こんにちは、講師の仲井です。民法第4回目は、「保証」のポイント、特に、通常保証と連帯保証の共通点・相違点を中心にご説明します。今回もガンガン行きます。レッツ・ゴー!
目次
- 通常保証と連帯保証の共通点
- 通常保証と連帯保証の相違点
- その他の注意点
通常保証と連帯保証の共通点
債権者Aに対して、主たる債務者Bが債務(主たる債務)を負い、Cが「主債務者Bが払わなければ私が払う」ということで債権者Aと保証契約を結び、Cが保証人となった場合で考えてみましょう。
この保証人Cの責任が重いかどうかで、通常保証と連帯保証に分かれますが、連帯保証も保証の一種ですから、通常保証との共通点もあります。
1 保証契約の締結
まず、保証契約の締結において、慎重な手続きのため、保証契約は書面または電磁的記録によっておこなわなければ効力を生じません。
また、保証契約は、あくまで債権者Aと保証人Cで締結する契約ですので、主債務者Bから頼まれなくても、それどころか主債務者Bが嫌だと言っても、かまわず締結できます。主債務者Bは、嫌だったら自分で払えばよいのです。
これらの点は、通常保証も連帯保証も共通です。
2 付従性
次に、保証人は、「主債務者が払わなければ払う」という二次的な責任を負いますので、通常保証も連帯保証も、付従性を有します。つまり、主債務者に起こった出来事は、保証人に影響します。あるいは、主債務者が主張できることは、保証人も主張できます。
たとえば、「主債務者Bが」債権者Aに弁済すれば、保証人Cや連帯保証人Cの債務も、その影響を受けて消滅します。
なお、「保証人Cが」債権者Aに弁済して債務が消滅した場合、それが主債務者Bに影響する点も、通常保証と連帯保証で共通です。あわせて押さえておきましょう。基本的に保証人Cに起こった出来事は、主債務者Bに影響しないのですが、さすがに「払うこと」は影響するのです(連帯保証では、さらに主債務者に影響する場面がありますが、それは後で説明しましょう)。
3 相殺について
先述の付従性、および、相殺(「そうさい」または「そうさつ」です。「あいさつ」でも「あいごろし」でもありません)は「弁済したのと同じである(=相殺する側からすると、債務の弁済と債権の回収を同時におこなっている)」ことから、以下のような結論が導かれます(通常保証・連帯保証共通です)。
まず、主債務者Bも債権者Aに同種同額の債権を持っている場合、主債務者Bが相殺を主張すれば、付従性によって、保証債務も消滅します。
また、主債務者Bも債権者Aに同種同額の債権を持っている場合において、主債務者Bが相殺を主張しないとき、保証人Cが、AとBとの間の債権債務の相殺を主張できます。付従性から、「主債務者Bが主張できることは保証人Cも主張できる」のです。
では、保証人Cが債権者Aに対し同種同額の債権を有している場合はどうでしょう。この場合、保証人Cが自己の債権とAの債権の相殺を主張すれば、相殺は弁済したのと同じことなのですから、主債務者Bに影響します(「払うこと」は主債務者に影響しましたね)。
しかし、保証人Cが債権者Aに対し同種同額の債権を有している場合において、保証人Cが相殺を主張しないとき、主債務者Bが保証人Cの相殺の主張を援用することはできません。「保証人Cが主張できることは主債務者Bも主張できる」とはならないのです。この点は注意しておきましょう。
通常保証と連帯保証の相違点
以上が通常保証と連帯保証の共通点ですが、以下の通り、相違点もあります。
1 補充性・分別の利益
通常保証と違い、連帯保証には、補充性(催告の抗弁・検索の抗弁)がありません。すなわち、連帯保証人Cは、債権者Aからいきなり請求等をされても、「まずは主債務者Bのところへ行ってくれ」とは言えないのです。
また、通常保証と違い、連帯保証には、分別の利益がありません。すなわち、連帯保証人Cは、債権者Aから全額請求されても、「他の保証人と割り勘で払うから」とは言えないのです。
以上のように、連帯保証人Cは、「いきなり」「全額」請求されても拒むことはできず、連帯保証は通常保証よりも責任が重たいので、実際上、よく使われているのです。
2 請求と承認
請求と承認によって、債務の時効が中断しますが、保証の分野でこれが登場するとちょっと複雑になります。だからこそ、試験でもよく出されます。ここは大事ですから、しっかりマスターしましょう。
まず、債権者Aが主債務者Bに請求した場合、付従性によって、時効中断の効力が保証人Cにも及びます。
また、主債務者Bが債権者Aに対し債務の承認をした場合も、付従性によって、時効中断の効力が保証人Cにも及びます。
連帯保証にも付従性がありますので、主債務者に起こった請求・承認(=時効中断)は保証人にも影響するという結論は、通常保証も連帯保証も同じです。
では、債権者Aが保証人Cに請求した場合はどうでしょう。また、保証人Cが債権者Aに対し債務の承認をした場合はどうでしょう。
債権者Aが通常保証人Cに請求した場合、主債務者Bに時効中断の効力は及びません。
債権者Aが連帯保証人Cに請求した場合、主債務者Bに時効中断の効力が及びます。
通常保証人Cが債権者Aに対し債務の承認をした場合、主債務者Bに時効中断の効力は及びません。
連帯保証人Cが債権者Aに対し債務の承認をした場合も、主債務者Bに時効中断の効力は及びません。
お気づきですか?債権者Aが保証人Cに請求した場合、通常保証と連帯保証で違いが生じてくるのです。
「連帯保証人に請求→主債務者に影響」「主債務者が承認→連帯保証人に影響」「連帯保証人が承認→主債務者に影響しない」…と反射的に結論が言えるようになりましょう!
その他の注意点
保証の分野は、登場人物が多く複雑なので、民法の他の分野と同じく、図を書いて、誰についてどういうことを問うているのか、関係をしっかり把握することが必須です。
たとえば、催告の抗弁権は、あくまで保証人Cの権利であって、主債務者Bの権利ではありません。主債務者Bは、債権者Aが請求してきても、「いきなり私に来ないでくれ。まずは保証人Cのところへ行ってくれ」とは言えません。BとCを取り違えてしまうと、答えが逆になってしまうのです。
また、本試験では、必ずしも債権者がA、主債務者がB、保証人がCとは限らず、ABCを入れ替えてくることもあります。
ひっかけに注意してください!!
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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