こんにちは。あなぶきハウジングサービスの木村です。
私は賃貸事業部に所属しておりますので、2月下旬~3月~4月上旬までが一番の繁忙期です。昨年はコロナの影響もあり引越しも少なくなりましたが、今年は想像よりも多くの方が引越しされたと思います。一部の都道府県で緊急事態宣言を出されていた地域もありますので、例年より引越シーズンは少し長引きそうな感じも受けております。
さて、今回は『エレベーター改修工事』についてお話し出来ればと思います。
賃貸マンションを経営する中で様々な改修工事が必要となってきますが、外壁工事に次いで大きな費用がかかるのは【エレベーター】です。入居者様に安全に利用して頂くためにも定期的な法定点検と、改修工事が必要となってきます。
4月下旬から夏頃までに私の担当物件で3棟実施予定もあり、改めて必要性と実施する事に伴っての注意が必要だと再認識しましたので、その点を主にお伝えいたします。
1)エレベーターの種類
エレベーターにも種類があり、大きく分類すると下記の種類となります。
ロープ式エレベーター
ワイヤーロープとつな車との摩擦力で、かごと重りをつるべ式にして、ロープで駆動する方式です。エレベーターとしては一般的な種類となります。機械室は最上階に設置されることが多いです。
油圧式エレベーター
機械室に設置してある油圧パワーユニットと昇降路に設置する油圧ジャッキを油圧配管で連結し、かごを昇降させる方式です。築年数が30年近い物件では管理物件でも採用している建物もあります。
2)エレベーターの維持管理
エレベーターを安全に利用できる様に十分な点検・設備を実施する必要があります。設置されている物件は、専門の保守メンテナンス業者と保守契約を締結し委託しておりますが、保守点検契約にも2種類ございます。
フルメンテナンス契約
①少額の消耗品、経年劣化した電気・機械部分の取替や修理を含む
②点検・調整・修理・部品取替え等の整備を含む
③月々一定の保守点検料には高額な部品取替え等も含まれている
POG(パーツ・オイル・グリース)契約
①少額の消耗品の交換等管理使用範囲内のものや潤滑油の補給等は含まれる
②修理や高額部品の交換は含まれない
フルメンテナンス契約の方が割高となりますが、契約で定められた部分の修理や部品費用が含まれているため、変動費が少ないのが特徴です。また、POGからフルメンテナンス契約に変更することが難しい場合が多くありますので、契約時に十分検討する事が必要となります。
メンテナンス業者によっては独自サービスにてエレベーター内にカメラを設置したり、現地保守点検に加え、遠隔にて異常を感知するリモート点検も付随されております。
尚、上記の保守点検と併せて、法律で定めれた法定点検も年一回実施し届出する事が義務付けられております。
3)エレベーター改修工事の必要性
建物に寿命がある様に、設備機器も過日劣化が進んでいきます。エレベーターの場合は法定償却耐用年数(税務上)は17年とされておりますが、長期間経過するとメンテナンスだけでは防げない問題が起こってきます。
実施時期
エレベーター改修工事は築25年頃までに実施するのが適切な時期と考えられております。心臓部にもあたる制御盤や油圧パワーユニットが故障する可能性も高くなる時期であり、又、各メーカーの部品調達も出来ない時期にあたってきます。部品故障が生じても修理ができないという物件もございました。
急に高額な(数百万~一千万超の事もあります)エレベーター改修工事を実施する事は難しい状況でありますので、築20年位から調査・費用把握を実施し早めに検討を始めることが安心に繋がります。
法改正
エレベーターは建築基準法に基づくものですが、地震等の災害を受け一部改正が何度かされております。特に平成21年9月28日の建築基準法施行令の一部改正によりエレベーターの設備の義務付け等が追加されております。
①戸開走行保護装置の設置義務付け
②地震時管制運転装置の設置義務付け
③安全に係る技術基準の明確化
法改正以前の建物については設置義務は免除されましたが、近年大きな地震が発生している事を受け、改修工事時に設置する物件も増えております。
4)エレベーター改修工事の注意点
一番の注意点としましては、工事中はエレベーターが利用できなくなる点です。工事内容にもよりますが、最低でも約一週間程度連続停止し、その期間は全く利用できなくなります。尚、油圧式からロープ式に変更する工事の場合は約3週間停止いたします。
特に5~10階以上に住んでいる入居者様には大変ご迷惑をおかけしますので、遅くとも1ヵ月前には周知する事が必要となります。(エレベーター停止時に引越しが重なるとトラブルになる可能性がございますので、時期も調整しております。)
余談ですが今回改修工事を実施する予定の物件の8階に80歳近くのお一人暮らしの方がおられます。日常お出かけされると伺っておりましたので、あらかじめ同マンションの1階にある民泊のお部屋に工事期間お住まい頂くか打診いたしました。結果的には事前に買い物等をすませ8階で生活して頂けることになりましたが、入居者様の事情も把握し事前対応をしないと実施できない工事です。
5)まとめ
多額の費用もかかり、入居者様の御理解も必要な工事となりますが、事故なく安心して利用して頂くには必要な工事です。事前に検討し適正な時期で実施する事が大切だと考えております。
お忙しい中、最後まで読んでいただきありがとうございました。
木村千春
木村 千春(きむら ちはる)
香川県出身。20年近く県外に出ておりましたが、
Uターンを機にあなぶきハウジングサービスに入社しました。
2002年より不動産(賃貸管理)業務を経験し、現在は賃貸物件の管理業務に従事しております。
建築営業にも携わっておりました。
今までの経験を生かして様々な事をお伝えできればと思います。
保有資格:宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士・2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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