日本では新築マンションの供給がピーク時に比べて少なくなったと言われていますが、それでも平成27年度において約90,000戸が新規供給されています。これだけ多くの新築マンションがある中で、「管理費はどのように決まっているのか」を知らない方が多いように思います。今回は、新築マンションにおける管理費の決め方についてご紹介します。
目次
- そもそも管理費って何?
- 管理費は平等に負担するもの
- 敷地および共用部分等の管理に要する経費とは
- 具体的に管理費を計算してみましょう
- 駐車場料金と管理費の関係
- 安ければ良い?
- まとめ
そもそも管理費って何?
国土交通省の標準管理規約によると、管理費とは、所有者が負担し、①敷地および共用部分等の管理に要する経費に充てるために納入するもので、②管理費の額は、各所有者の共用部分の共有持分に応じて算出する、と記載されています。
もう少し平たく言いますと、マンションの敷地や共用部分を適切に維持管理するためには、いろいろとお金が必要となるため、全所有者から管理費という名目でお金を平等に徴収する、ということです。
管理費は平等に負担するもの
管理費は、各所有者の共用部分の共有持分に応じて算出します。この割合は、通常、部屋の広さで決まります。
例えば、次のような全4世帯のマンションがあった場合の敷地および共用部分の持分割合は、どうでしょうか?
部屋が広い方が、全体に対する割合が大きいため、共有持分の割合が多くなります。
管理費は、この共有持分に応じて負担するので、敷地および共用部分の利用頻度に係わらず、多くの持分を持っている所有者(=専有部分が広い所有者)が、多くの管理費を負担することになります。
具体的には、管理費の単価を出してから(計算方法は後述)、各部屋の専有面積に掛けて算出することで、結果として、共有部分の共有持分に応じて管理費を算出したことと同じになるのです。
各所有者の共用部分の共有持分=部屋の広さ=管理費の額
敷地および共用部分等の管理に要する経費とは
次に、マンションの敷地や共用部分を適切に維持管理するために必要な費用についてご説明します。以下は、あるマンションにおいて、1ヶ月に必要となる敷地および共用部分等の管理に要する経費です。
このように、マンションの維持管理には費用が必要となりますので、これを賄うために、管理費として全所有者からお金を徴収するのです。
具体的に管理費を計算してみましょう
それでは、次の事例をもとに、実際の管理費を計算してみます。
このマンションの維持管理費用として、月額388,000円が必要となります。
一方、全15世帯の総専有面積が1125.00㎡ですので、1㎡あたりの単価は、(388,000÷1,125)=344.8円となり、切り上げて345円とします。
この単価をそれぞれの住戸の専有面積に掛けて、管理費の額を算出すると、以下のようになります。
15世帯の所有者が、部屋の広さ(=共用部分の共有持分)に応じて、平等に費用を算出すると、このようになるのです。
駐車場料金と管理費の関係
ところで、多くのマンションには、駐車場があり、その使用料は管理組合の管理費収入として計上されています。
上記の例で、平面駐車場が6台(10,000円/台)があり、稼働率100%計算で管理費収入として計上された場合、管理費が変わってきます。
分かりやすく言うと、月388,000円の維持管理費用を賄うために、管理費だけでなく、駐車場使用料も繰入できることになります。
(尚、この駐車場が機械式駐車場の場合には、別途メンテナンス費用が発生しますが、今回は平面駐車場で想定しています)
【駐車場がない場合】
維持管理費用388,000円 < 「全員から徴収する管理費」
【駐車場がある場合】
維持管理費用388,000円 < 「全員から徴収する管理費」 + 「駐車場使用料」
駐車場使用料が6台×10,000円=60,000円であれば、管理費で328,000円以上を徴収すれば、合計で維持管理費用388,000円を賄うことができますので、
管理費1㎡あたりの単価は、(328,000÷1,125)=291.5円となり、切り上げて292円となります。
駐車場がない場合に比べて、月額で約4,000円も管理費が安くなりました。
駐車場使用料以外にも、自転車・バイク置場使用料や専用庭使用料等があり、管理費会計に繰り入れる場合には、管理費の金額に影響を与えることになります。管理費以外の収入が増えることにより、必然的に管理費が下がるということですね。
安ければ良い?
以上のような計算方法により管理費を算出していきます。実際には、共用電気代の算出など、かなり細かく計算していくのですが、基本は、マンションの維持運営に必要な支出を算出し、それを賄うための収入として管理費を算出していくようになります。
それでは、管理費は安ければ安いほど良いのでしょうか?
管理費はそのマンションの維持運営に必要な費用により決定しますので、マンションのスペックや管理仕様に見合った適切な金額が必要となります。本来必要な管理費よりも少ない場合は、どこかにしわ寄せがきているのかもしれません。
まとめ
普段はあまり気にすることのない管理費の算出方法を知ることは、適切なマンション管理の第一歩だと思います。自分のマンションスペックを知り、管理の仕様がしっかり定まっていれば、自ずと適切な管理費が設定されますので、一度、点検してみてはいかがでしょうか。
松井 久弥
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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