マンション管理会社のM&Aに関する3つのスキーム

松井 久弥 松井 久弥

こんにちは。あなぶきセザールサポート松井です。

マンション管理会社のM&Aにおける代表的なスキームについてご紹介します。

一概に管理会社のM&Aと言っても、スキームによって進め方は大きく異なりますので、案件ごとにスキームの判断をしていくことになります。

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目次

  • 売主と買主の事情
  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 会社分割
  • まとめ

 

売主と買主の事情

M&Aの当事者である売主と買主の思惑は一般的に相反する関係にあるため、M&Aのスキームに対する考えに違いが生じるケースがあります。例えば、売主は手続きが簡易で手取りを最大化できる場合が多い「株式譲渡」を希望する一方、買主は、不要な事業・資産や簿外債務の引継ぎリスクを避けるために「事業譲渡」を希望する場合があります。M&Aのスキームによって譲渡価額やスケジュールも変わってくるため、当事者双方にとって重要な選択となります。

では、マンション管理会社のM&Aではどのスキームが良いのでしょうか?

第一には、譲渡企業(売主)の状況(会社規模や従業員数、経営状態や売却理由、資産内容等)を踏まえて総合的に判断することになります。以下に代表的な3つのスキームと判断するポイントについて記載します。

株式譲渡

M&Aにおいて最も多く用いられるスキームが株式譲渡です。

メリット

デメリット

・対象会社を存続させることができる・手続きが簡易(債権者同意が不要)・従業員を承継できる・売主の手取りが多い(税負担少ない) ・全事業を引継ぐ(不要な事業・資産も)・簿外債務も引継ぐ(係争中の訴訟等)・買主の買収資金が多くなる場合がある

 

これをマンション管理会社のM&Aに置き換えると、以下のようになります。

メリット

デメリット

・会社名を残して営業を継続できる・管理組合の承認が不要・従業員が引き続き業務に従事する(個別同意が不要) ・マンション管理業以外の事業や所有不動産等も引継ぐ・管理組合との訴訟や個別義務も引継ぐ・法律違反があれば行政処分対象となる

 

以上を踏まえると、株式譲渡によってマンション管理会社のM&Aをおこなう場合、譲受企業(買主)のデューデリジェンス等において、以下の点を確認し、問題がないか(許容できるか)判断します。

・マンション管理業以外の事業がある場合、買主が評価できる事業か(不要な事業があった場合も譲受対象となる)

・資産や負債の評価(所有不動産や借入がある場合も引継ぐ)

・係争中の案件や個別の義務があるか

・従業員に関する詳細(全社員を承継する)

・マンション管理適正化法の違反がないか

 

特に「マンション管理適正化法違反」がある場合には、行政処分(指示処分、業務停止、登録取消)の対象となるため、その時点で株式譲渡のスキームが採用できない場合があります。

 

事業譲渡

次に事業譲渡についての一般的なメリットとデメリットです。

メリット

デメリット

・事業の一部のみ譲渡・承継できる・必要な事業だけ買うため、費用を抑えることができる・簿外債務や義務を承継しない・買主が、のれん代の償却ができる ・承継手続きが煩雑で時間がかかる・従業員の承継には個別同意が必要・取引先をが引き継げない場合がある・売主が、譲渡益に法人税を課税される

 

これをマンション管理会社のM&Aに置き換えると、以下のようになります。

メリット

デメリット

・マンション管理業のみを譲渡できる・必要な事業だけ買うため、費用を抑えることができる・資産・負債・義務を承継しない・買主の節税メリットがある 管理組合の総会による個別承認が必要・時間がかかる・従業員の承継には個別同意が必要・売主は法人税の負担考慮が必要・許認可を引き継げない

 

以上を踏まえて、次のようなケースでは、事業譲渡を採用するメリットがあると思います。

・マンション管理業だけを譲渡したい(譲渡企業がマンション管理業以外の事業も従事している)

・譲渡企業(売主)にマンション管理適正化法の違反がある

・スケジュールや管理組合との関係から、各マンション管理組合の個別同意を得ることができる

 

会社分割(新設分割・吸収分割)

会社分割は、株式譲渡と事業譲渡のメリット・デメリットをそれぞれ含んでいます。

メリット

デメリット

・事業の一部のみ譲渡・承継できる・必要な事業だけ買うため、費用を抑えることができる・手続きが簡易(債権者の同意が不要)・対象事業の従業員を承継できる ・対象事業の簿外債務も引継ぐ・官報に公告が必要

 

これをマンション管理会社のM&Aに置き換えると、以下のようになります。

メリット

デメリット

・マンション管理業のみを譲渡できる・不要な事業は対象外として、費用を抑えることができる・管理組合の承認が不要・従業員が引き続き業務に従事する(個別同意が不要) ・管理組合との訴訟や個別義務も引継ぐ・法律違反があれば行政処分対象となる・債権者保護手続きに官報公告が必要

 

以上を踏まえて、次のようなケースでは、会社分割を採用するメリットがあると思います。

・マンション管理業だけを譲渡したい(譲渡企業がマンション管理業以外の事業も従事している)

・マンション管理適正化法の違反がない

・各マンション管理組合の個別同意を得る時間的猶予がない(対象の管理組合の数が多い)

 

まとめ

マンション管理会社のM&Aを検討する時に、スキームの検討は大変重要となります。譲渡価額やスケジュールにも影響を与えるため、売主と買主、双方の意向を十分に確認して協議を進めていくこととなります。

例えば、マンション管理適正化法違反がある会社であれば株式譲渡ではなく事業譲渡になりますし、各マンション管理組合との間で、重要事項説明会の開催・総会における承認を取ることが困難な場合には事業譲渡が難しいと判断できるのではないでしょうか。

あなぶきグループでは、これまでに、株式譲渡・事業譲渡・会社分割の全てのスキームを経験してきましたが、一番重要なことは、お客様・従業員・取引先に対して、円滑に事業承継をおこない、地域社会に必要とされる商品・サービスを提供し続けられる方法を、売主・買主がそれぞれ考え抜くことであると思います。

 

<参考記事>

マンション管理会社の売却・譲渡(M&A)を成功させるために知っておきたい9つのこと

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松井 久弥

松井 久弥

あなぶきセザールサポート 営業本部:松井 久弥(まつい ひさや)
株式会社あなぶきセザールサポート取締役本部長。
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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