こんにちは、仲井です。今回もバシバシいきます。民法5回目は、「売主の担保責任」がテーマです。難しくないので確実に得点するようにしましょう。
目次
- 売主の担保責任とは
- ここがポイント!
- その他の注意点
売主の担保責任とは
たとえば、売主Aから買主Bが買った不動産につき、契約当初からトラブル・問題点(瑕疵担保責任ですと、雨漏れ、シロアリ、床が腐っていた、ちょっと見ただけでは分からない穴や傷…)があった場合、買主は、売主に対し、解除、損害賠償請求、代金減額請求という責任追及をすることができます(民法上、修補請求は規定されていません。実際は特約で認めることもありますが)。
ちなみに、契約後にトラブル等が生じた場合、債務不履行や危険負担の問題となりますが、試験対策としてはあまり突き詰めて考えなくてもいいのかな、と思います(中古車の横で契約をしていて、鳥やよその子供が11時に「キーッ」と車を傷つけた場合、「契約が10時59分だったら危険負担で、契約が11時1分だったら売主の担保責任で…」と考えるのは、ちょっとおかしいですよね)。
押さえていただきたいのは、売主の担保責任は、無過失責任であるということです。難しい言い方をすると、「売買という制度の信用性」を維持するために、売主に過失があろうとなかろうと、とにかく買った物と払った代金の釣り合いをとることだけを考えるのです。たとえば、解除は、物0・代金0で、損害賠償請求は、物80+20・代金100で、代金減額請求は、物80・代金100-20で、それぞれ釣り合いがとれるのです。
ここがポイント!
では、ここからがポイントです。
1 悪意でもできること
トラブル・問題点につき、売主が担保責任を負う場面は、全部他人物売買、一部他人物売買、抵当権等の担保物件が付いていた、地上権や永小作権(なんか演歌歌手みたいですね…)等の利用権が付いていた、数量指示売買における数量不足、隠れた瑕疵(瑕疵担保責任)、の6つであり、それぞれの場面で、買主が悪意でも責任追及できるかどうかの結論が違います。そこが最大のポイントです。
買主が悪意の場合、全部他人物売買では、解除ができ、一部他人物売買では、代金減額請求ができ、担保物件付きでは、解除・損害賠償請求ができます。特に、担保物件付きでは、悪意なのに、損害賠償請求までできるのです(ただし、民法は、全部他人物売買では悪意の者の損害賠償請求、および、一部他人物売買では、悪意の者の解除・損害賠償請求を認めていません。そこまで認めると「やりすぎ」と考えたのでしょう)。この結論をしっかり押さえましょう(「ぜん・かい、いち・げん、たん・かいそん」)。
これらの場合、売主から、「今は他人物だけど、絶対所有権を移すから!」「債務を弁済して、抵当権を絶対消すから!」と言われると、買主は「そこまで言うなら大丈夫だろう」と思ってしまうので、たとえ悪意でも担保責任の追及ができるのです。
逆に、地上権等が付いていた、数量不足、隠れた瑕疵の場合は、悪意では、担保責任の追及はできません(「ち、すう、か?」)。
数量が足りない場合、分かっていて、「それでもいいや」と思って、いわば「割高」で買っているのですし、瑕疵の場合、極端な話、「俺は穴が好きなんや!」「雨漏りがあってもいいんだ」と思って買っているのですから、後で文句は言えません。
なお、瑕疵担保責任だけは、善意無過失の場合のみ、解除・損害賠償請求ができます(逆に、善意有過失・悪意の場合、責任追及できない)。「隠れた」イコール「善意無過失」なのです。他の5つの場面は、善意・悪意で分けて考えればよく、過失があるかどうかまでは考えなくてよいのです。
さて、ここからは豆知識的な感じで、あわせて知っておくとよいのですが、全部他人物の場合と担保物件が付いていた場合は、代金減額請求はありません。真の所有者が所有権移転を拒否して目的物の全部が手に入らない、あるいは、抵当権等の実行により全部が取られてしまうのですから、代金減額(100%減額)は意味がないですよね。解除して返金を受ければ、それで済むことでしょう?
また、地上権等の利用権が付いていた場合と、隠れた瑕疵があった場合も、代金減額請求はありません。私は、「減額する金額を算出しにくいから」と覚えていました。
ちなみに、地上権等の利用権が付いていた場合と、隠れた瑕疵があった場合は、結論がよく似ています(買主に無過失が要求されるかどうかという点は違いますが)。乱暴な言い方をすれば、不動産の上に、人が乗っているか、シロアリが乗っているかの違いに過ぎず、目的物の上に「邪魔者」がいるという点では、両者は場面がよく似ていると考えられるのです。
2 担保責任の追及期間
次に、売主の担保責任が追及できる場合の期間を押さえましょう。つまり、すごく後になってから買主に文句を言われたら、売主としては「もっと早く言ってよ」と思うでしょうから、責任追及できる期間が決まっているのです。
善意の場合、6つの場面の全部で、解除と損害賠償請求ができます(あと、一部他人物の場合と数量不足の場合において、買主が善意のとき、代金減額請求もできます)。その場合、責任追及できる期間は、トラブル・問題点を「知った時から1年」です(知った時から1年間数えるので、買主にとって、とても有利ですね)。ただし、一部他人物売買において、買主が悪意のとき、「契約の時から1年」の間は、代金減額請求ができます(買主にとって、ちょっと不利ですが、悪意なので仕方ありません)。
なお、全部他人物売買と、担保物件が付いていた場合は、1年間という制約はありません。私は、「全部他人物は全部手に入らないし、担保物件が付いていた場合は、実行によって全部取られてしまい、買主があまりにかわいそうだから、ずっと責任追及できる」と覚えていました。
その他の注意点
以上を押さえたうえで、以下の点もきっちりマスターしておいてください。
1 解除について
まず、売主の担保責任における解除は、「無条件ではなく、条件が付いている」という点です。
たとえば、抵当権が付いているだけで解除できるわけではなく、抵当権が実行されて初めて解除ができます。全部他人物も、他人の物であるというだけでは解除できず、買主に目的物を移転できなくて初めて解除ができるのです。他の場面も同様で、「契約の目的不達成の場合」という条件が付きます。つまり、「野球場にしたかったのに、一部他人物なら買った意味がないよ」「マイホームを買ったのに、瑕疵があまりにひどくて住めないよ」という場合に解除ができるのです。
2 住宅の品質確保の促進等に関する法律について
売主の担保責任の問題を解く場合、問題文をよく読みましょう。「新築住宅」の場合、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が優先して適用されます。
逆に、中古住宅の場合や倉庫の場合は、住宅の品質確保の促進等に関する法律ではなく、民法で問題を解いていくことになります。
いかがでしたか?もっともっとお話ししたいことはありますが、ここまでにしておきましょう。基本的知識をまず完璧にしてから、過去問などで、その他の知識を少しずつ足していけばよいでしょう。次回もご期待ください。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
最新記事 by 仲井悟史 (すべて見る)
- 宅建合格講座!宅建業法|「手付金等の保全措置」を解くときのポイント - 2020年8月28日
- マンションで居住者イベントを実施する3つのメリット - 2019年4月6日
- マンション入居者イベントのオススメ企画|初心者向け - 2019年3月27日