皆さんこんにちは。仲井です。前回に引き続き、都市計画法です。今回は「開発行為」がテーマです。「開発行為」は、「開発許可の要否」の分野も大事ですが、「開発許可の手続」もおろそかにすることはできません。以下、「開発許可の手続」のポイントを説明いたします。
目次
- 許可申請の手続
- 申請書提出後の手続
- 変更の許可等・許可に基づく地位の承継
許可申請の手続
「開発行為」とは、主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的でおこなう土地の区画形質の変更をいいますが、都市計画区域または準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、一定の場合を除き、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければなりません。また、都市計画区域および準都市計画区域外の区域内において、一定規模以上の開発行為をしようとする者も、一定の場合を除き、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければなりません。
当然、電話で「開発行為をやりたいんですが」というわけにはいかず、開発許可に関する手続が定められています。
まず、開発行為の許可を受けようとする者は、事前に、決められた書面等を添付して、申請書を提出しなければなりません。ここでは、申請書の記載事項と、申請書に添付する書面等について押さえましょう。
1 申請書の記載事項
開発行為の許可を受けようとする者は、開発区域、開発区域内において予定される建築物または特定工作物(予定建築物等)の用途、開発行為に関する設計、工事施行者、工事の着手予定年月日および工事の完了予定年月日等を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければなりません。予定建築物の規模・構造・設備を記載する必要はないので注意しましょう。
2 申請書に添付する書面等
開発許可の申請書には、以下の書面・図書を添付しなければなりません。
まず、開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に「関係がある」公共施設(=現在すでに存在する公共施設)の管理者と協議し、その同意を得なければなりませんが、申請書には、その同意を得たことを証する書面を添付しなければなりません。
また、開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為または開発行為に関する工事により「設置される」公共施設(=将来的に設置される公共施設)を管理することとなる者等と協議しなければなりませんが、申請書には、その協議の経過を示す書面を添付しなければなりません。
さらに、申請書には、当該開発行為をしようとする土地もしくは当該開発行為に関する工事をしようとする土地の区域内の土地またはこれらの土地にある建築物その他の工作物につき当該開発行為の施行または当該開発行為に関する工事の実施の妨げとなる権利を有する者の「相当数の同意」を得たことを証する書類も、添付しなければなりません(平たく言えば、開発区域の所有権を持っていなくても、その区域内の所有者等の相当数の同意があれば、開発行為ができるということです)。
ほかにも、開発区域の位置図・開発区域の区域図なども添付します。
申請書提出後の手続
開発許可の申請書を提出した後の手続も、ざっと押さえておきましょう。
都道府県知事は、開発許可の申請があったときは、遅滞なく、許可または不許可の処分をしなければなりません。この処分をするには、文書をもって当該申請者に通知しなければなりません。もし処分に不満があれば、「開発審査会」に審査請求することができます。
開発許可を受けた者は、当該開発区域の全部について当該開発行為に関する工事を完了したときは、その旨を都道府県知事に届け出なければなりません。都道府県知事は、この工事完了の届出があったときは、遅滞なく、当該工事が開発許可の内容に適合しているかどうかについて検査し、その検査の結果当該工事が当該開発許可の内容に適合していると認めたときは、検査済証を当該開発許可を受けた者に交付しなければなりません。そして、都道府県知事は、この検査済証を交付したときは、遅滞なく、当該工事が完了した旨を公告しなければなりません。
なお、開発許可を受けた者は、開発行為に関する工事を廃止したときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければなりません。すなわち、工事を途中でやめて何も知らせないのは危険ですし迷惑です。もっとも、許可や承認にしてしまうと、「やめたいのに許可や承認がないからやめられない」というふうに行為を無理強いしてしまう可能性もあります。そこで、「届出」が要求されているのです。
変更の許可等・許可に基づく地位の承継
いったん開発許可を受けたのに、工事の内容や、工事をする人が変わる場合、何か手続はいるのでしょうか。
1 変更の許可等
開発許可を受けた者は、開発許可の申請書に記載した事項の変更をしようとする場合においては、都道府県知事の許可を受けなければなりません(そもそも開発許可不要な開発行為に変更する場合は、許可不要)。許可不要としてしまうと、「いったん別の内容で申請して、許可が下りてから内容を変更すればいいや」となってしまい、許可制が無意味となるからです。
ただし、工事着手・完了予定年月日等の、一定の「軽微な変更」をしたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければなりません(許可までは不要です)。
2 許可に基づく地位の承継
開発許可を受けた者の相続人その他の一般承継人(合併等)は、被承継人が有していた当該許可に基づく地位を承継します。許可を受けた者が亡くなったような場合、許可を受けたということを当然に受け継ぐのです(あらためて許可や承認を得る必要はありません)。
これに対し、開発許可を受けた者から当該開発区域内の土地の所有権その他当該開発行為に関する工事を施行する権原を取得した者は、都道府県知事の承認を受けて、当該開発許可を受けた者が有していた当該開発許可に基づく地位を承継することができます。平たく言えば、売却のような特定承継の場合は、都道府県知事の「承認」を得る必要があります。
すなわち、売却すること自体は構わないのですが、せっかく審査をして許可を与えているので、「いったん別の会社で申請して許可を得させてから、自分が買えばいいや」という抜け道を防ぐ必要があるのです。もっとも、工事の内容が変わるわけではありませんし、許可だと厳しすぎて売却に支障を来すおそれがあります。そこで、「承認」が要求されているのです。
いかがでしたか?都市計画法では、工事の完了は「届出」、工事の廃止は「届出」、軽微な変更は「届出」、特定承継は「承認」…というふうに、単語を正確につかむことが大切です。ヒッカケに注意しましょう!
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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