マンションの管理費を値上げすると聞くと、どうにか回避したいと思うものです。入居者にとっても管理費の値上げ幅が大きかったり値上げ機関が長く続いたりすると、マンションの財政状況に不安を覚えるかもしれません。
しかし、本記事では、管理費はなぜ値上げが必要になるのか、もしおうじなかったらどうなるのかを具体的に解説します。値上げ幅を抑える方法や回避する方法についても紹介していますので参考にしてください。
管理費の値上げに応じなかったときの影響
目先の支出を抑える事だけを考えて管理費の値上げを避けると、結果的に値上げされた管理費以上の支出になってしまう、環境の悪いマンションに住み続けなくてはならないなど入居者にとってデメリットになる場合があります。
管理費の金額の決定権は管理会社ではなく、マンション各住戸に所有権を持つ区分所有者にあります。管理規約に金額が記載されている場合に管理費を値上げする場合、規約の変更に当たるため、特別決議が必要です。特別決議では区分所有者の頭数及び、議決権の4分の3以上賛成が必要になります。
一方で、管理規約に記載されていない場合は普通決議となり、過半数の賛成が必要です。このように、多くの区分所有者が反対すれば、管理費の値上げを回避できます。
しかし、必要な管理費の値上げが行われないと、組合のお金が足りなくなり、適切な修繕ができなくなる可能性も少なくありません。また、エレベーターの定期検査を怠れば罰金が科せられ、最悪の場合事故が発生する可能性もあります。
これらのことから、管理費の値上げは安易に拒否するべきではありません。重要なのは建物維持とかけるコストとのバランスです。入居者が快適に暮らすためには、ある程度の維持費をかける必要があります。
安全性を保つために必要なメンテナンスには、しっかり費用を充てるべきです。しかし、景観を保つための過度なリフォームや最新にこだわった設備の導入など、過剰にお金をかけることは避ける必要があります。
管理費用の値上げの内訳を見ると、必要な値上げなのかが見えてきます。細かく確認し必要な値上げであれば、ある程度許容しなければなりません。
しかし、過剰と判断できる内容や、工夫することで管理業務を削減できると判断できるものであれば、区分所有者が拒否して値上げを防ぐことも可能です。
管理費の値上げが必要になる要因は?
管理費の値上げが必要になるのは、いくつもの要因が重なった結果であると考えられます。その中でも、主な値上げ要因になる事例を紹介します。
人件費が上昇している
人件費の高騰は、管理を任されている管理会社への管理委託料に関わってきます。人件費を減らすのは困難なため、人件費が上がるのは仕方ありません。ただし、管理内容を見直すことによって、発生する人件費を減らすことは可能です。
たとえば、これまで管理人が常駐であった場合、セキュリティや入居者の利便性を考えて問題ないのであれば、管理人の設置日数を減らしましょう。また、作業効率が落ちても問題ないのであれば、作業時間を変えずに作業人数を減らす方法もあります。
作業時間内でできる業務が限られてきますが、発生する人件費を減らすことは可能です。また、人件費は管理会社によって異なります。管理会社の変更も視野に入れて、数社から管理費用の見積もりをとりましょう。
人件費が高騰しているのはどの会社も同じですが、工夫して費用を抑えているところもあります。ただし、安い管理会社を利用して管理の質が極端に下がるようではいけません。
見積もりの際に相場よりも安い理由を確認し、業務内容や作業内容などをチェックしましょう。
管理内容が増加している
管理内容の増加は管理費用を左右します。管理内容はどこまでの管理を任されるかによって変わるものです。マンションに新しい設備を導入したり植栽の手入れが増えたりするなど、管理内容や管理対象が増えることによって、管理費用が上がります。
管理内容の増加が管理費用の値上げに影響しているなら、マンションの設備や設置物を見直しましょう。入居者にとってデメリットにならないのであれば、削減しても構いません。
景観のための植栽であれば最小限にしましょう。ただし、防犯の観点からあえて植栽しているのであれば、無闇に排除できません。
再委託先からの値上げ要請があった
マンションの管理は、管理会社が直接行わないケースがほとんどです。多くの場合は外部の業者に再委託しています。そのため、再委託先からの値上げ要請も管理費用が上がる要因のひとつです。
近年、再委託先の企業による発注金額の値上げは活発化しています。要因としては人手不足が挙げられ、人員を確保するために給料を上げることで応募者を募っている現状があります。マンションの管理業務はロボットやAIへの置き換えが難しく、結果的に管理費用の値上げに繋がっています。
これまでの管理費用が安すぎた
一定の管理費用は必要です。管理費用を必要な金額よりも安く設定していた場合は、いずれ適正価格に戻すために値上げが起こります。管理費用を大幅に安くする営業方法をリプレイス営業といい、昔から行われている方法です。
委託先に自社を選んでもらうために、通常よりも安い金額で提案するケースがあります。競合相手に負けるわけにはいかないため、勝ち取るために各社が競いながら金額を下げるため、契約時には相場の金額から大幅に下がっているというわけです。
しかし、管理費用は下がったままでは続けられません。いずれは適正金額に戻す必要があり、値上げという形で行われます。
これらのことから、管理費用がほかより安いからという理由だけで管理会社を選ぶのはおすすめしません。相場よりも極端に安い場合は、今後値上がりすると考えてもいいでしょう。
もし、安い管理費用が長く続いているマンションであれば、管理は行き届いているかしっかり確認する必要があります。
滞納者によって管理費が不足している
マンション内で管理費用の滞納者がいると、結果として管理費用が上がる場合があります。所有者は管理費用を払わなくてはいけません。滞納が長期に及んだ場合は競売にかけられ、競落してから管理費用を回収します。
最終的に管理費用は回収できますが、滞納が始まってから回収できるまでの長い期間かかるため、状況によっては管理費用の値上げに繋がります。
電気代が値上がりした
電気の値上げも管理費用の値上がりに直接影響します。エントランスや駐車場や玄関など、共用部分も維持は管理費で賄うものです。共用部分にも電気は不可欠です。
照明だけなら大幅な値上げにはなりませんが、空調設備が整っているマンションであれば、管理費の値上げ幅は大きくなります。
駐車場の空きが増えた
駐車場料金を管理費用に含めている管理組合は多くあります。駐車場の契約が満車状態であれば、月々回収できる見込みがあるため問題ありません。しかし、空車が多いとその区画の収入が見込めないため、管理費用を値上げして補填する必要があります。
近年、マイカーを持たない方が増えており、カーシェアも普及しつつあるため駐車場に空車が目立つマンションも少なくありません。
これらの背景から、最近では駐車場のないマンションやマンションの住居者以外が契約できる外部貸しを行うところも増えつつあります。
単純に契約者を募るのもいいですが、サブリースであれば安定して駐車場の収入が得られる可能性があります。サブリースとはサブリース会社が駐車場を一括で借り上げる転貸方式です。
ただし、サブリースは契約者がいる場合に有効になります。そもそも近隣の契約者が減少しているのであれば、サブリースを利用するのは難しいでしょう。駐車場の管理方法を見直して、管理費用を下げる工夫が必要です。
管理費の値上げを回避するには?
必要な管理費の値上げを回避するのは難しいですが、工夫することで値上げ幅を抑えられたり、結果的に回避できたりする可能性があります。値上げを抑えるための5つのポイントを解説します。
管理業務の内容や頻度を見直す
管理費は管理の内容に左右されます。手厚い管理を求めるなら管理費は相場よりも高くなります。管理費の値上げを回避するためには、まずは管理業務内容を見直すのがおすすめです。必要度の低い業務が含まれていないかを確認します。
たとえば、マンションの共用部分の清掃は管理業者に依頼するのが一般的です。管理に注力しているマンションであれば、毎日清掃を依頼しているところもあるでしょう。
しかし、毎日ではなくても清潔を保てる環境であれば、週に2・3回など頻度を減らすと管理費用を抑えられます。
また、管理会社への発注方法を見直すのもおすすめです。管理会社経由で管理を依頼しているなら、直接発注に切り替えましょう。管理会社の仲介がなくなることで、仲介料などの負担を減らせます。
管理業務を一部自主管理に切り替える
入居者が業務を一部負担することが可能であれば、管理業務を一部自主管理に切り替える方法もあります。
玄関付近の清掃は入居者個人で行う、共用部分の清掃や植栽の水やりなどを当番制で入居者が行うなど、入居者に協力してもらうことで管理費用の値上げを回避できます。
ただし、この方法は入居者に許可をもらわなければいけません。これまで業者に依頼していたものを入居者でカバーするとなると、負担に感じる方もいるでしょう。
そのため、一部自主管理に切り替えるなら、話し合いを設けるなどして入居者に理解してもらう必要があります。
また、管理業務すべてを入居者で賄うことはできません。エレベーターやセキュリティの定期点検や修繕など、プロによる管理が必要な部分の管理費用は発生します。
管理会社を変更する
業務内容を変えたり、一部自主管理に切り替えたりしても管理費用の値上げが負担になるようであれば、管理会社の変更を検討しましょう。管理会社によって、委託業者に任せる費用や管理費用はさまざまです。
ただし、管理会社によって管理方法や対応できる管理業務が異なる場合があります。管理会社を変更する場合は管理費用だけで判断するのではなく、業務内容や対応範囲などトータルでメリットがあるかで判断しましょう。
電力会社を変更する
電気料金が管理費用の値上げに関係している場合は、電力会社の変更を検討します。家庭の電気料金と同じで、電力会社を変更することで月々の電気料金を減らすことが可能です。
電力会社の変更は、ぜひ数社を見積もりしてから決定しましょう。共用部分に空調設備を利用しているマンションであれば、電気料金の大幅な管理費削減が見込めます。
駐車場・駐輪場を有効活用する
駐車場や駐輪場に空きがあれば、空きスペースを有効活用して収入を管理費用に充てる方法もあります。最も手軽な方法は、入居者以外の外部に貸し出す方法です。駅近などの立地条件がいいマンションであれば、定期的な収入が見込めます。
ただし、借り手がいないと管理費用に充てられません。駐車場・駐輪場の外部への貸し出しで定期的な収入が見込めない場合は、空きスペースに自動販売機を置く、携帯電話会社の設備設置場所として提供するなどの方法もあります。
活用方法を工夫することで、入居者にとってもメリットになることもあります。しかし、収益事業と見なされる可能性があることがデメリットです。
収益事業とは、 マンション管理組合などの人格のない社団などが行う事業のうち、法人税の課税対象とされるものをいいます。空きスペースの利用は、事前に調べてから取り組みましょう。
まとめ
管理費の値上げには、必要で削れない要因と工夫次第で抑えられる要因があります。管理費の値上げや入居者にとって負担になりますが、安易に拒否しないようにしましょう。
削れない要因での値上げで拒否してしまうと、点検や修繕ができなくなり、快適性にかけたマンションになってしまいます。管理費の値上げを削れない要因は、人件費の上昇・管理内容の増加・再委託先からの値上げ要請などです。
どれも必要な値上げではありますが、工夫すれば値上げ幅を下げたり、トータルでは値上げを回避できたりします。管理内容を減らせないか、管理会社を変更できないかなどを検討しましょう。
また、入居者が負担できれば一部自主管理に切り替える、空き駐車場や駐輪場・空きスペースを有効活用して管理費に充てられる収入を入居者以外から得る方法もあります。
このように管理費用を抑える取り組みをすることで、これまでの変わらない管理費用でマンションの管理を継続することもできます。あなぶきハウジングサービスはコールセンターを自社で運営しておりますので、気になることがあればいつでもご相談ください。
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