こんにちは、あなぶきセザールサポートの島村です。今回はマンション標準管理委託契約書の第4回目となります。第五条「善管注意義務」について、お伝えいたします。
- 1.善管注意義務とは
- 2.委任契約について
- 3.善管注意義務について
- 4.善管注意義務違反について
1.善管注意義務とは?
マンション標準管理委託契約書の第五条には、「管理会社は、善良なる管理者の注意をもって管理事務を行うものとする。」と明記されています。「善良なる管理者の注意をもって」、これが善管注意義務なのですが、日常生活においてはあまり聞きなれない言葉ですね。
2.委任契約について
マンション管理委託契約はコメントにも記載があるとおり、民法上の準委任契約の性格を有すると解されています。そこでまず、委任契約について確認してみましょう。民法第644条に「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」とあり、マンション管理会社が管理組合と締結する管理委託契約書に「善管注意義務」が明記されているわけです。管理会社が行う管理業務には、全てにおいて「善管注意義務」が負託されているといえます。
[標準管理委託契約書コメント第5条関係] 「本条は、管理委託契約が民法第656条の準委任契約の性格を有することを踏まえ、同法第644条の善管注意義務を契約書上も明文化したものである。本契約書の免責事項(第8条、第10条、第11条、第13条、第17条)の規定により、マンション管理業者が免責されるには、各規定に適合するほか本条の善管注意義務を果たしていることが必要である。」
次に注意義務の程度を比較してみましょう。寄託契約について簡単に説明します。「受寄者である当事者の一方が寄託者である相手方のために保管をすることを約束して、ある物を受取ることで成立する契約」です。一言でいえば、他人に頼まれて物を保管することですが、有償寄託であれば委任契約と同様、「善管注意義務」を負いますが、無償寄託の場合、「自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負う(民法659条)」と規定されています。委任契約は、無償寄託と比較すると、自己の財産に対する注意力よりも高い注意力が求められていることがわかります。
3.善管注意義務について
「善管注意義務」とは、「業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと」です。すなわち、マンション管理会社は、マンション管理にかかる専門的知識をもって、専門家・プロとして管理業務を行わなければならないということですね。
4.善管注意義務違反について
それでは、「善管注意義務」に違反した場合はどうなるのでしょうか。注意義務を怠り、履行遅滞・不完全履行・履行不能などに至る場合は民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となります。
履行遅滞・・・可能である約束が遅れている。
不完全履行・・約束が完全ではない。
履行不能・・・約束ができなくなった。
マンション管理会社がマンションのプロとして委託業務を行っているか、履行遅滞・不完全履行の場合は速やかに履行ができるのかといったことが問われてきます。また履行不能の場合には、損害賠償の請求や契約解除に繋がることもあります。それだけ管理委託契約書は重要な書類となりますので、疑問な点があれば管理会社に問い合わせて契約内容を明確にしておきましょう。
次回もまだまだ、マンション標準管理委託契約書について続きます。
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