株式会社ツツミワークス神奈川支店の中山竜(なかやまりょう)です。
マンションの資産価値の維持・向上を行っていくには、定期的なメンテナンスが必要となってきます。大規模修繕工事が終わったからといって、そのメンテナンスを怠ってしまうと、せっかく大切な修繕積立金を使って大規模修繕工事を行ったのに、無駄になってしまいます。そうならない為にも、定期的なメンテナンスを行い、マンションの資産価値の維持・向上を行っていきましょう。その定期的なメンテナンスというのがアフター点検になります。
大規模修繕工事完了後の施工会社によるアフター点検は、大規模修繕工事竣工後に提出される各工事保証書及び定期点検誓約書に基づいてアフター点検を行っていきます。アフター点検を行う年数は1年目・2年目・5年目・10年目となります。
前回、アフター点検1年目点検及び2年目点検の流れについて、ご説明させて頂きました。
今回は5年目のアフター点検、10年目のアフター点検について、具体的にどういったところをチェックしていけば良いかのお話となります。
また、前配信者が2021年8月から2022年7月までの1年間にわたり配信を行った『大規模修繕工事準備編から実施編まで』をストーリー仕立てで充実した内容が盛り込まれていますのでまだお読みでない読者様はぜひ、第一回目のブログ【一体なにからはじめればいいの?】から読んで頂ければと思います。
5年目のアフター点検
5年目のアフター点検は、先に行いました1年目のアフター点検及び2年目のアフター点検比べ、とても重要なアフター点検になってきます。理由としては、大規模修繕工事で行った工事項目のほとんどの保証が満了の年数になるからです。保証が切れる項目は下記の内容です。
・下地補修工事
・シーリング工事
・外壁塗装工事(天井塗装の保証は2年なので今回からは対象外となります。)
・防水工事(バルコニー防水工事・廊下や外部階段防水工事)
※屋上防水工事については、工事内容によりますが、一般的に10年目までの保証書が発行されています。但し、防水層の保護塗装のみの施工であれば、対象外となります。
以上の工事項目が5年目で保証が満了になるため、よく点検を行いましょう。
各項目のチェックポイント
屋上・・・防水層からの漏水・防水層の膨れ。
外壁・・・張替えたタイルからのエフロレッセンス(白華現象)・仕上げ塗装の剥離。
共用廊下・・・壁の仕上げ塗装の剥離・排水溝防水層・床シートの膨れや剥がれ。
鉄部塗装について
5年目点検で管理組合様に検討して頂きたいこととして、2年目で保証期間が満了を向かえている、PS扉などの鉄部塗装となります。
鉄部塗装の一般的な塗替えの周期となりますのが、4年から6年とされています。マンションの立地条件によっても劣化の進行具合は異なってきますが、鉄部塗装材の寿命が5年とされていて、徐々に塗装の機能が低下(錆の発生)していきます。
塗装をしないことで起きる大きな問題として2点あります。
まず1点目が、PS扉などの鉄部に錆が発生します。
錆が発生することにより、PS扉や各鉄扉が開きにくい、または閉まらなくなったなどの扉としての機能が低下してきます。開かないまたは閉まらない扉を無理やり開け閉めしますと、扉が曲がってしまった、扉の一部が破損してしまったなど、補修や塗装だけでの処理では対応できなくなり、扉などの取り替え対応を行わないといけなくなります。そうなると、塗装を行うより費用がはるかにかかってしまいます。
2点目の問題が、マンションの美観を大きく損なってしまいます。鉄部塗装の機能が低下して、錆が発生します。雨の掛からない場所であれば、錆の発生は少ないと思われますが、雨の掛かる外部に面している箇所だと錆が発生している箇所が多くなり、建物全体を暗くさせてしまいます。
このような問題を回避するためにも、このタイミングで鉄部塗装の塗替えの検討をお勧めいたします。
また、錆の発生以外でも塗替えの検討をお勧めしたい現象があります。PS扉などの鉄部の表面を触った時に、手に粉が付きます。このような現象が起こったら塗替え行う合図と考えて下さい。これは、チョーキング現象と言い、塗料の中に含まれる樹脂成分が太陽の光や紫外線、雨などにより劣化し、塗料の顔料が表面にチョークの粉のように現れてしまう現象となります。
このような現象が現れたら鉄部の塗替えを検討して下さい。
10年目のアフター点検
アフター点検の最後の年次点検になります。
10年目のアフター点検では、保証対象箇所が屋上防水、ルーフバルコニー防水などの屋根の部分になってきます。今回のアフター点検で不具合箇所を見逃してしまうと、居室への漏水に直結しますので、防水層に亀裂がないか、剥がれているところはないかとよく点検を行いましょう。
まとめ
今回5年目のアフター点検・10年目のアフター点検でのチェックポイントをご説明させて頂きました。
大規模修繕工事は現在、12年から15年周期で実施されることが一般的になっています。次の大規模修繕工事まで10年以上の期間が空きます。その間、どのようなマンションでも、風雨や紫外線にさらされ続けて行き、常に劣化は進行していきます。大規模修繕工事が完了後の定期的なメンテナンスを怠っていると更に劣化を加速度的に進行させていきます。
但し、定期的なメンテナンスを次第では劣化の進行を緩やかにし、資産価値の維持・向上に繋げることが可能となります。
ここで補修してもらえないままだと劣化は進行し補修の範囲も広くなり、挙句、自分たちの修繕積立金を使って補修しなければならなくなります。補修する箇所が少なければ大規模修繕工事全体の費用に占める割合は小さくて済みますが、補修箇所が多い場合には大きな金額になるでしょう。このようにアフター点検を有効に活用することは大規模修繕工事の費用削減、将来的には修繕積立金の節約にもつながるため、管理組合として見過ごせない大切なものといえます。
中山竜
中山 竜(なかやま りょう)
高知県出身。七夕生まれ。
2011年入社。
施工管理12年。マンション改修一筋で努めてきました。
【去年の自分よりも成長する】をモットーに日々学ぶことを大事にしています。
皆様のお役に立てる情報を発信できるよう頑張ります!!
保有資格:1級建築施工管理技士
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