熊本地震から考えるマンション防災の4回目は「本当に必要だった備蓄品<共助編>」についてご紹介します。多くの管理組合では十分な備蓄品がありませんでしたので、今回の地震を機にあらためて整理していきたいと思います。
- 自助と共助
- 玄関扉の破壊に備える
- ライフラインの遮断に備える
- 対策本部の準備
- まとめ
自助と共助
防災の基本として「自らの安全は自らが守る」という「自助」が前提となります。一方で、共同生活をしているマンションだからできる「共助」という備えをプラスすることで、より安心・安全なマンション防災となります。
自助
自宅を安全な空間にすることは自分にしかできないことです。地震の振れの中では誰もが自分の身を守ることしかできません。振れがおさまった時、自分の目の前にある火災を最も早く消すことが出来るのは自分です。けがをした家族の救護を最も早くできるのは自分です。こうした自分の手で自分・家族・財産を助ける備えと行動を自助と呼びます。
共助
震災のような広域災害では地域の防災機関(警察や消防など)も同時にすべての現場に向かうことはできません。かと言って自衛隊など被災地の外からの応援到着には時間がかかります。一方で共同住宅で生活をしているマンションでは住人同士が協力することができるはずです。救出活動も消火活動も早く始めるほど、そして多くの人が参加するほど被害を小さく抑えられます。災害時に円滑に協力するためには普段からの交流が大きな力となります。こうした近隣のみなさんと協力して地域(マンション)を守る備えと行動を共助と呼びます。
玄関扉の破壊に備える
マンション防災第1回の記事でご案内したとおり、地震によって玄関のドアや枠(フレーム)が歪み開閉が出来なくなると、バールを用いて玄関扉を一部破壊して退室する必要がありました。
緊急措置として扉を破壊したことにより玄関の鍵を施錠することができなくなるため、防犯上補助錠を設置しなければなりません。一方、補助錠を購入するための店舗も被災して品薄状態であったため、すぐに補助錠を入手することができませんでした。
地震による玄関扉の開閉障害に備えるためには、耐震丁番の設置が有効です。
ライフラインの遮断に備える
ライフラインが遮断されて一番困る物は水でしょう。水は飲料水だけでなくトイレの使用にも欠かせません。また非常食や非常電源もあれば良いと思います。熊本地震ではガスの復旧に時間を要しましたので、ガスコンロ等もあれば便利でしょう。<自助編>でご紹介したように各家庭である程度の備蓄があれば良いのですが、管理組合でも一定の備蓄をすることでマンション防災はより強固になります。
共助(マンション管理組合で備蓄しておきたい防災用品 ※参考)
飲料水対策(賞味期限が5年ある長期保存水が有効)
必要数計算(初日~1日間対象)1人1日に約2ℓ必要とされていますが、備蓄スペースを考慮して1世帯あたり 2ℓ×2本(合計4ℓ/世帯)
災害発生から数日間(3日間位)は店頭から水や食料が売り切れ状態になり水の入手が困難になります。また水道が復旧しても最初は水道水自体が濁り水なので、しばらくは飲料水として使用できません。
トイレ対策(非常用便袋)
必要数計算(初日~1日間対象)1人1日に最低3回、1世帯あたり3人居住 3人×3袋(合計9袋/世帯)
水道停止に伴いトイレが流せない、使用できない状況になります。また、排水管の破損により排水不良に陥る場合もあります。
非常食対策
レトルト食品や缶詰、アルファ米などを1日分程度備蓄しておきましょう。
必要数計算(初日~1日間対象)1世帯3人×3食(合計9食/世帯)
救助・避難対策
各家庭では備蓄が難しい小型救助工事や簡易担架、階段避難車はマンション管理組合で準備しておくことが望ましいでしょう。
安全対策(立ち入り禁止エリアもある)
建物の被害状況によっては立ち入り禁止エリアも発生します。マンションには小さいお子様が住んでいたり、外部からの来客もありますので、立ち入り禁止を表示する備品があれば良いと今回の地震を通じて思いました。
その他
懐中電灯・多機能ラジオ・カセットコンロ・やかん・発電機・延長コード・電池(単3)・油圧ジャッキ・
対策本部の準備
震災後は様々な情報を入居者に案内する必要がありますが、被災状況によっては管理組合の理事会が正常に機能しないことも考えられます。マンション現地で対応できる有志による対策本部を立ち上げ、入居者への各種案内や復旧対応の準備にとりかかるケースも想定しておきましょう。
☑情報整理対策
模造紙(方眼紙)・ホワイトボード・マーカーセット
まとめ
マンション防災における備蓄品は各個人が備える自助とマンション管理組合で備える共助の両輪があって初めて有効に機能します。マンションの世帯数や設備を点検して必要となる備蓄品を揃えることと、総会や防災訓練の場を活用して各家庭で準備する自助の必要性をしっかりと共有していくことから始めてはいかがでしょうか。
<参考記事>
熊本地震からマンション防災を考える②「地震被害直後に起こったこと」
熊本地震からマンション防災を考える③「本当に必要だった備蓄品とは<自助編>」
松井 久弥
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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