あなぶきハウジングサービスの生山です。
賃貸でお部屋を借りるときには『重要事項説明』というものがあります。携帯電話(スマホ)を契約する時にも、細かい字でビッシリと書かれた説明書を渡されて、サインしてから契約しますよね。(読む読まないは別として…)
賃貸契約でも同様に『重要事項説明書』という書類をもとに説明が行われますが、この重要事項説明は「なんとなく聞く」のではなく、「しっかりと」聞いてください!しっかりと聞いていないと契約後にトラブルになる可能性があるからです。
今回は、実際の重要事項説明書に書いてある項目ごとにポイントを説明していますので、実際の重要事項説明書と比べながら読んでいただくと分かりやすいかもしれません。
分からないことは、ついそのままにしてしまいがちですが、きっちりと理解したうえで契約をして、契約後に「こんなはずじゃなかった…。やめておけばよかった…。」とならないようにしてくださいね。
重要事項説明とは
最初に「そもそも重要事項説明とは何なのか」というお話をします。
重要事項説明は契約の前に物件の詳細や契約条件について「重要事項説明書」という書類をもとに口頭で行われる説明のことです。契約後のトラブルにならないために行われるのですが、この重要事項説明は法律で定められたことです。
宅地建物取引業法(たくちたてものとりひきぎょうほう)という法律で、宅地建物取引士という資格を持った人が重要事項説明書を渡して契約までに説明することになっています。
宅地建物取引士証という資格証を提示して説明することになっていますので、資格証の提示がなかったり重要事項説明自体が無かったりすれば、その不動産会社は法律違反です。
ここでのポイントは、重要事項説明は「契約までに行われる」ということです。つまり、重要事項説明を受けてから契約をするかどうか判断してもよいということですね!
重要事項説明で気をつけたいこと
重要事項説明で一番大切なのは、「書いてある内容をしっかりと理解して、あやふやにしておかないこと」です。賃貸契約後のトラブルで多いのが「契約時に聞いていなかった…」「聞いたかもしれないけど良く分かっていなかった…」ということです。
重要事項説明書には専門用語がたくさんでてきます。「これは専門用語だから伝わりにくいな」と思って分かりやすく説明してくれる人ならいいですが、不動産会社の人は、業界にドップリ浸かり込んで、そもそも何が専門用語なのか自分でも分かっていない人もたくさんいます。分かりにくいこと、曖昧なことは分かったような気になって返事をするのではなく、遠慮せず、恥ずかしがらずにどんどんと聞きましょう!重要事項説明書に書かれていることは、納得がいくまで説明してもらって十分に理解しておきましょう。
宅建建物取引業者・宅地建物取引士とは
宅地建物取引業者(宅建業者)というのは不動産会社のことです。余談ですが不動産業=宅建業ではありません。不動産業は仲介だけでなく、マンション管理、貸しビルなどの業種も含まれますが、宅建業は「自らが行う宅地や建物の売買」や「売買・賃貸を行うときの代理や媒介」を業として行うもののことをいいます。
宅地建物取引業をするためには国もしくは都道府県の免許が必要です。(2つ以上の都道府県に事務所を設置する時は国土交通大臣の免許、1つの都道府県内に事務所を設置するときは都道府県知事の免許です。)
宅地建物取引士(宅建取引士)とは、宅地建物取引士という国家資格に合格して都道府県知事の登録を受けた人です。どこの不動産会社にも必ず宅建取引士というプロがいて、宅建取引士でないと重要事項説明をしてはならないことになっています。
建物の表示
ここには契約する建物のことが記載されています。
(マンション名、部屋番号、住居表示、地番、床面積、間取り、構造、新築時期、交通の便など。)
住居表示と地番
住居表示というのは住所のことで、「住居表示に関する法律」という法律にもとづき、各自治体が定めているものです。地番というのは「不動産登記法」という法律にもとづいて定められた土地の番号のことです。賃貸で住むときも住居表示=住所のことなので覚えておく必要がありますが、地番まで覚えておく必要はないと思います。
交通の便
交通の便については、「○○駅徒歩○分」といった記載があります。
不動産の広告では徒歩1分を80mで換算することになっています。徒歩5分と書いてあれば400mということです。ちなみに自転車は1分何メートルといった決まりはありませんが、一般的には1分200~250mといわれています。(時速12~15キロ、意外と早いんですね!)400メートルでしたら自転車で2分弱ということです。
貸主の表示
貸主=所有者ではありません。貸主と所有者が違う物件もあります。貸主と所有者が違うケースはこんな感じです。
・所有者Aさんが不動産会社Bを代理人として賃貸を任せている。
・所有者Aさんから不動産会社Bが一括して借り上げて又貸ししている。
登記簿に記載された事項
「甲区欄」に「所有権に係る権利に関する事項」、「乙区欄」に「所有権以外の権利に関する事項」が記載されています。
「甲区欄」の「所有権に係る権利に関する事項」が「無」となっていれば問題ありませんが、「有」となっているときは差押登記や仮登記をされている可能性がありますので要注意です。
「乙区欄」の「所有権以外の権利に関する事項」には抵当権や地役権等が記載されます。
ローンがあれば、銀行等が抵当権者として設定されています。
法令に基づく制限の概要
当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か
簡単な言い方をすれば、「物件が造成宅地防災区域という区域内にあるか、区域外にあるか」です。地震等の災害が発生した際に崖崩れや土砂災害が発生する恐れがあるところは、宅地造成等規制法という法律に基づいて造成宅地防災区域に指定されることがあります。区域内であれば災害の際に被害が出る恐れがありますので、十分に説明を受けましょう。
当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か
これも造成宅地防災区域と同じで、土砂災害防止対策推進法(正式名はもっと長い!)という法律に基づいて、長雨、大雨等により土砂災害が発生する恐れのある地域が「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」に指定されることがあります。特別警戒区域の方がより危険性が高い、という認識でいいと思います。これも、もし区域内であれば十分に説明を聞いておきましょう。
当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か
これも土砂災害警戒区域と同じで、津波防災地域づくりに関する法律という法律に基づいて、津波による災害が発生する恐れのある地域が「津波災害警戒区域」「津波災害特別警戒区域」に指定されることがあります。土砂災害と同じで特別警戒区域の方がより危険性が高い、という認識でいいと思います。もし区域内であれば十分に説明を聞いておきましょう。
造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域のいずれかに該当した場合は、契約をするかどうかの大きな判断基準になると思います。これらの説明をすることは宅建業者に義務付けられていますが、万一説明が無かった場合は必ず確認してくださいね。
施設・設備の状況
マンションの施設(駐車場、駐輪場など)のことや設備(エアコン、ガスコンロなど)のことが書かれています。駐車場や駐輪場を利用する場合はその申請方法や金額、区画などを聞いておきましょう。ファミリー向けの物件でも「自転車は1住戸につき1台まで」などといったルールが決まっているところもあります。
気を付けておきたいのは室内の設備です。原則として、『設備が壊れたら貸主(大家さん)の負担で修理(もしくは取替)をする』ことになっています。(借主が故意に(わざと)壊したものは除く。)
つまり、「設備」となっているものは壊れても直してもらえますが、「設備ではないもの」は借主が修理費用を負担する場合もあります。「設備ではないもの」があるパターンとしては、以前の入居者が退去するときに置いて行ったエアコンや照明器具やガスコンロなどがあり、それをそのまま次の入居者が使えるようにしているケースです。壊れたら撤去費用や修理費用は借主が負担するという契約になっていることがありますので、何が設備で何が設備ではないのかをはっきりと確認しておきましょう。
石綿使用調査結果の記録に関する事項
平成18年に宅建業法が改正され、この項目が追加されました。当時テレビや新聞で話題になったアスベストのことです。アスベストは石綿と呼ばれる鉱物繊維で、昔は建築資材としてよく使われていたようですが、人体に悪影響を与えることが判明し、使用が制限されるようになりました。(飛散する際にリスクがあるとされており、飛散しないように使われていれば、必ずしも危険というわけではありません。)ここでは石綿を使っているかどうか、ではなく『石綿使用調査をしているかどうか』が記載されています。宅建業者は、その物件で石綿使用調査をしていればその内容を説明する必要がありますが、石綿調査をしなければならないわけではありません。調査結果記録が「無」となっていれば、石綿が使われているかどうかは分かりません。この調査を行うときは所有者(大家さん)の負担で行うこととなりますが、比較的新しいマンションではそのリスクも少ないことから、調査を行わないことにしたマンションも多いと思います。
建物の耐震診断に関する事項
建物の耐震診断についても、『耐震診断をしているかどうか』が記載されています。宅建業者は、その物件で耐震診断をしていればその内容を説明する必要がありますが、耐震診断をしなければならないわけではありません。また、耐震診断の説明は旧耐震基準の建物が対象となります。1981年6月に建築基準法が改正され、以降建築確認を受けた建物は新耐震基準ですが、それより前に建築確認を受けた建物は旧耐震基準です。自分の借りる物件が旧耐震基準なのか、新耐震基準なのか確認しておきましょう。
用途その他利用の制限に関する事項
貸室(借りるお部屋)の用途は基本は「住宅」ですよね。「住宅に限る」という用途の制限がある物件を事務所として使用してはいけません。
利用の制限は「アレはしてもよいコレはダメ!」といったことが書かれており、借りる前にしっかりと把握しておかないと後々トラブルになってしまうこともあります。
代表的なモノが「ペットの飼育」に関する制限です。犬はダメ、猫はダメ、小鳥や熱帯魚はOKといったようなことです。
ところで「ペットの飼育は不可」としか書かれていない場合、ハムスターを飼うのもダメなんでしょうか?基本的にペット飼育不可の物件がペットを禁止にしている理由は、他の居住者の迷惑になる、部屋が汚れる、臭いが付く、といったところです。
ペット飼育不可の物件でも「ハムスターとか小鳥ならいいよ」と言ってくれるところもあるかもしれませんので、気になるようでしたら事前に確認しておきましょう。
注意しておかなければならないのが、借りるお部屋が「分譲賃貸」だった場合です。
(分譲賃貸??なんのこと?と言う方は下の記事で説明していますので参考にしてみてくださいね。)
→分譲賃貸を探している方必見!分譲賃貸を借りる前に知っておきたい3つのポイント。
分譲マンションではペットが飼育できる物件でも非常に細かくルールが定められていることがあります。また分譲マンション自体はペットを飼ってもいいマンションでも、その部屋の大家さんがダメと言えばペットを飼育することはできません。
他に楽器の演奏についてのルールが決められていることもあります。楽器についても分譲マンションの場合は「20時以降は禁止」といったように細かいルールがあったりします。他にも「石油ストーブの使用は禁止」「喫煙は禁止」など、その物件で利用が制限されている事柄があれば記載されますが、気になったことは聞いて、あやふやにしておかないようにしましょう。
家賃および家賃以外に授受される金額
毎月の家賃・共益費・駐車場代・駐輪場代、契約時に必要な敷金・礼金・仲介手数料・火災保険料、更新の際に必要な更新料等について記載されています。それぞれの費用がどういったものなのか、というのは下の記事で細かく説明していますので、よければ参考にしてみてください。
敷金およびその他の一時金の精算に関する事項
契約時に支払った敷金の精算に関することが記載されています。敷金の精算は賃貸でトラブルになりがちな項目ですので、しっかりと確認をしておきましょう。「ハウスクリーニング代は敷金から控除する」とか「畳の表替え費用は敷金から控除する」とか物件によって異なりますので、できるだけ詳しく聞いておきましょう。
契約の種類、期間等
まず、気をつけておきたいのが契約の種類です。大きく「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。普通借家契約は更新をすることができますが、定期借家契約では再契約できないものもあります。普通借家契約と定期借家契約については以下の記事で詳しく説明していますので、ご参考にしてくださいね。(3分で分かります 笑)
・・・読んでいただけましたか?
定期借家契約では、平成28年10月1日~平成30年9月30日(2年間)といったように期間が定められています。もし契約予定の物件が定期借家であれば、再契約できるのかどうかを確認しておきましょう。(ずっと住むつもりでも住めない場合もあるからです。)普通借家契約でも同じように契約期間が定められています。ただ、普通借家契約では更新ができます。更新のときには更新料や更新手数料が掛かりますので、その内容もあわせて確認しておきましょう。
まとめ
最後に重要事項説明で聞いておくべきポイントをまとめてみました。言い換えれば“賃貸で部屋を借りるときには事前に確認してから契約したほうが良いポイント”です。
所有権に掛かる権利に関する事項が無いか
重要事項説明書の「登記簿に記載された事項」を見れば分かります。「有」となっていたら差押登記や仮登記をされている可能性がありますので要注意です。
旧耐震であるか新耐震であるか
旧耐震基準で建てられた物件がダメ、という訳ではありませんが、旧耐震基準なのか新耐震基準なのか、知ったうえで契約したいですね。旧耐震基準でも耐震工事をされた物件もありますので確認しておきましょう。
法令に基づく制限の概要
契約予定の物件が造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域(つまり災害が発生する恐れのある区域)のいずれかに該当した場合は、契約をするかどうかの大きな判断基準になりますので必ず確認しておきましょう。
設備・施設に関すること
駐車場や駐輪場に関することの確認(使用料の有無・金額、使うときの申請方法、ルール)、室内については何が設備で何が設備でないのか(壊れたときに貸主・借主どちらが修理費用を負担するか)を確認しておきましょう。
用途や利用制限
契約予定の物件が分譲マンションのときは、特にそのマンション独自のルールを知っておく必要があります。賃貸マンションでもペットや楽器に関するルールがあることもありますので事前に確認しておきましょう。
敷金の精算に関すること
敷金の精算はトラブルになりがちな項目です。物件によって異なりますので、できるだけ詳しく聞いておきましょう。
短期解約違約金
契約後に転勤等ですぐに解約する可能性がある方は、必ず確認しておくべきです。「1年未満の解約は違約金○ヶ月」という物件もあります。
重要事項説明には専門用語も多く、分かりづらい部分もたくさんありますよね。重要事項説明のポイントは借りる物件のこと、契約のことについて、後々「こんなはずじゃなかった」「聞いていなかった」とならないように事前にできるだけ深く理解しておくことだと思います。分からないことはとにかく聞いて、理解したうえで契約するようにしてくださいね。
生山 亨
分譲マンションの管理担当(フロント)を経て賃貸仲介・賃貸管理・売買仲介・総務業務を経験。長年やってきた賃貸業務、中でも特に空室の改善、対策は得意分野です。現在は、あなぶきスペースシェアにおいて宿泊事業・マンスリー事業を行っています。
保有資格:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者
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