います。

防火管理者の選任は消防法第8条により定められている事項であり、実施を怠った場合は消防法に違反することとなるため、防火管理者を選任する義務のある理事長が罰せられる可能性があります

マンション等の共同住宅では、収容人数が50人以上の場合に選任を行わなければならないとされているため、多くのマンションで選任が必要となります。

また、防火管理者の選任にあたり、マンションの面積によって取得しなければならない種別が異なっており、次のように分けられております。

延床面積500㎡以上の場合:甲種防火管理者

延床面積500㎡未満の場合:乙種防火管理者

 

防火管理者講習について

防火管理者に選任されるための要件として、「防火管理者講習」を受講し、効果測定(試験)で一定の点数を取得する必要があります。防火管理者講習には甲種乙種がありますが、一般的な居住用マンションの場合は概ね甲種防火管理者資格が必要で、講習期間は2日間です。講習は全国で実施されていますが、地域により実施機関や日程が異なりますので、事前にご確認ください。

尚、資格取得のための費用や手間(日程調整等)が発生しますが、所有されているマンションの防火管理者に就任するために受講する場合は、管理組合から費用や手当の支給を決めている場合もありますので、こちらも事前にご確認ください。

 

防火管理者の業務

防火管理者が行うべき主な業務には、以下のものが挙げられます。

①消防用設備等の点検・整備

消防用設備等の点検は、消防設備士等の有資格者が行います。管理会社に業務委託している場合は、点検業務を業者に委託する場合が多くあります。

②消防計画の作成・届出

対象となるマンションは、消防計画を作成することが義務付けられています。消防計画には、対象となるマンションの避難経路、消防設備等の内容を記載する必要があります。

出典:東京消防庁 消防計画作成(例)https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/drs/ss_jirei.html

③火災予防上の自主検査及び下記の使用又は取扱に関する監督

消防計画の定めに従い自主検査を実施し、不備があった場合、是正のために必要な措置をとる必要があります。

④定期的な消火、通報及び避難の訓練の実施

消防計画の定めに従い、消火、通報及び避難の訓練に係る事項が実施できているか、また、その実施の状況、訓練がマンションの実態に即して行われているかを確認する必要があります。

実際に、管理組合イベントとして水消火器を用いた消火訓練を定期的に実施している管理組合も多くあります!

 

共同住宅における防火管理者の選任率

「令和3年度版消防白書」によると、マンションなどが該当する「共同住宅等」では、防火管理者の選任率が72.7%となっており、全体の82.4%と比較して9.7%低いことが表されております。

防火管理者を選任しなければならない建物で選出が行われていない場合、所轄消防署より指導・命令があり、それにも従わない場合は罰則の対象となるので、注意が必要です。

 

防火管理者のなり手不足

前項であるように、マンションなどの共同住宅においては、防火管理者の選任が比較的進んでいないことがわかります。
その要因として、マンションの防火管理者には、「火災が発生した際にその責任を負わなければならない」「業務の負担が大きい」などといったイメージがあるため、防火管理者のなり手がいないという問題を抱えているマンションが多いことが考えられます。
そこで、防火管理者のなり手不足を解消するためには、以下のような方法で選任ルールを決めている管理組合もあります。

①あらかじめ順番を決めておく

防火管理者への就任を輪番制とすることで、公平性が生まれるだけでなく、マンション内で防火管理の知識を持つ方が増えるというメリットがあります。

ただし、防火管理者への就任には資格を取得する必要があるため、多くの方に講習を受けていただく必要があります。思ったように資格保持者が増えずに、同じ資格保持者が何年も防火管理者として選任されてしまうケースがありますので、講習を受講してもらうスケジュールを予め決めておいても良いでしょう。

②手当を支給する

防火管理者に対して報酬を支払うことで、なり手不足が解消される場合があります。
報酬を支払うにあたって、規定をあらかじめ細則等に定めておくことが望ましいです。

③外部に委託する

マンション内部から防火管理者を選任できない場合、外部の業者に業務を委託することも考えられます。
一般的には、業者に委託した場合費用が高くなりがちですが、防火管理業務を適切に遂行してくれる業者を選定することで、マンションの防火に関する安全性が高まることが期待できます。

※マンションによっては、防火管理業務の外部委託が認められない場合があるので注意が必要です。

 

まとめ

ほとんどのマンションでは防火管理者を選出する必要がありますが、なり手不足に悩んでいる管理組合は実際にに少なくありません。ただ、法律上の義務だけでなく、マンション全体の防火意識を高めるためにも、その中心となる防火管理者の選出は重要な課題となります。

また、マンションに居住している方が円滑に防火・避難行動をとれるよう、訓練等で居住者の方の意識を高めてもらうことで、いざという時に行動に移せることが期待できます。

講習を受講する必要があるため、多少の負担はありますが、防火管理者の選任の議題があがった際には、前向きなご検討をお願いいたします。

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北條弘城

あなぶきハウジングサービス
北條 弘城(ほうじょう ひろき)

香川県高松市出身。2019年入社。

入社をしてから分譲マンションの管理担当(フロント)として、管理組合様のサポートをさせていただいております。
これまでの経験をもとに、管理組合運営に関する情報を中心に発信して参ります!

保有資格:管理業務主任者
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