マンション竣工の推移と管理に関する法律のトレンドについて
前回は、区分所有法、マンション管理適正化法についての説明でした。 今回は、マンション管理の50年間のトレンドについてです。
日本でマンションが供給されるようになってから半世紀。第一次マンションブームで造られたマンションも“満50歳”となり、築年数の経ったマンションが増えてきております。
今や国民の約10人に一人が、分譲マンションに居住していると言え、都心部や地方都市では、マンションに住むという居住形態は、むしろ一般的とすら言える状況になりつつあります。マンションの管理に関する考え方や管理のやり方も変わってきました。その時代の管理のトレンドについて考えてみましょう。
目次
- 分譲マンション50年間の竣工の推移(1都3県)
- 分譲マンション50年間の管理に関する法律のトレンド
マンションストックの推移と管理のトレンドを見てみましょう。
分譲マンション50年間の竣工の推移(1都3県)
1都3県における分譲マンションストックは2016年1月時点で5万件を超えています。しかし、その竣工推移は一様ではなく、経済情勢の変化に反応してアップダウンを繰り返しています。
1976年(昭和51年)のオイルショック、1992年(平成4年)のバブルの崩壊、特に、バブル崩壊時の1993年の竣工件数はピーク時より80%のダウンが見られ、1986年からの8年間は深い谷の様相を呈しています。 そして、2008年(平成20年)のリーマンショックなど不況時には大きくダウンしています。
これをマンション管理サイドから見ると、人口の社会増による旺盛な需要に支えられてストックの総数は増え続けています。こうしたダウン時にも、1996年から1975年の10年間は、首都圏への大量流入があり、その受け皿として公団公社の大型団地が数多く建てられることで平均戸数を押し上げています。かたや2006年から2015年間の10年間は建物が高層化し、とりわけ超高層マンションの急増が要因となっています。
1976年から2005年の30年間を見ますと、平均戸数は60戸を割り込んでいるのに対して、竣工戸数は年間1,000戸を超える大量供給が続いています。つまり、小規模なマンションが大量に建設されたわけで、ペンシルマンションはこの時代を象徴する建物形態になっています。
マンション管理サイドから見ると、小規模マンションは管理組合の運営、修繕資金の調達等に不安があるマンションがあり、今後の修繕に課題があります。
大規模修繕の工事時期(周期12年で計算)という観点から見ると、1966年頃のマンションでは第4回目の大規模修繕工事、1979年頃のマンションで第3回目の大規模修繕工事、1992年頃のマンションで第2回目の大規模修繕工事を実施し、2004年頃のマンションで第1回目の大規模修繕工事の対象となります。
分譲マンション50年間の管理に関する法律のトレンド
時代の変遷に合わせて改正を繰り返す法律、 時代の要請にこたえる法律
マンションに縁が深いのは「区分所有法」に、維持・管理のルールを定めた「マンション管理適正化法」があります。最近の法律として「建替え円滑化法」「被災マンション法」などがあります。
これらはすべて管理にかかわる法律です。時代の背景を見ながら、以下のマンション管理に関する法律を見てみましょう。
マンションに関する法律からの視点
- 区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)
一般的な建物の所有関係や利用関係は、「民法」によって規定されていますが、区分所有等の建物の場合、マンション管理に関する唯一の法律として区分所有法があります。区分所有法は、昭和37年4月4日の制定後、昭和58年、63年、平成14年、16年、17年、18年、20年の変更を数えると、合計9回の改正が行われています。
- マンション管理適正化法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)
近年、全国のマンションストック総数が500万戸を超え、居住人口は約1,400万人となり、国民の約1割がマンションに住んでいる状況にあります。マンションは重要な居住形態に関わらず、近年におけるまで十分な法規制が成されていませんでした。
マンションストックの数量的増加により顕在化してきたマンションの管理をめぐる諸問題に対応するため、区分所有法以外の法律、特に、マンションにおける良好な居住環境の確保という見地から国がマンション管理に関与するための新しい法律が必要となってきて、このような背景の下で、平成12年マンションの管理の適正化の推進に関する法律が成立し、翌13年に施行されました。
- 建替え円滑化法(マンションの建替えの円滑化等に関する法律)
マンションに関する法律関係を規律する基本法は、区分所有法ですが、マンションの建替えという場面を考えると、区分所有法第64条の建替えに関する合意だけでは不十分です。建替え実行段階にかかわる法律が必要となります。
そこで、老朽化するマンションの増加や阪神淡路大震災の経験を踏まえ、平成14年に建替え円滑化法(マンションの建替えの円滑化等に関する法律)が制定され、建替えの合意形成がなされたマンションについて、建替事業が円滑に進むような規定を置きました。
- 被災マンション法(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法)
東日本大震災で滅失したマンションを再建する場合の手続きを定めた、被災マンション法(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法)は平成25年7月31日に制定されました。
この記事をお読みになった方で、お住いのマンションは様々だと思います。
そして、高経年マンション、築浅マンション、そして団地形態のマンション、超高層マンション、小規模マンションの管理のあり方も様々です。今回は、分譲マンションの竣工の推移と管理に関する法律のトレンドをまとめてみました。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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