5年ぶりに変わった「マンション標準管理規約」改正のポイント③~「外部専門家の活用」を必要とするマンションの実態~

北林真一

区分所有者以外の者に管理を委託する、いわゆる第三者管理方式は、実態上は既に導入が始まっています。

今回は、もう少し掘り下げて、「分譲マンションの管理の現状と課題」および「管理の課題に対する管理組合の対応状況」等についてご紹介します。

以下のデータの出典は、国土交通省が発表したものをベースにしています。

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目次

  • 分譲マンションの管理の現状と課題
  • 管理の課題に対する管理組合の対応状況
  • 区分所有者以外への管理委託の意向と理由
  • まとめ

 

分譲マンションの管理の現状と課題

国土交通省の調査によれば、平成27年時点で、分譲マンションのストック数は、今や約623万戸に上り、約1,530万人の人々がマンションに住んでいます。旧耐震基準ストック数は約106万戸あります。

中高年期の人間の体と同じなのが、中古マンションです。

建物にも経年劣化による劣化現象が起きます。人間の健康状態の確認のために健康診断や人間ドッグが必要なのと同じように、マンションにも建物診断や長期修繕計画が必要です。

事前の対策が後手に回り、対応策を見つけないまま役員の任期を終え、問題を先送りにし、放置されますと、ますます厄介なことになります。

マンションの主な類型

一口にマンションと言ってもいろいろあり、3つの形態に分けられます。

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築後30、40、60年超のマンション数

国土交通省の推計によると、築年数のストック数の推移は以下のとおりです。

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建築後30年超のマンションの課題―管理を続けていく上での不安

マンションのストックの数量的増加に伴い、建物の劣化や居住者の高齢化も進んでいます。こうした中、マンション管理をめぐる諸問題も顕在化しています。

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管理の課題に対する管理組合の対応状況

古いマンションほど重要になるのが管理組合の役割です。マンションで起こる問題は、単に建物の維持管理だけではなく、生活全般にわたる幅の広いものがあり、それだけに管理組合の仕事もいろいろです。特に管理組合の仕事は、手数もかかれば時間もかかります。

当然の結果として、こういう問題に取り組む管理組合の役員は、実際上、自分のエネルギーや時間を費やすことになります。こうしたことに使命感を持つ人はいますが、大多数の管理組合ではわずかな人数のボランティアが役員を引き受けることによって成り立っているのが現状かと思われます。

管理組合の役員就任を引き受けない理由(重複回答)

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マンションを蝕む課題

高齢化賃貸化(不在)により、

・役員就任の忌避と特定の高齢者への負担などで管理の形骸化
・バリアフリー改修や耐震改修などが先送り
・空室の増加等によるスラム化の進行(マンションの資産価値の低下)

などがあり、管理組合の運営が困難となり、蝕まれていくことになります。

管理が不十分なマンションの例(管理不全に陥るマンション

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戸建て住宅もそうですが、人がいない建物はすぐに荒廃していきます。マンションの場合、居住者の大半が高齢化しており、管理組合の運営上、ことあるごとに気になり始めている管理組合もあるのではないでしょうか。

マンション内の高齢化の実情の把握、管理会社に委託する仕事の再検討、外部情報の収集などを管理組合が取り組む課題はたくさんあります。お願いすれば役員を引き受けてくれる人がいるうちが「問題解決のとき」と言えます。

区分所有者以外への管理委託の意向と理由

管理組合の本質は専門家不在の素人集団です。居住者の役員の中に建築や法律等の専門家がいれば理想です。専門家がいない以上、問題解決のための知恵は、マンション管理会社外部の専門家に求めるしかありません。

専門家の管理者への選任意向(平成20年マンション総合調査より)

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専門家の管理者への選任を検討する理由(重複回答)

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管理者として選任した専門家に行ってほしい業務(重複回答)

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まとめ

管理会社に管理を委託している場合、管理組合の運営のポイントとして、「主体性」、「継続性」「公平性」のバランスの並立が求められます。管理会社の実務チェックを確実に行う主体性、区分所有者の誰が役員になっても職務を全うし得る運営の継続性、区分所有者が公平に管理組合の業務を分担する公平性が求められます。

賃貸化・高齢化で役員のなり手がない、または、長期間就任している役員に負担が偏重して、お任せになっている場合などは、先行きが不安です。

第三者管理者方式は、あくまで「万策尽きた」ときの手段と考え、または、投資用ワンルームなどの合意形成の難しいマンションの管理手法として、位置づけるべきです。安易なビジネスモデルと位置付けないことが大切です。

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北林真一

あなぶきハウジングサービス 北林 真一(きたばやし しんいち)
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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