こんにちは、仲井です。今回も直前編でして、宅建業法の改正点のポイントを説明します。早速中身に入っていきましょう。
目次
- 「保証金」の分野の改正点
- 「媒介契約」の分野の改正点
- 「重要事項説明」の分野の改正点
- 「従業者名簿」の分野の改正点
「保証金」の分野の改正点
1 保証金の還付
保証金の還付について、「宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、宅地建物取引業者が供託した営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する」「宅地建物取引業保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者(社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者を含み、宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、当該社員が社員でないとしたならばその者が供託すべき…営業保証金の額に相当する額の範囲内…において、当該宅地建物取引業保証協会が供託した弁済業務保証金について…、弁済を受ける権利を有する」と改正されました。
すなわち、宅建業者は、保証金からの還付は受けられないこととなりました。
2 供託所等に関する説明
これに伴い、「供託所等に関する説明」においても、「宅地建物取引業者は、宅地建物取引業者の相手方等(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)に対して、当該売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、…説明をするようにしなければならない」と改正され、宅建業者への供託所等に関する説明が不要となりました。
供託所等に関する説明については、この改正点に加え、重要事項説明と比較して、①説明担当者が宅建士である必要がないこと、②説明の相手が買主や借主に限らないこと、③書面を交付しての説明は不要であること、もあわせて押さえておきましょう。
3 保証協会の業務
弁済業務保証金に関連して、「保証協会の業務」にも改正点があります。
「宅地建物取引業者を直接または間接の社員とする一般社団法人は、宅地建物取引士等(=宅地建物取引士その他宅地建物取引業の業務に従事し又は従事しようとする者)がその職務に関し必要な知識及び能力を効果的かつ効率的に習得できるよう、法令、金融その他の多様な分野に係る体系的な研修を実施するよう努めなければならない」(努力義務)という規定の新設に伴い、保証協会は、「全国の宅地建物取引業者を直接又は間接の社員とする一般社団法人による宅地建物取引士等に対する研修の実施に要する費用の助成」をおこなうことができることとなりました(任意的業務)。
なお、保証協会の必要的業務として、①宅建業者の相手方等からの社員の取り扱った宅建業に係る取引に関する「苦情」の解決、②宅建士等に対する「研修」、③社員と宅建業に関し取引をした者(宅建業者に該当する者を除く)の有するその取引により生じた債権に関し「弁済をする業務」、が挙げられますので、あわせて押さえておきましょう(「苦いけんべん」と覚えましょう)。
「媒介契約」の分野の改正点
媒介契約の分野では、「媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない」という規定が新設されました。そして、この「規定に反する特約は、無効とする」という規定も追加されました。
ポイントは、「専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、…依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を二週間に一回以上(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約にあっては、一週間に一回以上)報告しなければならない」という規定との比較です。
申込みがあったときの報告は、一般媒介でも専任媒介でも必要です。これに対して、業務の処理状況の報告は、専任媒介で必要ですので、注意しましょう。
なお、この申込みがあったときの報告については、指定流通機構に関する規定とも混同しないようにしましょう。
すなわち、①宅建業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、一定期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地または建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額等を、指定流通機構に登録しなければならず、登録をした宅建業者は、登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければなりません。また、②宅建業者は、登録に係る宅地または建物の売買または交換の契約が成立したときは、遅滞なく、その旨を当該登録に係る指定流通機構に通知しなければなりません。
「重要事項説明」の分野の改正点
「保証金」の分野と同様、「重要事項説明」の分野でも、相手が宅建業者かどうかで区別がつけられることとなりました。
すなわち、買主や借主等が宅建業者の場合、原則として、重要事項の説明が不要となりました。
ただし、重要事項の説明書面の交付や、37条書面の交付は、相手が宅建業者かどうかで区別しませんので、注意しましょう。
「従業者名簿」の分野の改正点
宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、従業者証明書の番号、主たる職務内容、宅地建物取引士であるかの別、等を記載しなければなりませんが、改正によって、この従業者名簿の記載事項から、住所が削除されました。
なお、宅地建物取引士資格登録簿や、宅地建物取引士証においては、住所は記載事項とされます。もっとも、宅建士証を提示する際は、住所の部分にシール(容易にはがせるもの)を貼ることができますので、あわせて押さえておきましょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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