マンション管理会社のM&Aを成功させる最重要ポイント「PMI編 ②」

松井 久弥

こんにちは。あなぶきハウジングサービスの松井です。今回は、前回に引き続きマンション管理会社のM&A成立後の統合プロセスであるPMI第2弾です。

第1弾ではお客様(管理組合・組合員等)の期待値に応えるための具体的な施策をご紹介しましたが、今回はそれを実行する社員の価値観統一についてご紹介します。「M&Aを通じて、新たに入社する社員だけでなく既存の社員が、より活躍・成長できる機会とする」ことができれば、大きな成果につながるでしょう。

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目次

  • 管理会社にはどのような社員が在籍しているのか?
  • 最も重要なこと
  • 具体的にどうやるのか?
  • インプットからアウトプットへ
  • 既存社員の成長につながる?
  • まとめ

 

管理会社にはどのような社員が在籍しているのか?

マンション管理会社のM&Aによって、売り手企業から買い手企業に社員が入社する場合、一般的には役割に応じて以下のような社員が対象になります。

◆管理担当者(フロント)/管理組合との委託契約に基づき、管理委託業務を履行する担当者。一般的には1人で10~15棟を担当

◆設備担当者/マンション設備の保守・メンテナンスを担当。社員を配置せずに、外注している会社も多い

◆建築担当者/一級建築士事務所として登録しているマンション管理会社も多い

◆庶務業務担当者/管理担当者(フロント)を業務全般でサポートする

◆マンション会計担当者/管理組合の会計・出納業務を担当。通常、1人で20~100棟以上を担当(システムや会社規模による)

◆管理員/マンション現地に派遣している管理員。自社の社員として雇用している会社が多い

その他にも、契約書等作成担当者や法務(未収金回収)担当者・保険担当者・不動産仲介担当者などのマンション管理に携わる社員の他に、会社経理や総務などの社員も対象になります。

会社規模にもよりますが、管理員を含めると、入社する社員数が数百人規模になることもあります。

 

最も必要なこと

企業風土が違う会社の社員が一緒になって働く際に、最も重要なことは、価値観を統一することです。そのために使う道具として、あなぶきグループの場合には『企業理念』があります。M&Aにより、お客様から「経営統合して良かった」と言っていただくためには、全社員が同じ目的を共有し、同じ方向を向いて業務に取り組むことが絶対条件となります。

(企業理念が必要な理由と当社の企業理念については、「成長する企業に理念が必要な4つの理由」および「あなぶきハウジングサービスの企業理念 しあわせ『感』理 」をご参照ください)

最初に理念を共有した上で、次に、理念に基づいた具体的なお客様への提案を考え、実行していくことになります。この順序は重要ですので、しっかりと時間をかけて浸透させていきます。

 

具体的にどうやるのか?

それでは、具体的に社員の価値観を統一するにはどうしたら良いのでしょうか?これに対する明確な答えはないのかもしれませんが、当社で取り組んでいる事例としては、以下のようなものがあります。

・理念研修(トップメッセージの活用、全ての中途入社社員を対象に本社での3泊4日研修)

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・年度方針の活用(全社方針や部門方針の理解を通じて、会社の取り組みや重点課題を理解する)

・部署研修(中途社員が1ヶ月間、様々な支店・部署をまわる。既存社員が講師となり、テーマを設けて伝えていく)

・その他教育研修(例:中堅社員活性化プロジェクト  MID義塾プレゼンテーション向上プロジェクト「P.P.P.」 、経営トップによる経営方針や部門年度方針の発表する「キックオフミーティング」

 

インプットからアウトプットへ

上記のような研修を通じて、異なる企業の社員が価値観を共有できたとしても、それをお客様に対して発信しなければ意味がありません。最終目的は、お客様から「経営統合して良かった」と言っていただくことです。そのためは、マンション管理組合や所有者・入居者に対して、様々な提案を積極的におこなっていくことが求められます。

前回の記事(マンション管理会社のM&Aにおける最重要ポイント「PMI編 ①」)で記載したような24間コールセンターサービスや専有部サービスデスクといったハード面の提案だけに留まらず、本当に求められるのは、管理マンションの状況をしっかりと考え抜き、現地に赴き、所有者や管理員からの声を聞いて、今期やるべきことや中長期で実施していく課題・問題点を把握し、プロとして論理的に改善提案していく姿勢(風土)を全社員が持つことで、お客様に様々な提案をアウトプットできることです。

 

既存社員の成長につながる?

M&Aは、新たに加わる社員だけでなく、既存の社員が成長できる絶好の機会となります。それは、既存の社員が新しい社員に企業理念や価値観、提案の手法を教えることを通じて、自分自身でも再確認することができ、また、売り手企業で実践していた良い点や商品サービスを知って、自社に取り入れて見直すことができます。

言い換えれば、M&Aを通じて新しい風が入ってくることで、不変である理念や価値観の再確認ができ、自社の商品サービス・業務フローを良い意味で破壊して創造することにつながるのです。

 

まとめ

M&Aの成功は、お客様・社員・取引先等の関係者が、「経営統合により、管理会社の組織体制が変わって良くなった!」と思っていただくことです。そのためには、①お客様の期待に応える具体的な施策と、②それを実行する社員の教育、の2つ必要です。マンション管理会社のPMIにおいても、まずはこの二つを柱として会社の融合を進めていくことにより、企業価値の向上と長期的成長(=M&Aの成功)につながると思います。

 

<参考記事>

マンション管理会社の売却・譲渡(M&A)を成功させるために知っておきたい9つのこと

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松井 久弥

あなぶきハウジングサービス:松井 久弥(まつい ひさや)
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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