こんにちは、仲井です。今回は「都市計画法」の「都市計画」について学習します。範囲が広い分野ですので、全体像と各分野の概略を説明致します。まずはイメージとおおかまな内容を把握することが大切です。
- 都市計画法とは
- 都市計画区域について
- 都市計画について
都市計画法とは
都市計画法は、「都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与すること」を目的とします。
この目的を達成するための手段として、都市計画区域(都市をつくる場所)や都市計画(都市をつくるための計画)を定めます。そして、都市計画に合わない建物の建築や土地の造成等を制限するのです(都市計画制限)。
皆さんが、勉強をするとき、合格という目的のために、まずは計画を立てて、計画に合わない行為(旅行や飲み会等)を制限しますよね。都市計画や都市計画制限もそれと同じイメージなのです。
都市計画区域について
では、ここからは、お弁当を作る場面で考えてみましょう。お弁当を作るとき、まずはお弁当箱を決めます。これが「都市計画区域」です。
都市計画区域とは、「一体の都市として総合的に整備し、開発し、および保全する必要がある区域」です。
都市計画区域は、行政区画(市町村や都道府県の境目)とは無関係に指定されます。都市は、行政区画とは関係なく発展していくものだからです。
また、都市計画区域は、都道府県が指定します。ただし、複数の都府県(北海道の周りは海なので「道」はありません)にまたがるような場合は、国土交通大臣が指定します。
都市計画について
さて、お弁当箱を決めたら、次は、頭の中でお弁当箱の中身を決めます。これが「都市計画」です。
そして、都市計画には、いくつかのメニューが用意されています(このメニューの中からいくつか選んでいくのです)。たとえば、区域区分、地域地区、都市施設、地区計画等です。それぞれの都市計画のポイントをご説明しましょう。
1 区域区分
頭の中でお弁当箱の中身を考えるにあたって、ご飯のエリアとおかずのエリアを真っ二つに仕切るイメージが、「区域区分」です。
区域区分は、「都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図る必要がある場合における、市街化区域と市街化調整区域との区分」のことで、都道府県が、必要性を判断して区域区分を定めることができます。すなわち、都市計画区域の中で、全部いっぺんに都市をつくろうとすると、めちゃくちゃになる可能性がありますし、予算的にも人員的にも大変な場合もありますので、そのような場合、優先的に都市をつくるところ(市街化区域)と、遅れて都市をつくるところ(市街化調整区域)を決めることができるのです。
ここで、市街化区域とは、「すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」で、市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」です。「抑制」なのであって、「禁止」ではないので、注意しましょう。
また、「おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図る」のは、市街化区域であって、市街化調整区域ではありません。
2 地域地区(用途地域)
お弁当箱を決め、ご飯とおかずを分けたら、さらにメニューを細かく決めていきます。これが「地域地区」です。より良い計画にするために、さらに細かく決めていくのです。
地域地区には、基本的な「用途地域」と、補助的な「用途地域以外の地域地区」があります。
「用途地域」は、住居系のもの(7種類)、商業系のもの(3種類)、工業系のもの(2種類)に大きく分類されます。より良い計画にするために、「ここは住宅地」「ここは商店街」等と決めていくのです。
優先的に都市をつくる市街化区域では、少なくとも(=必ず)用途地域を定めます。これに対し、市街化調整区域では、原則として用途地域を定めません(「一切」ではないのでご注意ください)。
各用途地域の定義は、一字一句暗記する必要はなく、キーワードで押さえていきましょう。
たとえば、準住居地域は「道路の沿道」「これと調和した住居」、近隣商業地域は「近隣の」「日用品」、商業地域は「主として商業」、準工業地域は「主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業」、工業地域は「主として工業」、工業専用地域は「工業」…という感じです。
3 地域地区(用途地域以外の地域地区)
用途地域以外の地域地区の主なものとして、高度地区、高度利用地区、特別用途地区、特定街区、風致地区、防火地域・準防火地域、高層住居誘導地区、特例容積率適用地区、特定用途制限地域、等があります。
用途地域以外の地域地区についても、キーワードで押さえていきます。たとえば、
高度地区は「高さ」、
高度利用地区は「容積率」「建ぺい率」「建築面積」「壁面の位置」、
特別用途地区は「地区の特性」「特別の目的」「用途地域の指定を補完」、
高層住居誘導地区は「住居と住居以外の用途とを適正に配分」「利便性の高い高層住宅の建設を誘導」、
特定街区は「街区内における容積率、建築物の高さ…壁面の位置」、
風致地区は「都市の風致」「地方公共団体の条例で建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採等の行為を規制」、
特例容積率適用地区は「容積率の限度からみて未利用」「容積の活用を促進」「高度利用」
…という感じです。
特に、高度地区と高度利用地区、あるいは、特別用途地区と特定街区と特例容積率適用地区と特定用途制限地域は、それぞれ名前が似ているので注意しましょう。
なお、定められる地域についてですが、高度地区・高度利用地区・特別用途地区は、用途地域内において定められます。
また、高層住居誘導地区は、第一種・第二種住居地域や準住居地域・近隣商業地域・準工業地域内における一定の容積率が定められた地域に定め、特例容積率適用地区は、一定の用途地域(9種類)内に定められます。あわせて押さえておきましょう。
4 都市施設、地区計画
都市計画のメニューには、「都市施設」や「地区計画」もあります。
「都市施設」には、道路、公園、下水道、学校のほか、水道・水路、電気・ガス供給施設、ゴミ焼却場、病院、社会福祉施設、火葬場等がありますが、特に必要があるときは、都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができます。本来、このような施設は、都市をつくる都市計画区域内に定めるものと考えられますが、都市計画区域外でも、道路、学校、水路、ゴミ焼却場、火葬場等が特に必要なときもあるからです。
なお、都市施設が計画された場合、建築の制限があります(都市計画制限)。これから都市施設をつくろうとしているのに、建物が建ったら計画がうまくいかなくなる可能性があるからです。すなわち、都市計画施設の区域内で建築物を建築する場合、原則として、都道府県知事等の許可が必要です。
「地区計画」は、「建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、および保全するための計画」とされ、より地域に密着した市町村が指定します。「一体として」「区域の特性にふさわしい態様」「良好な…各街区」がキーワードです。比較的小さな地域における、その地域に応じた細かい計画というイメージです。
地区計画の一定の区域内にも、建築等の制限があり、原則として、事前に市町村長へ届出が必要です。届出は事後ではないことと、「市町村長」「届出」という部分に注意しましょう。
いかがでしょうか?都市計画法は、毎年のように少しずつ改正があるところですので、しっかりと学習しておきましょう。今回説明した部分を重点的に学習したうえで、過去問を通じて細かい点を足していってください。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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