こんにちは。東京ファシィリティサービスの西部です。
前回、前々回でご紹介させていただいたエレべーターの機能などの情報につけ加えて、今回は災害時等にエレベーター内に閉じ込められてしまった時の対処法などをご紹介させていただきます。
①「エレベーター閉じ込め事故」の概略
2011年3月に発生した東日本大震災では、全国20都道府県で合計257件のエレベーター閉じ込めが発生し(※日本エレベーター協会調査より)、2018年6月の大阪府北部地震では340件程の閉じ込めが報告されています。このような地震などの災害による閉じ込め事故は度々TVのニュースなどで私達の耳にも入ってきます。また一方では報道されていないエレベーター自身の故障による閉じ込め事故もしばしば発生しており、合わせると年間で1万件を超える事例が報告されているそうです。日本人が日常生活において、このようなエレベーターの「閉じ込め」に遭遇する確率は、55人に1人程の割合で起こり得るそうです。上記大阪府の閉じ込め事例においては、発生から救助に至るまで平均80分程掛かり5時間を超えたケースもあったそうで、万が一に備える心構えは大切だと言えます。
② 地震における閉じ込めの発生時の対処
2009年よりエレベーター設置においては、『地震時管制運転装置』が義務付けられ、地震時において初期微動を感知すると最寄りの階で停まる機能が備えられています。最寄りの階に着床後、安全にエレベーターの外へ避難を行うことができる設計ですが、2009年より前に設置されたエレベーターにおいてはこの機能が備えられていない場合もあります。又装置が設置されていても、最寄り階に着床前に再度大きな地震の揺れを感知した場合やセンサーの誤作動があった場合はエレベーターが緊急停止を行い、閉じ込めに遭遇する可能性があります。このような場合における閉じ込めが発生した場合は、以下の処置と注意点が必要とされます。
1)「行先階ボタン」を全て押す
地震による停止が発生した場合、まずは最寄りの階で降りる事を心掛けて下さい。『地震時管制運転装置』が備わってない機種や、作動し無い場合を想定して「行先階ボタン」を全て押して下さい。13階から1階への移動中に10階あたりでエレベーターが緊急停止しても、1階まで降りようとしないで下さい。緊急停止後に動き出した場合でも、その後に閉じ込められるケースがありますので、まずはいち早くエレベーターのかごから出る事を心掛け、かごから脱出したら安全に非常階段等を利用して下さい。
2)外部に連絡(非常用インターホン使用)
エレベーター内操作盤の非常用インターホン(※電話のマークが目印)を使って外部と連絡を取って下さい。この場合の外部は管理会社、警備室、エレベーターのメンテナンス会社です。ボタンを押し続けて繋がったら閉じ込められた状況や、かご内の人数等を落ち着いて伝え救助を要請してください。スマホを使ってエレベーター内のラベル表示の連絡先や、110番、119番へ掛ける方法でも救助の要請は可能です。
3)救出まで長時間掛かることを想定する
大阪府の地震時のケースで記述した通り発生から救助まで平均80分程、場合により5時間を超える閉じ込め時間をも想定する必要があります。前回豆知識②でご紹介したような「非常用収納ボックス」がエレベーター内に備えられていれば、食料・水・簡易トイレなど確認して下さい。密室に思われるエレベーター内においても通気が確保されているため酸欠による窒息の心配はありませんが、長時間を想定した体力の温存と体温の確保に心掛ける必要があります。
4)内部から無理やり扉を開けようとしない
安全に避難できる階床の位置以外でのエレベーター内からの扉は、一般に開けることができない構造となっています。仮に内側から無理やりに扉を開けても、階層途中の位置により扉を開けた正面が壁で脱出が不可能であったり、隙間からの落下による命の危険が生じる可能性があります。また、急にエレベーターが動き出すことにより挟まれ事故にも繋がる恐れがありますので、かご内側からの無理な扉のこじ開けは絶対にやってはいけない行為であることを記憶しておいて下さい。
5)エレベーターは意外と安全であることを認識!
皆様がお住まいのマンションにおいてはロープ式のエレベーターが主流であり、エレベーターのかごが屋上付近の網車(もうしゃ)よりロープで吊り下げられている構造となっています(※その他の構造もあります)。このロープ式のかごを吊っているローブ自体は1本に付き安全率が10以上(=規定重量の10倍以上の強度)が確保されています。しかもロープは1つのかごに3本以上設置されており、そのうち2本が切断されてもかごが落下しない構造となっています。又、仮にロープが全て切断されたとしても『非常止め装置』によりブレーキが働き、かご自体が落下しない設計となっています。さらに、最下床には『緩衝器』と呼ばれる落下した場合の衝撃を和らげる装置も備えられています。このように、エレベーターの安全性は非常に高く確保されていますので、エレベーターが衝撃等により落下する可能性はかなり低いと思われます。
6)地震発生後は、安全確認の完了までエレベーターを使用しない
かごから脱出ができてエレベーターが自立運転可能となっても、損傷が残っていて再度停止する可能性があります。エレベーターのメンテナンス会社や、管理者がエレベーターの正常で安全な運転を確認するまでは、エレベーターの利用を控えて下さい。
③ 天災が原因となって停電になった場合の対処
地震のみで無く落雷や火事が原因となって停電となり、エレベーターが非常停止する場合もあります。
基本的に停電時においてもバッテリーの救出運転により最寄り階への自動停止が発動されますが、運悪く閉じ込めに遭った場合は上記地震時と同じ対応が必要となります。
④ 機械設備の故障による停止時の対処
エレベーターのメンテナンス業者による定期的な検査が行われているのを皆様は目にすることが多いと思います。検査時はマンション等のエレベーターが利用できずに不便を感じるかも知れませんが、そのおかげで機械設備の故障に遭遇することは近年稀だと思われます。それでも閉じ込めに遭った場合は、上記地震時と同じ対応が必要とされます。
⑤ 冠水、浸水時及びその恐れがある場合の対処
ピットに一定以上の深さまで水が浸水した場合には、エレベーターは最下階以外の最寄り階に停止し戸開しますので停止と同時に避難して下さい。一般的にはその後戸閉し運転を休止しますが、万が一閉じ込めに遭った場合は、上記地震時と同じ対応を心掛けて下さい。
また、大雨等による冠水、浸水の可能性がある時はかごを最上階へ移動させ、ブレーカーを切って運転を停止させて下さい。ピット内への水の侵入を防ぐため、土嚢を扉前に置く処置も大変有効です。
まとめ
如何でしたでしょうか? エレベーターの閉じ込めを経験して無い方にとっては、「まさか自分が・・」と思われるかも知れまでんが、頭の片隅にこの記事を記憶しておいていただくだけで幸いです。万が一、エレベーターの閉じ込めに遭った場合、『①階ボタン全て押す』『②外部に連絡』『③長期戦を覚悟で救助を待つ』『④内側から無理に扉を開けない』を思い出して実践して下さい。少しでも落ち着いて対応ができれば、危険性を最小限に留めることが可能となるでしょう。
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