役員のなり手不足をどう解決するか② │ マンション管理組合

田中一直

「役員のなり手不足をどう解決するか」について、今回は前回ご紹介しました以下の3つの対応策について、その具体的な内容を書きたいと思います。

1)理事長の資格要件の緩和
2)役員人数の見直し
3)理事長の外部委託・管理者方式の採用

役員のなり手不足をどう解決するか①│マンション管理組合

①理事長の資格要件の緩和

管理組合理事長の資格については、多くの管理組合では管理規約で以下の2つを要件としている場合が多いのではないしょうか?

当該マンションに実住していること
当該マンションの区分所有者であること

管理組合理事長とは、その管理組合の代表者であり、マンションのあらゆることに関係する要職であるため、実際にマンションに居住していて所有している人が管理組合の理事長となり指揮をとることは、非常に意義のあることだと思います。
しかし、近年の空家増加や賃貸住戸(区分所有者はマンションに居住せず、第三者等に貸している状態)の問題が顕著となっているマンションにおいては、上記の要件を満たす人が少なくなったため、同じ人がやむを得ず理事長などの役員を引き受けなければならない状況となっています。
前回ブログにも書きましたが、管理組合理事長の資格要件に関しては法令上は何の規定もありません。従って管理組合ごとのルール(管理規約)を改定することにより、上記2つの要件などを緩和または撤廃するなどして、理事長の資格要件を変更することができます。
実際に役員のなり手不足に直面しているマンションでこの方法を採用するケースも多くなってきています。

ただし、仮に上記2つの要件を同時に廃止しますと、端的に言えば、マンション関係者以外の誰でも理事長に就任できることになります。役員のなり手不足の解決にはなりますが、区分所有者以外の人や非居住者の人が理事長となると、マンションの実態をよく理解していない場合には、管理組合運営が区分所有者の意図しない方向に進んでしまったり、また、マンションの実態にそぐわない運営となってしまうことも考えられます。

そこで、理事長の資格要件を緩和や廃止に向けた検討を進める際には、管理規約等で規定された理事長の職務や権限についても見直すことをおすすめします
管理規約でマンションに実住する区分所有者が理事長に就任することが規定されている場合には、そもそもその資格要件を満たした人が理事長に就任することを前提に理事長の職務や権限が規定されています。
このため、その資格要件以外の人を理事長とする場合には、職務や与えるべき権限が適正がどうかを再度見直すことが必要だと思いますので、資格要件と職務・権限のバランスを鑑みて検討することをおすすめします。
なお「③理事長の外部委託・管理者方式の採用」についても、理事長の資格要件に実住する区分所有者が規定されている場合には、上記と同じように資格要件の変更が必要となります。

②役員人数の見直し

管理組合の役員(理事・監事)の人数については、実はマンション(管理組合)ごとにかなり違いがあります。100戸で20名の役員を選任している管理組合もあれば、同規模で5名の役員で運営している管理組合もあります。役員数がとても多いため、理事会の出席者と総会の出席者がほとんど同じという管理組合もありました。

役員の人数については、多すぎるのも少なすぎるのも問題ですが、わたくし個人の考えとしては、どちらかと言えば少数精鋭ではありませんが役員の人数についてはあまり多くないほうが、一人ひとりの意識も高く、スピード感を持った意思決定がなされることが多いと感じています
一概には言えませんが、役員数が多い場合には、理事会そのものが定足数に満たないため成立しなかったり、スケジュール調整に時間がかかり、理事会がなかなか開催できなかったりという状況がしばしば見受けられます。
役員の適正な人数についての設定は個々のマンションごとに事情により難しいと思いますが、一般的な管理会社に管理を委託している管理組合の場合では、100戸程度までのマンションであれば、3~5名の役員で十分機能すると個人的には感じています。
人数ではなく、各役員が何をするかを明確にすることが大切だと思います。実際に少ない役員で運営している管理組合では、ぞれぞれの役員がすべきことが明確で非常に効率的な運営をされていました。

皆さんのマンションにおいても、役員(理事・監事)の職務について、改めて見直すことにより、現在の役員数が適正かどうかを検討してみてはいかがでしょうか。

次回は「③理事長の外部委託・管理者方式の採用」について、その課題と運用の具体例についてご紹介いたします。

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田中一直

あなぶきハウジングサービス 田中 一直(たなか かずなお)
香川県出身。あなぶきグループに平成6年に入社。主に新築マンションの販売、中古マンション・戸建などの仲介業務を経て、その後、マンション管理業務に約20年従事しています。マンション管理組合の運営補助だけでなく、お客さまのマンション生活が安心で快適であるため、常にプラスアルファの提案活動を心がけています。
資格:マンション管理士・マンション維持修繕技術者
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