管理業務主任者合格講座!民法|「消滅時効」「金銭債務」を解くときのポイント

仲井悟史

皆さんこんにちは。仲井です。管理業務主任者合格講座3回目、今回も民法です。テーマは「消滅時効」「金銭債務」で、管理費等滞納の問題において、選択肢の1つとして出題されることがあります。早速中身に入りましょう。

3

目次

  • 消滅時効
  • 金銭債務

消滅時効

まずは、消滅時効から説明致します。

1消滅時効とは

例えば、管理費を支払わない区分所有者がいる場合において、管理組合が長年放置していたとき、支払債権が消滅して、それを区分所有者に主張されることにより、もはや支払ってもらえなくなるということがあり得ます。

これが「消滅時効」で、「権利の上に眠る者は保護しない」「永続する事実状態を尊重する」という考え方によります。

2消滅時効の進行・債権等の消滅時効期間

では、消滅時効はいつから進行するのでしょうか(消滅時効の起算点)。また、債権等の権利は、何年で時効消滅するのでしょうか(消滅時効の期間)。

まず、消滅時効の起算点についてですが、消滅時効は、「権利を行使することができる時」から進行します。例えば、確定期限付債権(「12月の最初の日曜日に払います」のように期限がハッキリしているのが確定期限です)や不確定期限付債権(「東京に次に雪が降ったら」「父が死亡したら」等、いつかは来るがそれがいつになるか分からない、というのが不確定期限です)の場合、権利行使できる期限到来時から消滅時効が進行します。期限の定めのない債務(「いつでも気が向いた時に払ってよ」というイメージ)は、債権が発生すればいつでも権利行使できるので、債権発生時から消滅時効が進行します。

IMG_0331

そして、起算点からどんどん期間が進行した結果、債権は、10年間行使しないときは、消滅し、債権または所有権以外の財産権(地上権、地役権等)は、20年間行使しないときは、消滅します(なお、所有権は時効消滅しません。自分の物なのですから、ほったらかそうが何しようが自由なのです。もっとも、他人が土地等の所有権を時効取得した反射的効果として、所有権を失うことはありますが、これは権利そのものが消えてしまう消滅時効とは違います)。

3定期給付債権・判決で確定した権利の消滅時効

上記のように、一般の債権は10年で時効消滅しますが、管理費や特別修繕費(修繕積立金のように、年またはこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅します。これが定期給付債権の短期消滅時効です(ほかにも民法は短期消滅時効を定めています。例えば、よく出される例ですが、いわゆる飲み屋さんの代金は1年で時効消滅すると言われています。昔は、ツケをためると会社に電話がかかってきて恥ずかしい思いをした人がいたものです)。

もっとも、この定期給付債権のように10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、確定判決によって確定した権利については、その時効期間は、10年とされます。公的機関によるお墨付きをもらったので、強い権利になるわけですね。

4時効の中断事由

さて、消滅時効は、権利を行使することができる時から進行しますが、権利者は、この進行を中断することが可能です。債権の場合、時効は、「請求」や「承認」によって中断させることができます(試験できかれたことがありますが、長期入院程度では時効中断しません)。

請求」は、裁判上の請求等が典型例ですが、裁判上の請求は、訴えの却下または取下げの場合には、時効の中断の効力を生じません。

承認」は、債権の場合、債務者が「あなたには権利がありますよ」と認めることです。そして、被保佐人や被補助人は、単独で債務の承認ができるとされています。

裁判上の請求に関連して、「催告」についてもコメントしておきましょう(時効期間寸前になっていて裁判を起こす余裕がない場合に有効な方法です)。「催告」は、内容証明郵便のように、裁判外で「払え」と告げることですが、このような催告だけでは時効中断しません。催告は、6カ月以内に、裁判上の請求等をしなければ、時効の中断の効力を生じません。そして、期間内に裁判上の請求等をすれば、催告の時にさかのぼって時効中断します。逆に、催告した後、6カ月以内に再び催告しても、時効中断の効力は生じません

IMG_0346

金銭債務

次に、金銭債務について説明致します。

1金銭債務とは

金銭債務とは、金銭の給付を目的とする債務のことで、前述の管理費等のほか、貸金債務や代金債務、管理委託料等が、金銭債務にあたるといえます。金銭債務には、履行不能はありません(この世からお金は無くならないからです)。

ほかにも、金銭債務には特殊性があります。

2金銭債務の特殊性

金銭債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率(民法では、「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする」と規定されています)によって定めるとされています。ただし、約定利率がこの法定利率(年5%)を超えるときは、約定利率によります。マンションの管理組合では、管理規約に、管理費等滞納の場合の遅延損害金の年利を定めていることが多いですが、管理規約にこのような定めがなくても、管理組合は法定利率(年5%)による遅延損害金を滞納者に請求することができるのです。

このように金銭債務の損害賠償について法定利率等の規定があるため、債権者は、損害の証明をすることを要しません

また、金銭債務の場合、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができません。金銭は万能性・高度の流通性を持つと言われることがありますが、簡単に言えば、「どんな事情があっても、お金だったら、どこからでもかき集めて、どんな方法でも支払えるでしょ」ということで、いくら言い訳しても、遅れればとにかく債務不履行になってしまうのです。

IMG_0333

…今日はこの辺にしておきましょう。

管理費等滞納に関しては、ほかにも民法の「弁済」や、民事訴訟法の「支払督促」「少額訴訟」・破産法の「免責」をマスターしておくと、より万全であるといえるでしょう。

The following two tabs change content below.

仲井悟史

あなぶきハウジングサービス 東京東支店:仲井 悟史(なかい さとし)
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
  • twitter
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

ブログの読者になる

ブログの読者になると新着記事の通知を
メールで受け取ることができます。
読者登録はコチラ

最近書いた記事

関連の記事

  • facebook
  • feedly
  • rss
backtotop