マンションで起こりやすい騒音トラブルの要因と対応策まとめ

こんにちは。あなぶきコールセンターの和田です。
当センターでは月間で約7,000件の様々なお問合せ・ご相談・ご依頼を受け付けています。
その内容は、マンションライフに関わることから、少し離れた内容まで多岐にわたりますが、その中から、皆さんが関心がありそうなこと、知っていそうで意外とご存じ無いこと等々を取りまとめて発信していきたいと思います。どうかお付き合いください。

 

今回のテーマは、『マンションで起こりやすい騒音トラブルの要因と対応策まとめ』です。
まずは、下のグラフをご覧ください。このグラフは当コールセンターで2018年の直近1年間に『専有部分のトラブル相談』として受けつけられた案件を、大まかな種別ごとに分類した円グラフです。


一目瞭然ですね。青色の【騒音】は専有部のトラブル相談件数の実に67%!他のトラブルと比較して断トツの相談比率です。

分厚いコンクリートと鉄骨で造られた分譲マンションであっても、床(天井)・壁を接して様々な生活環境の居住者の方が、一つの建物の中で暮らす共同住宅において、騒音トラブルは最も身近で、かつ誰もが当事者になる可能性のあるトラブルです。
ひと口に『騒音』といっても様々な発生源(騒音源)がありますが、マンションライフで起こりやすい騒音トラブルを中心に、そもそも騒音トラブルがこじれてしまう要因やその対応策、我々マンション管理会社に出来ること・出来ないこと等をまとめてみました。ご参考になさってみて下さい。

 

1.騒音トラブルは、当事者の主観的な要素が大きい

騒音トラブルが相談件数の多数を占める理由(=別の言い方をすると、騒音トラブルがスムーズに解決しない理由)にはいくつかの要因があります。その一つ目は、騒音トラブルは、当事者の主観的な要素が大きく、客観的な証拠に基づかずに対応しようとするケースが多いという点です。

騒音トラブルは、被害者の方が相手に直談判する場合であっても、管理会社や管理組合の理事長に相談する場合であっても、まずはこのような感じで始まります。
「上の階から、ドスンドスンと響く音が聞こえる。足音なのか、重たい物を運んでいる音なのかは解からない。物音に驚いて子供が泣いてしまう程だ・・・」

騒音を表現する時には「60デジベルの騒音が・・・」と言うよりも、上のような表現をする方が人間の感覚的に理解しやすいですよね。なので我々管理会社はこのような騒音被害の状況をヒアリングして聞き取った内容を、注意文や掲示物にして注意喚起することで、騒音トラブルを解決しようとするのが通常です。

これで騒音が鳴り止めばベストですし、実際に管理会社が注意文書を出すと皆さん気を付けて解決に向かうケースも多いです。が、問題はそうでない時です。被害者の方としては「もっと相手に伝わるように特定した内容の注意文にして欲しい」「これ以上騒がしければ退去してもらうなど、強い文言を入れて欲しい」と、更なる対応を当然求めて来られます。

しかし、その場合は被害者の方でも出来るだけ客観的な証拠を集めて頂いた方が管理会社が動きやすくなります。 というのも、マンション管理会社は居住者の方々全員にとって中立の立場で業務を行う必要があり、弁護士のように依頼人の立場で、一方当事者の言い分だけを聞いて主張を代弁するということが出来ないからです。

騒音が聞こえた日時を記録に残す。可能であれば騒音を録音する。最寄りの市役所などに相談頂くと「騒音計」を貸し出してくれるケースもあります。少しでも客観的な証拠を集めて管理会社に相談されることをお勧めします。

 

2.話し声や、隣人のテレビの音などの騒音トラブル対応策

人の話し声やペットの鳴き声、テレビの音などは空気を振動させて伝わります。
このような空気伝播音(くうきでんぱおん)が騒音源である場合は、マンションの場合は鉄筋コンクリート造が多いですから、大部分はコンクリート壁によって遮断されます。それでも音が聞こえる場合は、よほど音量が大きいか、窓を開け放した状態である場合が多いです。

マンションのような共同住宅での生活では、夜間や深夜にテレビを見る時にはボリュームを下げて頂くと共に、隣戸などへ音が漏れないように必ず窓を閉めてください。音楽を聴くときは騒音トラブル防止の観点からはヘッドフォンやイヤホンを使用されることをお勧めします。
同様に他所からの騒音(空気伝播音)が気になる場合、窓が開いていれば閉めて頂くだけでも聞こえ方が変わると思います。

当コールセンターでは「隣人が頻繁にベランダで携帯電話を使って話す人で話声が丸聞こえで困っている」などの苦情相談を受けることがあります。ベランダで話す声は近隣住戸に聞こえやすいので特に注意して頂きたいですね。

「赤ちゃんの夜泣き声でご近所の方に迷惑を掛けていないか心配です」とのご相談を受け付けたこともあります。このケースでは、赤ちゃんは泣くのが仕事ですから夜泣きを止めることはできませんが、先程のテレビのケースと同様に窓を閉めると共に、遮音性のあるカーテン(防音カーテン)のご使用をお勧めしました。

似たようなケースで「ペットの鳴き声(無駄吠え)」によるトラブル事例も多いです。赤ちゃんの泣き声のケースと異なるのは、ペット(特に犬)はしつけることで無駄吠えを減らせる点です。飼い主の方によっては「相手は動物なのだから鳴くなと言っても無理でしょう?」と仰る方もいますが、決してそんなことはありません。
無駄吠えしないようにしつけることも飼い主の責任です。同じマンションでペットを飼っている方に相談したり、ペットショップなどの飼育教室に参加してみてはいかがでしょうか。

 

3.騒音(衝撃音・振動音)は真上の階から響いてくるとは限らない

騒音トラブルがスムーズに解決しない要因の2つ目としては、騒音は真上の階から響いてくるとは限らず、騒音発生源の特定が難しいという点が挙げられます。

というのも、足音やお子さんが走ったり飛び跳ねる音、ドアや建具などをバタンと閉める音、椅子などの家具類を動かしたり引きずる音、音楽の中でも重低音などは、床や壁を直接振動させて響く騒音です。このような騒音を固体伝播音(こたいでんぱおん)といいます。
マンションライフにおいて、お隣の話し声が聞こえてきたことは無いけれど、上階から足音が響いて気になることは時々ある、という方は多いでしょう。コンクリートは空気伝播音を遮断する効果は高いのですが、固体伝播音はコンクリート自体に音の振動が伝わって響くので騒音が聞こえやすいのです。「分譲マンションは、分厚いコンクリートで囲まれているから騒音など無関係」という訳ではないのですね。

そして表題の通り、この固体伝播音は空気伝播音よりも遠くまで伝わりやすい性質があり、真上の階からの騒音だと思っていたら、実はさらにその上階(2フロア上)や、斜め上のさらに上階が騒音源だったり。上階からの騒音で間違いないと思っていたのに、実際には隣の隣や、斜め下の部屋が騒音源だったり・・・と、非常に音の伝わり方が複雑なのです。

当コールセンターでも実際にある事案ですが、「真上の階から、恐らく子供の走り回る音が響いてくる、注意してもらえないか」と相談を受け、担当者が真上の方に事情を説明して問い合わせてみると、確かにお子さんがいらっしゃるとのこと。注意するようにお願いして一段落と思いきや、下階の方から「まだ音が続いている」と。再度真上の方に連絡すると、「その時間にはうちの子供は寝ています。」
下の方は「上の階の人は嘘をついている。だって今も音が聞こえるから」と仰り、上の方は「今回のことでうち以外からの騒音だと解かったけれど、下階の人には今も誤解されて困る」と仰り・・・。
同じマンションに住むご近所さん同士で、こういう誤解による行き違いはお互いに辛いですよね。

しかしこのようなケースは結構多いです。特に騒音被害で悩んでいる方は、マンションでは騒音は天井から聞こえてきたと思っても、必ずしも真上からとは限らないということを、これを機会に覚えておいて下さい。
また、ここまでの説明でお解かりいただけた通り、固体伝播音はとても響きやすいので、小さいお子さんがいる家庭では床に吸音性のあるカーペットを敷いて頂くとか、ドアや建具の開け閉めも勢いよくバタン!ではなく、そっと手を添えて優しく閉めるなど、マンションライフならではのご近所への配慮が必要です。

 

4.管理会社・管理組合は騒音トラブルにどんな対応をしてくれるの?

ここまでお読みいただいて、「うん、騒音の伝わり方やお互いにご近所様への配慮が必要だということはよく解った。でも実際に騒音被害で困っている時に、管理会社や管理組合の理事長さんは一体何をしてくれるの?」という疑問が生じたかも知れません。管理会社・管理組合の対応は、管理規約違反(賃貸マンションであれば賃貸借契約違反)があるか否かで変わってくると言えます。

明確な管理規約違反・契約違反行為がある場合

例えば、楽器の演奏は認めるけれど、管理規約(使用細則)で演奏時間に制限を設けているケースは多いです。また専有部内で騒音や振動を伴う工事をする場合には、事前に管理組合(理事長)に申請をして許可を得なければならないという規約を設けている組合が一般的だと思います。もっぱら住居として使用することとされているのに、店舗として利用する場合も規約違反です。

このような規約違反・義務違反行為(共同の利益に反する行為)があれば、管理会社は管理組合の理事会や理事長とも協議の上、当該行為の中止を勧告したり差し止めたり、必要な手続きを経たうえで、管理組合として法的手段に訴えることも可能です。(区分所有法 第57条など)
より具体的に言えば、「規約で定めた演奏時間ではない夜間や早朝に楽器演奏をしている部屋がある」と相談を受ければ、管理会社は管理員に現場確認をさせたり、演奏を止めるように個別に注意連絡したりするでしょう。

管理規約違反・契約違反とまでは言えない場合

「騒音被害で困っている、でも隣の方に聞いてみたら、お隣さんはそれ程困っていないようだ・・・」
騒音トラブルというのは、悩んでいる方にとっては日々の生活が苦痛になったり、騒音が気になって目が覚めてしまったりと生活に支障をきたす程イライラさせられるのに、往々にして他の居住者の方にとってはほとんど無関係なケースが多いです。

先程の規約違反・義務違反行為に対して、強い対応権限が認められていたのは『共同の利益に反する行為』だから。上下階・隣同士での騒音トラブルは、その当事者間での問題であるため、管理会社や管理組合に強い対応権限は認められていません。法律上の建前は「当事者間のトラブルは当事者同士で話し合って解決してください」ということになっています。

そうは言っても、最近は住民間のトラブルが原因で殺傷事件に発展しニュースになることもありますから、「ご近所同士の関係が悪くなるので自分で直接注意したりすることは避けたい。管理会社から注意して欲しい」というお客様の要望が非常に多いのが事実。

従って管理会社・管理組合に対応できることは、当事者間の問題解決をサポートするような対応になります。
例えば、このブログの冒頭に書いたような、管理会社が騒音被害の状況をヒアリングして注意文や掲示物でマンション住民全体に対して注意喚起することが出来ます。騒音の発生源を調べるために、上下階やお隣の方にそれとなく事情をお伺いすることもあります。騒音の発生源が特定できた場合には、騒音が伝わりにくくなる対処法をアドバイスしたり防音グッズを提案したりするケースもあります。

逆に、当コールセンターにご相談頂くお客様の中にも「今、騒音が聞こえている。この音を聞いてくれたらどんなに酷いか解ってもらえるはず。夜間に悪いけど今から担当者に来てもらえないか?」などと仰る方が居られます。第三者にも状況を確認して欲しいというニーズは理解できますし、場合によっては担当者が訪問することで状況把握ができ、問題解決が進むケースもあるのですが、騒音の証拠集めや騒音がいかに酷いかの立証は、管理会社や管理組合の役割ではなく、当事者(被害者の方)の役割です。

 

5.まとめ

いかがだったでしょうか。騒音トラブルで困ったら、まずは管理会社・管理員などに相談してみてください。注意文の配布で解決に向かうケースも実際に多いです。管理会社のスタッフは誰でも入居者の方が少しでも快適に暮らせるようにサポートしたいと考えています。「管理会社に任せておけばあとは全部やってくれるはず」「騒音問題が解決しないのは、管理会社の担当者にやる気がないから?」などと思わずに、管理会社と当事者で協力し合って問題解決に当たるのが望ましいと言えるでしょう。

そして最後に一つだけ。冒頭に『騒音トラブルは、当事者の主観的な要素が大きい』と書きました。人によって全く同じ音を聞いても、うるさいと思う人と、気にならない人がいます。よく知らない相手の出す音は不快でも、知人の出す音なら気にならないということは実際ありますよね。
日頃ご挨拶を交わすとかご近所同士の円満なコミュニケーションが、実は騒音トラブルを含むご近所トラブル予防の一番の特効薬かも知れません。

 

 

 

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和田典久

あなぶきハウジングサービス 和田 典久(わだ のりひさ)

香川県高松市生まれ。早稲田大学法学部卒。
学生時代は弁護士を志すも夢破れて帰郷し、2001年に入社。最初の配属は賃貸事業部。
高松で賃貸仲介を4年、広島でPM業務を5年務め、2010年12月よりあなぶきコールセンターで全国からのお客様の声に向き合う。
2021年7月からは事業推進本部 業務推進課で分譲・賃貸・CX・コールセンターとも連携した全社的な業務推進を進めていく。
このブログでは、これまでの現場経験を生かしてお役立ち情報を発信していきたいと思います。
珈琲と旅行をこよなく愛する、最近メタボ気味な48歳。

【保有資格】宅地建物取引士 管理業務主任者 賃貸不動産経営管理士
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