突然ですが、みなさまは機械式駐車場を利用されたことがあるでしょうか。
引っ越し先のマンションの駐車場や、旅行で宿泊予定のホテルの駐車場が機械式だけど
「今まで利用したことがないから、ちょっと不安」という方もいるかもしれません。
以前に『その車は停められる? 機械式駐車場の注意点』という記事を書かせていただきましたが、
今回は前回書ききれなかったことを紹介していきたいと思います。
1.諸元に問題なくても停められない車がある?
1.背面タイヤ付の車両
街中にタワーパーキングを中心に機械式の時間貸駐車場がありますが、入口のところにこんな文言が書いていることがあります。
ハイルーフ車・RV車 入庫不可
ハイルーフ車は車高が1550mm以上の車のことですが、RV車とは何かというとレジャー用途の車のこと(“Recreational Vehicle”の略)で、オフロードタイプの四輪駆動車のことを指すことが多いです。
現在はSUV (“Sport Utility Vehicle(スポーツ用多目的車)”の略)と呼ばれることが多いですが、1990年代ではミニバンタイプの車も含めてまとめてRV車と呼ばれていました。
当時RV車と呼ばれた車は、ほぼハイルーフ車でもあるのですが、何故わざわざ区別しているのかというと背面タイヤの存在が絡んできます。
当時RV車と呼ばれた車は、リアゲート部にタイヤを搭載した背面タイヤ仕様の車が多かったのですが、前回の記事にあるように背面タイヤは車検証やメーカーが公表している全長には含まれません。
機械式駐車場のメーカーは、単純な全長とは別に「リアオーバーハング (後輪の中心から車両後端までの長さ)」や、タイヤ止めから車両後端までの長さで駐車できる車を規定していることがありますが、背面タイヤ付の車だとタイヤがある分、その長さは他のタイプの車より長くなりがちで、規定を超過してしまう場合があります。
そもそも実際の全長が不明なので、『入庫できます』とメーカーも機械式駐車場の所有者/管理者も断言しづらいという側面もあります。
これらのことよりRV車というよりは『背面タイヤの車』かどうかと言った方が正しいかもしれません。
現在製造販売されている機械式駐車場でも背面タイヤ付の車は入庫不可となっているものがあります。
2024年1月現在、新車で背面タイヤ付の車は輸入車を含めても5車種程度とRV車という言葉のあった1990年代と比べるとその数は激減していますが、このような車は上記のような事情で停められる駐車場が減ってしまうことに注意してください。
2.改造車
また諸元に問題なくても停めることが出来ないことが多いのが改造車です。
エアロパーツやグリルガードなどの装着、サスペンション交換などで諸元が純正状態から変わってしまっている可能性があり、オイル漏れや故障で装置や他のパレットに駐車している車を汚したり、損傷させてしまうトラブルも考えられます。
仮に完全車検対応で整備もしっかり行っている改造車だとしても、そうではないものとの区別がメーカーや機械式駐車場の所有者/管理者には難しく、一括して駐車禁止にしていることがほとんどです。
自動車メーカー自ら大幅な改造を施して販売している車などは、それが純正状態なので改造車とは呼ぶことはないですが、機械式駐車場の所有者/管理者によってはこのような車も改造車として駐車不可と判断する可能性があります。
改造車じゃなくても最低地上高がかなり低い車やキャリアなど後付けの部品を取り付けている場合は入庫可能な諸元をクリアしているかを注意してください。
3.車高調整機能のある車両
数は少ないですが、車によっては車高を調整することの出来るものがあります。
ただそういった車の中でも、車を停めた後に車高が最低の位置まで下がってしまう車があります。
その時の最低地上高が駐車装置の制限値を下回ってしまう場合、駐車するたびに車の底面とパレットがぶつかっている状態になりますし、パレットが移動する際の揺れでそれぞれがこすりつけあう状態になる可能性があります。
メーカー純正で車高調整機能がついているのはほとんど輸入車で、最低地上高を公表していないこともほどんどですので、このような機能がついている車はエンジンを止めた後も車高を維持できるか、車高が下がってしまう場合でも機械式駐車場の制限値を下回らないかをあらかじめ実測するか、メーカーやディーラーに問い合わせる必要があります。
2.ちょっと厄介なアンテナのおはなし
車にはアンテナがボディのどこかに装着されていることが多いです。
『ラジオすらついてない』という車でも、他のグレードにオーディオやナビゲーションシステムが標準装備されている場合はアンテナは全グレードで装着されていることがあります。
そしてアンテナには様々な形があり、主流なものをあげると次の通りです。
1.ピラーアンテナ
古くから存在するタイプで、現在では主に商用車に装着されています。
大抵「Aピラー(フロントガラスとフロントドアの間の柱)」上部に設置されており、アンテナは手動で伸ばしたり格納することができます。
2.ルーフアンテナ
名前の通りルーフについているアンテナです。
固定式と可倒式がありますが、現在の主流は可倒式で、軽自動車やコンパクトカーに装着されています。
固定式、可倒式ともに回せばアンテナ部分を取り外すことが出来るものが多いです。
『ユーロアンテナ』と呼ばれることもあります。
3.モーターアンテナ
ラジオ等のスイッチに連動して自動で伸縮するアンテナです。
使用しないときは車のボディー内に自動で格納されます。
1980年代から2000年代前半にかけて高級車などに採用されていましたが、
最近はあまり見かけないタイプです。
4.シャークフィンアンテナ
その名の通りサメのヒレのような形をしたアンテナです。
国産車を中心にコンパクトカーからSUVまで幅広い車種に装着されています。
ルーフアンテナと同じくルーフについていることが多いですが、取り外すことは出来ません。
5.内蔵アンテナ
トランクリッドやリアスポイラーなどの中に受信ユニットが組み込まれたもので、外からは見ることが出来ません。高級車や輸入車を中心に採用されています。
また車の全高の話になりますが、原則として全高の数値の中にはアンテナの長さは含まれていません。
ピラーアンテナやルーフアンテナは最大まで伸ばそうが、格納しようが、取り外そうが車検証やメーカー公表の諸元には変わりがありません。
背面タイヤと同じように取り外したり、格納したりできるため、車のボディーの一部とは扱われないのです。
ただし、シャークフィンアンテナは例外で、こちらはボディに完全に固定されているのでボディーの一部扱いとなり、こちらは全高の中にアンテナが含まれます。
アンテナについて一通りご紹介しましたが、ここからはそのアンテナにまつわる機械式駐車場でのトラブルをご紹介していきます。
例えばアンテナが可倒式のルーフアンテナが付いている全高が駐車装置の制限いっぱいの車があるとします。
ギリギリとは言え制限値の範囲内ですので、問題なく駐車することが出来ますが、
もし、この時アンテナをたたみ忘れたまま入庫してしまった場合、どうなってしまうのかというと・・・
アンテナが装置の構造部や他のパレットに衝突し、アンテナポール部が折れ曲がったり、外れたりするだけでは無く、最悪の場合アンテナのベース部分からもげるように外れてしまうことがあります。
例えば現在弊社が製造している装置には、様々なセンサーが搭載されており、入庫制限を超過した車を入庫している、パレットからはみ出すように駐車しているなど、ひとつでもセンサーを遮っている状態ですと、警告音が鳴り、問題を解決するまで装置の操作が出来ないようになっています。
また、装置や装置が設置されている物件によって設置の方法やセンサーの種類が異なりますが、高さ制限センサーがついている場合があります。
上の絵には載っていませんが、車が入庫しているかを検知する実車光電管というセンサーと組み合わせて駐車装置はどんな車が入庫してきたかを検知することが出来ます。
これらのセンサーを搭載している駐車装置では、入庫制限超過車が入庫したり、標準ルーフ車用のパレットにハイルーフ車が入庫した場合は、操作パネルで警告文が表示され、問題を解決するまでは装置を操作することが出来ないようになっています。
先ほどお話ししたアンテナについても、入庫制限高さを超過するようにアンテナが伸びている状態ですと、センサーが反応して、装置の操作が出来ないようになり、未然に事故を防ぐようになっています。
まとめ
もちろんセンサーなどを備えた駐車装置でも、入庫時に段差や地面との隙間などで車体が上下し、たまたまアンテナ部分がセンサーを避けてしまう事も全くないとは言い切れません。
装置によっては車を格納する車室側にも車高センサーなどを備えている場合があります。その場合は事故が起こる前に駐車装置が停止しますが、それを復旧するまでの間、装置が使えない状態になってしまいます。
機械式駐車場に駐車する際は車の寸法はもちろん、サイドミラーやアンテナを収納または畳んでいるかどうかを確認するようにお願いします。
川村京祐
川村 京祐 (かわむら きょうすけ)
大阪府出身。2018年入社。
入社以来、機械式駐車装置の新設の営業に携わり、2023年より既存の装置の保守の営業に携わっています。
機械式駐車装置についてまだまだ勉強中ですが、皆様のお役に立てそうな情報を発信出来たら幸いです。
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