インスペクション(建物状況調査)と管理組合│宅建業法改正(平成30.4.1) ②

田中一直 田中一直

前回のブログに引き続き、インスペクション対応に関して管理組合で決めておくべき内容について考えてみたいと思います。
なお、インスペクション対応について、管理組合で取り決める内容が管理規約等に反する場合等は、管理規約の変更が必要となりますのでご留意をお願いいたします。

インスペクションを認めるか否か?

インスペクション(建物状況調査)の調査対象は「専有部分」と「共用部分」の両方が該当します。
専有部分の調査については、それぞれの区分所有者が管理する部分であるため、調査に関して管理組合が関与することはないと思いますが、共用部分の調査については、管理組合の方針により認めない(調査させない)とすることも可能です。

しかし、前回のブログにも書きましたが、インスペクションには、売主・買主・管理組合にとって以下のようなメリットが考えられ、対して管理組合の被るデメリットは、コンクリート検査時の騒音や調査技術者等がマンション内に立入ることによる生活上の影響が少しある程度でそれ以外に大きなデメリットはないと思いますので、基本的には認める方針が望ましいと思います。(全面的に禁止するには合理性がないと思います。)

・売主のメリット:所有する住宅の商品価値の向上(維持管理の状況が売却価格に反映される)
・買主のメリット:安心して既存住宅の購入ができる(インスペクションの結果によっては瑕疵保険も付保できる)
・管理組合のメリット:マンション全体の資産価値が向上する(専有部分の売却価格に連動して評価も高くなる)

インスペクション(共用部分)の申請者の範囲は?

インスペクションは、売主(区分所有者)・買主(非区分所有者)のどちらが依頼して行ってもよいこととなっています。
売主からの申請であれば、売主は対象マンションの区分所有者(管理組合組合員)であるため、特に申請者として問題はありませんが、買主(購入予定者)から申請の場合は、買主は対象マンションの区分所有者ではなく利害関係者とも言えない部外者であるため、買主からの申請を認めるか否かについて決めておく必要があります。
後々のトラブルを回避するためには、申請者は区分所有者に限定することが望ましいと思います。

インスペクションの立会いを誰がするのか?

共用部分のインスペクションの際には、調査技術者がマンション内に立ち入り、場所によっては鍵が必要となることがあるため、基本的には誰かが立会いをする必要があります。
立会い者には、管理組合役員・管理会社の社員(管理員)が考えられますが、鍵の管理や調査技術者からの専門的な質問等に対応することもあると思いますので、できれば管理会社に依頼することが望ましいと思います。
ただし、管理会社にとって、一般的には共用部分のインスペクション時の立会い業務は、契約外の業務である場合が多いため、実際には、インスペクション依頼者等から有償で立会い業務を請負う形になってくると思います。
このため、管理会社に立会いを依頼する場合には、立会料の負担者や負担方法を予め協議しておく必要がある思います。

設計図書・関連書類の開示は?

共用部分のインスペクションに際して、管理組合が保管している書類(設計図書・建築確認済証・検査済証など)の閲覧等の要請が想定されますので、その場合の対応方針を決めておく必要があります。
利害関係者に対しての書類等の閲覧については管理規約等に規定があると思いますが、一般的にはこの利害関係者には、マンションの購入検討者や購入予定者は含まれないため、要請に応えるためには、閲覧者の範囲を拡大することを決めておく必要があります。

コンクリート圧縮強度調査に破壊試験を認めるか否か?

共用部分の調査項目にコンクリート圧縮強度調査が必要となる場合、その調査方法としては破壊調査(コア抜き)と非破壊調査(反発度の測定等)の2通りの試験方法が指定されています。
しかし、破壊調査については建物への影響が大きいため原則として認めるべきではなく、コンクリート圧縮強度調査の方法は非破壊調査に限定することを決めておく必要があります。

インスペクション後の結果の取扱いはどうするのか?

インスペクションの結果については、調査依頼者(売主・買主等)が保有することになりますが、共用部分に関する調査であるため、場合によっては、調査報告書の写しを管理組合に提供することをルール化することも必要であると思います。

まとめ

インスペクションの制度がどれほど浸透するかは、まだ未知数ではありますが、前回ブログでも書きましたが、国の方針である既存住宅の流通市場の拡大のため、これからも既存住宅そのものの優劣が顕著になるような新たな施策が制度化されることも考えられます。
今回のインスペクションに関しては、管理組合としての対応方針を決めておくことも大切ですが、それ以上にインスペクションにおいて、対外的に優良なマンションという評価を得られるように、適切な維持管理・修繕、また環境の変化に対応した改良等を適宜行うことが、今後のマンション管理においては、益々重要となってくるような気がしています。
この度のインスペクションという制度の開始を機に、皆さまの管理組合においても、マンションの資産価値向上というテーマについて改めて考えてみてはいかかでしょうか。

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田中一直

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あなぶきハウジングサービス 田中 一直(たなか かずなお)
香川県出身。あなぶきグループに平成6年に入社。主に新築マンションの販売、中古マンション・戸建などの仲介業務を経て、その後、マンション管理業務に約20年従事しています。マンション管理組合の運営補助だけでなく、お客さまのマンション生活が安心で快適であるため、常にプラスアルファの提案活動を心がけています。現在は福岡で勤務。
資格:マンション管理士・マンション維持修繕技術者
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