皆さんこんにちは、仲井です。今回も、「抵当権」を学習します。テーマは、「抵当権の目的・効力の及ぶ範囲」です。出題頻度は多くないですが、次回学習する「法定地上権」の前提となる知識がありますので、大まかに把握しておきましょう。では、早速、中身に入ります。
- 抵当権の目的
- 抵当権の効力の及ぶ範囲(付加一体物、従物、果実)
- まとめ
前回は、抵当権の特徴や性質(「抵当権者に占有を移さないで、抵当権設定者が使用・収益・処分できる」ということと、「抵当権には物上代位性がある」ということ)を学習しました。今回は、抵当権はどんなものに設定できるか(抵当権の目的)ということと、抵当権の設定があった場合、どこまで効力が及ぶか(効力の及ぶ範囲)ということを学習します。
抵当権の目的
まず、抵当権は、どんなものに設定できるのでしょうか。
この点、不動産だけではなく、地上権および永小作権も、抵当権の目的とすることができます。不動産を持っていなくても、地上権等を担保にすることができるのです。ただし、民法上は、不動産・地上権・永小作権(フジエイ子と覚えましょう、名前を間違えないように)以外は、どんなに価値があっても、抵当権の目的とすることはできません(車や宝石はもちろん、地役権や賃借権等も、抵当権の目的とすることはできません)。
なお、抵当権の目的物は、1つでなくてもかまいません。抵当権設定者は、1つの被担保債権に対して、抵当権の目的物を複数にすることができます(共同抵当といいます)。たとえば、複数の土地に抵当権を設定してもかまいませんし、複数の建物に抵当権を設定してもかまいません。また、土地とその上の建物に抵当権を設定してもかまいません。
抵当権の効力の及ぶ範囲(付加一体物、従物、果実)
抵当権を設定した場合、その効力はどこまで及ぶのでしょうか。言い換えれば、抵当権実行時にどこまで競売できるのでしょうか。
1 付加一体物
まず、抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(抵当不動産)に付加して一体となっている物に及びます。
たとえば、土地上の立木は、土地に付加して一体となっているといえます。立木は、金銭的価値があることが多いのですが、抜いたら枯れてしまいますので、土地と共に競売にかけるとメリットがありますよね(私は、土地の一部が盛り上がって立木になったとイメージしていました)。
ただし、たとえ土地に付加していても、土地上の建物(抵当権を設定していても、抵当権設定者は、土地上に建物を建てること自体はOKです)は、土地とは別個に取り扱われますので、土地に抵当権を設定しても、建物には抵当権の効力は及びません。
同様に、建物に抵当権を設定しても、その建物の存在する土地には抵当権の効力は及びません。
土地と建物の両方に抵当権の効力を及ぼしたいのならば、最初から両方に抵当権を設定(共同抵当に)しておけばよいのです。
2 従物
次に、「従物」について説明します。
ある物(主物)の効用を経済的に高めるものを「従物」といい(あくまでイメージですが、刀とさやや、鉛筆とキャップをイメージすると理解しやすいでしょう)、条文の解釈や判例等によって、主物に抵当権を設定した当時に存する従物には抵当権の効力が及ぶとされています。
たとえば、家に抵当権を設定した場合における、家の中の畳や建具が従物の具体例として多く挙げられます。従物は、付加一体物と違い、主物とは独立の物ですが、主物と距離的に近く効用を高めるため、セットで競売するとメリットがあるといえるでしょう。
そして、この従物に関する結論を類推し、「従たる権利」にも抵当権の効力が及ぶとされています。
すなわち、土地にBの借地権を設定し、Bが建物を建てた場合において、建物に抵当権を設定したとき、借地権(従たる権利)にも抵当権の効力が及ぶのです。
ここで、前述の「賃借権は抵当権の目的とすることはできない」という知識と「借地権に抵当権の効力が及ぶ」という知識を混同しないように注意しましょう。前者は、「いきなり賃借権に抵当権を設定する」ということです。これに対して、後者は、「建物に抵当権を設定したら、ついでに借地権に効力が及んだ」ということであり、両者は場面が異なるのです。
3 果実
さらに、「果実」について説明します。
果実とは、元の物から産出されるものをいい、法律の定めによって生じるものを「法定果実」、元物から自然に産出されるものを「天然果実」(ジュースの名前みたいですね…)といいます。
法定果実は、不動産の賃料等のこととお考えください。天然果実のイメージとしては、鳥と卵、牛と乳、羊と毛等ですが、不動産の場合、農作物や鉱石が具体例として挙げられることがあります。
法定果実には、物上代位の規定が適用され、抵当権の効力が及びます。
これに対し、天然果実には、原則として、抵当権の効力が及びません。なぜなら、抵当権設定者に占有をとどめたまま使用・収益できるのが抵当権の特徴ですし、被担保債権に不履行がない限り、抵当権設定者自身で不動産を管理して収益を上げた方が、抵当権者にとってもメリットがあるからです。しかし、被担保債権が債務不履行の段階になった場合、そんな悠長なことは言っていられません。そこで、「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ」とされています。
まとめ
以上、説明したことをまとめましょう。
付加一体物や一定の従物には抵当権の効力が及びます。
そして、建物に設定した抵当権の効力は、借地権(従たる権利)に及びます。
しかし、土地に設定した抵当権の効力は、土地上の建物に及びませんし、建物に設定した抵当権の効力は、土地に及びません。
また、天然果実については、抵当権の担保する債権について不履行があったときに、その後に生じたものに及びます。
…今日はこれぐらいにしておきます。次回は、「抵当権」の分野の中の「法定地上権」について説明します。前回と今回学習した知識をざっと押さえておきましょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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