今回は当社が管理するマンションで実際に起こった民泊問題の事例と対策をご紹介します。
目次
- トラブルの発生状況について
- 管理規約改定の実施
- 対策と対応のポイント
- まとめ
トラブルの発生状況について
国土交通省が5年に1度、マンションの管理状況を調査しています。
上のグラフはその調査の中の、マンションで発生したトラブルの状況です。居住者間のマナーが平成11年から見ても、もっともトラブル件数が多くなっています。
今回ご紹介する民泊問題も居住者間のマナーに含まれるのではないでしょうか。
問題が発生したのは、180世帯の品川区にあるマンションでした。
名称:Aマンション
戸数:180世帯
住所:東京都品川区
環境:駅から徒歩5分程度で好立地
居住者層:ディンクス~ファミリー ※ディンクスとは、共働きで子供を意識的に作らない・持たない夫婦。
2015年7月、あるお部屋の区分所有者の変更があり、男性(個人)の名義となりました。
~問題発生の予兆~
区分所有者の変更に際し、お部屋のリフォーム申請がありました。
一般的なフローリング工事等に加え、この男性からは
「玄関扉にテンキー(暗証番号式のカギ)を取り付けたい。」と理事会に要望がありました。
テンキーを設置したい明確な理由がなかったので理事会は
「合理的な理由があれば承認しますよ。」と伝えたところ、
男性からは「承認に時間がかかるようなら結構です。」との回答が返ってきました。
2015年12月、マンションの居住者から理事会へ「○号室に多数の外国人が出入りしている。旅行者を宿泊させているのではないか。」と報告がありました。
この報告を受け理事会はすぐにこの部屋の所有者である男性へ問合せをしましたが、「通常に賃貸しており、民泊利用の事実はない。」との回答でした。
しかし、しばらくするとマンションの居住者からの報告が相次ぎました。
「深夜に大きな声で騒いでいる。」
「共用廊下にゴミが置かれている。」
「エントランスでトランクバックの荷物を広げて整理している人がいる。」
民泊利用の可能性が高まったため再度所有者の男性に問合せしたところ、民泊利用していることを認めました。
しかし男性は
「現在のマンションの管理規約は民泊利用を規制しているものではないと解釈しているので、民泊利用を続けていくつもりだ。」と主張してきました。
Aマンションの管理規約(一部抜粋)
(専有部分の用途)※Aマンションの管理規約は、標準管理規約に準拠したもの。
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住居として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
男性はこの管理規約の条文を「他の用途ではなく、住居として使用しているので問題ない。」と解釈していました。
2015年12月に行われた国土交通省の石井国土交通大臣は定例会見にて
「第12条は民泊を実質的に禁止としているため、標準管理規約を採用している分譲マンションで民泊を行う場合、規約の改正が必要。」との見解を示しています。
管理規約改定の実施
2016年5月、Aマンションでは通常総会にて、 民泊・シェアハウス禁止の明確化を目的とし、管理規約一部改定の議案を上程しました。
結果賛成多数で承認され、規約改訂を行いました。
2016年6月管理規約が改訂されたことを所有者である男性に伝え、民泊利用を今後一切しないよう厳重に申入れをおこなったところ、
「7月末を期限として民泊利用を行わない。」ということで合意。文書での取り交わしを行いました。
対策と対応のポイント
マンション内での情報共有
マンション内で情報共有できる環境が整っていること(コミュニケーションが十分にとれていること)が、問題の早期発見と解決に繋がります。
近隣の方との付き合いが希薄化する昨今ですが、「あの部屋は民泊利用しているんじゃないか…。」と感じることがあれば、すぐ理事会へ報告できる環境を作っておくことが大切です。
管理規約の整備(禁止事項の明確化)
今回の事例でご紹介したように、民泊やシェアハウスとして使用されないためのルールづくりを行いましょう。
民泊は民泊の斡旋サイトを利用しているケースがほとんどです。
例)Airbnb エアビーアンドビー等
マンション名や部屋番号も確認ができるので、このようなサイトに自分のマンションが掲載されていたら間違いなく民泊で利用しているでしょう。
民泊やシェアハウスは建築基準法に適合しない改修が行われ、火災等が発生した場合安全面で大きな問題となる可能性もあります。
まとめ
大きな問題が発生する前に、問題の早期発見・解決にマンション管理会社と取り組むことが大切です。
とはいっても、2020年の東京オリンピックに向けて、外国人旅行者数は今よりもさらに増加していきます。
民泊利用を可能にすることで、マンションの管理費収入を増やす対策を行っているマンションが除々に増えてきていることも事実です。
マンションの1室を民泊化することを全て禁止するのではなく、空室が多いマンションであれば管理組合でその部屋を所有し、民泊運営していくことも視野に入れれば、今後のマンションの管理運営の仕方も変わってくるのではないでしょうか。
松井 久弥
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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