皆さんこんにちは。仲井です。宅建合格講座を再開します。今回は、権利関係の「債権譲渡」です。では早速中身に入ります。
目次
- 債権譲渡とは
- 債権の譲渡の対抗要件
- ちょっと応用…
債権譲渡とは
たとえば、AがBに対して、50万円を3カ月後に支払ってもらう債権を有していたとしましょう。債権という権利は目に見えないものですが、Aは、これをCに売ったり、贈与したりすることができます。これが債権譲渡で、債権の譲受人Cは、特別の事情がない限り、3カ月後に債務者Bに対して50万円請求することができます。
なお、Aが債権をCに譲渡する場合、譲受人Cは、債権額よりも低い金額(たとえば40万円)を譲渡人Aに支払うことが多いでしょう。Aは、今すぐお金が欲しい(3カ月も待っていられない)ので、40万円しか支払われなくてもかまわないのです。Cにとっても、40万円支払ったが、3カ月待てば、債務者Bから50万円が支払われるので、メリットがあります。場合によっては、利息も入るかもしれません。これを有価証券にして応用したのが、株式や手形・小切手等で、ちょっと大げさですが、「債権譲渡のおかげで世の中発展してきた」といえるかもしれません。
債権の譲渡の対抗要件
1 債務者に対する対抗要件
民法では、債権の譲渡は、「譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者…に対抗することができない」と定められています。
すなわち、AがCに債権を譲渡した場合、債務者Bが債権譲渡があったことを知らない可能性があるので(いきなりCが請求してきたらビックリしますよね)、譲受人Cが債務者Bに債権譲渡を主張するには、譲渡人Aが債務者Bに通知をするか(なお、通知の形式は問いません)、または、債務者Bが承諾をすることが必要なのです。
ここで注意していただきたいのは、債権譲渡の通知は、譲渡人Aがおこなうということです。権利を失うAの通知だからこそ信用できるのです。権利を得るCの通知では債務者Bに対抗できません。また、譲受人Cは、譲渡人Aを「代理して」通知をすることはできますが、「代位して」通知をすることはできません。代理と代位の詳しい違いまでは押さえなくてかまいませんが、代理は、AがCに「代わりに通知をしてください」と自己の意思で依頼しているのに対して、代位は、Aが何もやらずにボケッとしているから、Aの意思にかかわらず、Cが通知をしてしまうようなものだ、というイメージだけはもっておきましょう。
ちなみに、債務者Bからの承諾は、譲渡人Aにしても、譲受人Cにしても、どちらでもかまいません。
2 第三者に対する対抗要件
では、Aが債権をCにもDにも二重に譲渡した場合において、どちらの債権譲渡に関しても譲渡人Aからの通知があったときは、どうなるのでしょうか。
この場合、民法では、「通知または承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない」としています。
すなわち、債権の二重譲渡のような場合、譲渡した順番は考えず、確定日付の入っている証書による通知(たとえば、内容証明郵便)を優先させるのです。たとえば、譲渡人Aがどちらの譲渡に関しても通知をした場合において、Cへの譲渡に関する通知には確定日付が入っていて、Dへの譲渡に関する通知には確定日付が入っていなかったときは、Cの勝ちとなります。
ちょっと応用…
では、先ほどのCおよびDへの二重譲渡の場合において、譲渡人Aがどちらの譲渡に関しても、確定日付ある証書による通知をしたとき、どのように考えたらよいでしょうか。
たとえば、Cへの譲渡に関する通知の確定日付が11月11日で、これが債務者Bに到達したのが11月13日だったとしましょう。また、Dへの譲渡に関する通知の確定日付が11月1日だったが、Aがこれをしばらく机の引き出しにしまっており、最終的に債務者Bに到達したのが11月20日だったとしましょう。
この場合、債務者Bの立場に立ってみましょう。もし、確定日付が先の方が優先するとしてしまうと、どうなるでしょう?債務者Bは、11月13日にCへの債権譲渡に関する通知が届いたので、Cに弁済をしてしまった場合、後で困ることになります。11月20日にDへの債権譲渡に関する通知が届いたので、中を開けてみたところ、Dへの確定日付が11月1日となっているので、確定日付がCよりも先のDが優先することとなり、債務者Bは、Dに弁済したうえで、Cから既に払った分を取り返さなければならなくなってしまいます。
結局、債権の二重譲渡で、どちらも確定日付ある証書による通知の場合、確定日付の先後を基準とするのではなく、債務者Bへの到達の先後を基準とします。
したがって、Dに関する確定日付ある通知よりも、先に債務者Bに到達したCに関する確定日付ある通知が優先します。
なお、到達の先後で決まるのであれば、そもそも確定日付ある証書なんか要らないじゃないか、と思われるかもしれません。これについては、当事者が共謀して到達日をごまかそうとした場合、確定日付がないといくらでも遡らせることができますが、確定日付があると確定日付よりも前の日を到達日にすることができません。ですので、民法は、債権の二重譲渡のような場合、一応、対抗要件として確定日付ある通知を要求しているのです。
…今日はこれぐらいにしておきましょう。債権譲渡は、比較的出題の少ない分野ですが、もし出題されたら、今回学習した知識で選択肢を絞って、何とか正解肢を導き出しましょう。
仲井悟史
東京イーストエリアで約10年にわたりマンション管理担当者を経験しています。前職は資格試験予備校で長年にわたり宅建等の講師として教壇に立っていました。その経験を活かし、現在、社内講師も務めています。息子たちと野球をしたり観たりすることが最大の楽しみ。
保有資格:管理業務主任者・マンション管理士・マンション維持修繕技術者・宅地建物取引士
特技:中国語
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