皆さん、こんにちは、仲井です。宅建本試験が近付いてまいりました。そこで、今回から、今年の改正点に関連する分野を学習します。本試験に臨むにあたって、どこがどのように改正されたのか把握し、改正があった部分の周辺知識もあわせて押さえておくとよいでしょう。今回は、宅建業法の「保証金」のポイントを説明します。では、早速中身に入っていきましょう。
目次
- 納付の場面
- 還付の場面
- 取戻しの場面
納付の場面
保証金制度には、営業保証金と弁済業務保証金があり、どちらの制度も、納付の場面、還付の場面、取戻しの場面に分けて学習します。
もっとも、弁済業務保証金は、宅建業者が「保証協会」に加入しないと使えない制度です。そして、弁済業務保証金制度の場合、宅建業者と供託所の間に保証協会が入りますので、営業保証金制度と比較して様々な違いが生じてきます。
以下、納付の場面、還付の場面、取戻しの場面に分けて、営業保証金および弁済業務保証金のポイントを説明します。
まずは、納付の場面から説明しましょう。
1 営業保証金制度の場合
宅建業者は、事業を開始するまでに、営業保証金を、主たる事務所のもよりの供託所に供託します(それぞれの事務所のもよりの供託所ではありません)。供託した旨の免許権者への届出は、宅建業者がおこないますが、この届出をしないと、「全ての事務所」で営業を開始できません。そして、いつまでも届出をしないと、免許権者から催告を受けたり(免許から3ヶ月、必要的)、免許の取消し(催告から1ヶ月、任意的取消し)を受けます。
供託する営業保証金の金額は、主たる事務所の分は1,000万円、その他の事務所は1か所につき500万円で、それらの合計額を、主たる事務所のもよりの供託所に、金銭または有価証券で供託します。
なお、有価証券の評価額は、国債証券100%(額面通り)、地方債・政府保証債証券は額面の90%、その他の証券(何十種類もあるので覚える必要なし)は額面の80%です。手形・小切手、株券では、確実に金銭になるか分かりませんので、供託できません。
次に、事務所を新設した場合、その分(1か所500万円)を「主たる事務所のもよりの供託所」に供託しますが、免許権者にその旨を届け出ないときは、その「新設した事務所」で営業することができません。
2 弁済業務保証金制度の場合
宅建業者は、保証協会加入日までに、弁済業務保証金分担金を、保証協会へ納付します。これを納付しないと保証協会に加入できません。加入後に納付するのではありませんので注意してください。
また、宅建業者が保証協会に「納付」するのが「弁済業務保証金分担金」で、保証協会が、法務大臣・国土交通大臣の定める供託所(主たる事務所のもよりの供託所ではありません)に「供託」するのが「弁済業務保証金」ですので、混同しないようにしましょう。保証協会は、弁済業務保証金を供託した場合、免許権者へ届出をおこないます。
納付する弁済業務保証金分担金の金額は、主たる事務所の分は60万円、その他の事務所は1か所につき30万円で、それらの合計額を、金銭で納付します(保証金の「供託」については、営業保証金と同様に、有価証券可能です。評価額についても同様に考えましょう)。
事務所を新設した場合、その日から2週間以内に、その事務所の分の弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければならず、納付しないときは、保証協会の社員たる地位を失います。「社員」とは、保証協会に勤めている人という意味ではなく、保証協会に加入している「メンバー」ぐらいの意味です。なお、「2週間」という部分に気をとられていると、「納付」という部分でひっかけたりしますので、ご注意ください。
還付の場面
宅建業者と宅建業に関して取引をした場合、その「取引によって生じた債権」を有するときは、供託所から還付を受けることができます(事業資金を融資した銀行の債権、広告会社の広告の債権、従業員の給料の債権、交通事故の被害者がたまたまお客さんだった場合の損害賠償債権、出前をしたお店の飲食代金債権等については、還付は受けられません)。
そして、この還付請求権者にとって、相手の宅建業者が弁済業務保証金制度を使っていても、還付を受ける金額は、営業保証金の場合と変わりません(営業保証金制度・弁済業務保証金制度問わず、実際の被害額がどんなに大きくても、供託している営業保証金の範囲内で還付を受けられます。そして、弁済業務保証金制度の場合、平たく言えば、もし営業保証金だったらいくら還付されるかで考えるのです。弁済業務保証金制度の金額に3分の50をかけるとすぐ出ます。たとえば、主たる事務所1か所の場合、60万円ではなく、60×50/3=1,000万円還付されるのです)。
また、宅建業者が途中で保証協会に加入して弁済業務保証金制度を使うようになった場合、保証協会加入前の取引についても、弁済業務保証金制度による還付を受けることができます。
もっとも、弁済業務保証金の場合、還付を受けようとする者は、「保証協会の認証」を受けなければなりません(都道府県知事や国土交通大臣の認証ではありません)。これは営業保証金にはない制度です。
さて、還付後の話ですが、保証金が還付された場合、営業保証金では宅建業者が、弁済業務保証金では保証協会が、それぞれ「不足の通知を受けた日から2週間」以内に、不足した保証金を補充供託します。
もちろん、弁済業務保証金では、供託所への充当分を、宅建業者が保証協会に納付します。もし、期限内(還付充当金を納付すべき旨の通知を受けた日から2週間以内)に納付しない場合、保証協会の社員たる地位を失います。なお、「社員たる地位を失う」のであって、「免許が効力を失う」ではありませんので注意しましょう。また、還付だけでは、社員たる地位を失うわけではない(還付から2週間ではなく、通知から2週間)点にも注意しましょう。
さて、ここで改正点です。
営業保証金、弁済業務保証金を問わず、宅建業者は、還付請求権者から除外されます。宅建業者が保証金から弁済を受けられなくなったことによって、その分、一般消費者の保護がより図られるようになったとイメージしましょう。
これに伴って、「供託所等の説明」(契約当事者に対し契約成立前に供託所に関する一定の事項について説明する)は、還付を受けられない宅建業者に対しては、おこなわなくてもよいことになりました(なお、「供託所等の説明」をする場合は、宅建士が説明する必要はなく、書面の作成も不要です。重要事項説明とは説明担当者や説明方法等が違いますので、あわせて押さえましょう)。
取戻しの場面
営業保証金では、宅建業者でなくなった(免許が効力を失った、免許が取り消された等)ような場合等は、原則として(取戻し事由発生から10年経過の場合は例外)取戻しの際に公告が必要です。これに対し、二重供託の場合(主たる事務所が移転し、供託したものに有価証券を含み「保管替え」の制度が使えないため、新たな供託所に供託した場合において、従前の供託所から取戻すとき)や、保証協会の社員になった場合は、消費者の保護が図れるため、公告が不要です。
弁済業務保証金では、宅建業者が保証協会の社員(メンバー)でなくなった場合と、保証協会の社員がその一部の事務所を廃止した場合、保証協会が弁済業務保証金を取り戻せます(もちろん、保証協会はその分を宅建業者に返還します)。
押さえていただきたいのは、保証協会の社員でなくなった場合、保証協会は公告をすることが必要ですが、一部の事務所を廃止した場合、公告は不要です。一部の事務所を廃止した場合、まだ保証協会の社員なので、私は「バックに大きな保証協会がついているから公告不要だ」と覚えていました。
なお、営業保証金では、一部の事務所を廃止した場合、原則として公告が必要(取戻し事由発生から10年経過の場合は例外)ですので、あわせて押さえておきましょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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