皆さんこんにちは。仲井です。今回は、権利関係の民法における「瑕疵担保責任」と、宅建業法における「瑕疵担保責任についての特約の制限」を学習します。まずは、基本となる、民法の「瑕疵担保責任」のポイントを確認したうえで、次に、宅建業法の「瑕疵担保責任についての特約の制限」のポイントを説明します。基礎知識をしっかりと固めることで、事例問題にも対応できるようになります。
では、早速中身に入りましょう。
- 民法の瑕疵担保責任
- 宅建業法における瑕疵担保責任についての特約の制限
民法の瑕疵担保責任
1 瑕疵担保責任の内容
たとえば、売主Aから買主Bが買った不動産につき、契約当初から「隠れた瑕疵」(ちょっと見ただけでは分からない、雨漏れ、シロアリ、腐食・穴・傷等の問題点)があった場合、買主Bは、売主Aに対し、解除、損害賠償請求といった責任の追及をすることができます(なお、修補請求については、現在の民法上、規定されていません。実際は特約で認めることもありますが…。また、代金減額請求も、規定されていません)。
ただし、悪意の買主は、この瑕疵担保責任の追及ができません。雨漏れや穴があいていること等を知りつつ買っているのですから、後で文句は言えません。また、買主において善意だが知らないことに過失がある場合も、責任追及できません。
結局、瑕疵担保責任(解除・損害賠償請求)は、善意無過失の場合のみ、請求がすることができます。「隠れた」イコール「善意無過失」なのです。
また、解除には、「契約した目的不達成の場合」という条件が付くことにも注意しましょう。たとえば、「マイホームを買ったのに、瑕疵があまりにひどくて住めないよ」という場合に解除ができるのです。
さらに、この担保責任は、売主の無過失責任であるということにも注意しましょう。難しい言い方をすると、担保責任は「売買の信用性」を維持するための制度で、売主に過失があろうとなかろうと、とにかく買った物と払った代金の釣り合いをとることだけを考えるのです。たとえば、解除は、物0・代金0で、また、損害賠償請求は、物80+20・代金100で、それぞれ釣り合いがとれるのです。
ちなみに、契約後にトラブル・問題点が生じた場合、債務不履行や危険負担の問題となりますが、試験対策としてはあまり突き詰めて考えなくてもいいのかな、と思います(中古車の横でその中古車の契約をしていたら、鳥やよその子供が11時にその車を傷つけた場合、「契約が10時59分だったら危険負担で、契約が11時1分だったら瑕疵担保責任で…」と考えるのは、ちょっと現実的ではないですよね)。
2 瑕疵担保責任の追及期間
瑕疵担保責任の内容を押さえたら、次は、責任を追及できる期間を押さえましょう(すごく後になってから買主に文句を言われたら、売主としては「もっと早く言ってよ」と思うでしょうから、責任追及できる期間が決まっているのです)。
瑕疵担保責任において、買主が善意無過失の場合、責任追及できる期間は、瑕疵を「知った時から1年間」です。瑕疵をずっと知らなくても、知った時から1年間数えるので、買主にとって、とても有利ですね。逆に、契約の時から1年、契約の時から2年…、あるいは、引渡しの時から1年、引渡しの時から2年…では、瑕疵を知らない間に期間が経過してしまう可能性があるので、買主にとって不利といえます。
3 瑕疵担保責任を負わない旨の特約
売主は、瑕疵担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができません。知っているにもかかわらず、何も言わないで瑕疵担保責任を免れる特約をするのは、ずるいからです。
宅建業法における瑕疵担保責任についての特約の制限
1 瑕疵担保責任についての特約の制限の内容
以上のように、民法の瑕疵担保責任は、売主の無過失責任であり、買主は、善意無過失の場合、解除と損害賠償の請求ができ、この責任追及期間は、瑕疵を知った時から1年間です。そして、民法では、基本的に特約(当事者で法律の規定と違うことや法律の規定にないことを定めること)は自由であり、瑕疵担保責任を負わない旨の特約をすることもできます。
しかし、宅建業法では、売主が宅建業者で、買主が宅建業者でない場合、買主を守るために、瑕疵担保責任についての特約を制限する規定があります(問題文を読む際は、まずは、売主が宅建業者で、かつ、買主が宅建業者でないことを確認しましょう)。
すなわち、「宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法…に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない」と規定されています。以下説明しましょう。
宅建業法では、宅建業者である売主と宅建業者ではない買主が特約をした場合、その特約の内容が、民法の瑕疵担保責任の規定の内容と比べて買主にとって不利な場合、原則として無効です(逆に、民法と比べて買主に有利な特約は、有効です)。たとえば、「売主は、過失がある場合に限り、責任を負う」「買主は、損害賠償請求はできるが、解除はできない」と特約した場合、その特約は、民法の規定よりも買主に不利な内容なので、無効です。
ただし、売主が宅建業者で買主が宅建業者ではない場合でも、例外的に、責任を負う期間を「引渡しから2年」以上とする特約は、民法の規定よりも買主に不利であるにもかかわらず、有効とされます。民法に規定する「知った時から1年間」という期間は、買主の保護にはなりますが、宅建業者にとってあまりに酷であるため、「引渡しから2年」以上という特約だけは、例外的に認めているのです。
2 特約の有効・無効の判断
では、瑕疵担保責任についての特約の制限の規定に、具体的な特約をあてはめてみましょう(もちろん、売主が宅建業者で、買主が宅建業者でない場合です)。
「知った時から2年間」という特約は、民法の規定(=知った時から1年間)より買主に有利なので、有効ですね。
「知った時から半年間」という特約は、民法の規定より買主に不利なので、無効ですね。
「知った時から1年間」は、民法の規定と同じなので、有効です。
「引渡しから3年間」という特約は、引渡しから2年以上なので、有効ですね。
「引渡しから1年間」という特約は、引渡しから2年未満(もちろん、民法の規定より不利ですね)なので、無効ですね。
「契約から2年間」という特約は、「引渡しから2年以上」にあたらず、また、民法の規定より買主に不利なので、無効ですね。
3 特約が無効の場合
…以上のように、宅建業者である売主と宅建業者ではない買主が特約をした場合、その特約の内容が、民法の瑕疵担保責任の規定の内容と比べて買主にとって不利なとき、その特約は、原則として無効です。
そして、特約が無効となった場合は、本来の民法の規定が適用されることもあわせて注意しておきましょう。
たとえば、「知ったときから半年」や「引渡しから1年間」という特約は、無効でしたが、これらの特約のように無効の場合、責任追及期間は、民法の「知った時から1年間」となるのです。
…今日はこの辺にしておきましょう。宅建業法における瑕疵担保責任についての特約の制限は、まるまる1問ではなく、選択肢の1つとして出題されることが多いですが、しっかりとポイントを押さえ、確実に選択肢を絞れるようにしましょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
最新記事 by 仲井悟史 (すべて見る)
- 宅建合格講座!宅建業法|「手付金等の保全措置」を解くときのポイント - 2020年8月28日
- マンションで居住者イベントを実施する3つのメリット - 2019年4月6日
- マンション入居者イベントのオススメ企画|初心者向け - 2019年3月27日